チェーンの脱落は自転車の宿命
自転車に乗る人なら、チェーンが外れてしまうトラブルは必ず一度は経験すると思います。特にシティサイクルと違い、ギアやチェーンがむき出しのスポーツバイクは、よりチェーンが脱落する危険が高いといえます。なのでサイクリストにとっては、チェーンの脱落に対しても効果的な防止策を立てる必要性があるのです。
なぜチェーンの脱落が起きるのか
チェーンの脱落原因はいくつかありますが、まずチェーンが伸びて緩んでいることが挙げられます。さらにギアを変える時のタイミングだったり、リアのギアが極端に高いか低い状態で、チェーンが斜めがけになっていると発生しやすくなります。ギアの歯とチェーンの穴にできたズレや、不自然な傾き、勢い余った力のせいでチェーンリングやスプロケットがチェーンを受け止め損ねてしまうのです。
チェーン脱落の悲劇①フレームに傷がつく
チェーンがアウターギアの外側に落ちる分には、まだダメージは大きくありません。これがインナーギアの内側に落ちてしまうと大変です。インナーの内側、BBやチェーンステーに挟まれた状態で無理に足を回すと、最悪の場合ひっかいた傷がフレームにしっかり付いてしまいます。
カーボンフレームを守るあの手この手
ロードバイクを購入すると、チェーンステーやギア回りに薄い金属プレートやシール、ステッカーなどが貼られていることがあります。チェーン落ちに備えてプロテクター代わりにするためですが、部分的にしか貼られていないので効果はあまり期待できません。このため、自前でプレート代わりにテープを貼り付けている人もいます。
チェーン脱落の悲劇②レースの勝負所でまさかの…
1分1秒を争うレースにおいては、メカトラブルも致命的です。2010年のツール・ド・フランスで、アンディ・シュレクは自転車のチェーンが外れてしまい、その隙にアルベルト・コンタドールに逆転を許してしまいました。レース後、待つべきだったのでは?と問われたコンタドールは、シュレクのメカトラに気づかなかったと釈明しました。当然ルール上は問題ないので結果は変わりません。たった数十秒のチェーントラブルで勝利を失うケースは、大いに有り得るのです。
チェーンキャッチャーとは?
そんなトラブルに見舞われないよう、チェーン脱落を防止する必要性が出てきます。そこで大事な役割をはたすのが、今回紹介するチェーンキャッチャーです。商品によってはチェーンウォッチャー、チェーンガードとも呼ばれますが、意味としては同じです。
チェーンキャッチャーの役割
チェーンキャッチャーは、変速の時にチェーンが外れてクランクとフレームに挟まってしまうのを防ぐ役割の部品です。小さな金属の棒状で、フロントディレイラーに取り付ける直付けタイプが主流です。ディレイラーに当たらないよう途中で曲がり、もう一度曲げてチェーンリングに平行になるよう作られたカギ型になっています。その他には、クロモリフレームなどに通して固定する樹脂製のソケット型のものもあります。こちらはより安価で単純な作りですが、原理は同じです。
あのチームのバイクにも取り付けられている
チェーン脱落がレースにおいてどんな意味をもつか、その防止の必要性はプロの舞台でも理解されています。毎年ツール総合優勝を独占するチームイネオスは、勝利を脅かす要素にはどんな小さなことでも周到な対策を立てることで有名です。チェーン落ちをも防止するため、チームスカイの時代からチェーンキャッチャーを導入しています。
チェーンキャッチャーの仕組み
チェーンキャッチャーがチェーンの脱落を防ぐ仕組みは、いたってシンプルです。フロントギアのインナー側、リングの頂点にあたる部分に、チェーンと垂直になるようにつっかえ棒にするのです。アウターからインナーに落としたとき、ギアがチェーンを受けとめ損ねても、チェーンキャッチャーがプロテクターとなってブロックされ、インナーギアの内側へは落ちないというわけですね。
完璧に防げるわけではありません
ただし何ごとにも100%はありえません。たとえチェーンキャッチャーを付けても、何かのはずみでチェーンキャッチャーをすり抜けて落ちてしまう可能性もゼロではないのです。取り付けが甘かったり、ブロックする力が弱かったりすれば意味をなしません。また、アウターの外側や、アウターとインナーの隙間側に落ちることは防止できません。
チェーンキャッチャーの取り付け方法
では、ここからチェーンキャッチャーの取り付け方を説明していきます。ソケット型は、ディレイラー台座がない昔ながらのフレームに使われます。こちらはフレームに通して締めるだけなので簡単ですが、現在は多くのロードバイクが、専用のディレイラー台座を備えたカーボンフレームを採用しています。なのでここでは、フロントディレイラー直付け型のチェーンキャッチャーを取り上げます。
チェーンキャッチャーの取り付け方①
チェーンキャッチャーは、いくつかのメーカーから発売されていますが、最初にフロントディレイラーをフレームから外して作業するのが基本です。同時にディレイラーからワイヤーも外します。なお、フロントギアはインナーに入れておきましょう。
ディレイラーはしっかり調整
外したはいいが元に戻せない…、というミスが多いのがセルフでのメンテナンスです。特にブレーキやディレイラーなど、シビアな調整が必要なところは、外す前に位置や張り具合などをよく確認してください。自信がない方はショップなどにお願いしましょう。
チェーンキャッチャーの取り付け方②
次に、フロントディレイラーの台座にチェーンキャッチャーを取り付けます。メーカーによって多少の違いはありますが、チェーンキャッチャー本体の上部の穴にボルトを通して、フロントディレイラーの台座にネジ止めします。この時、台座のカーブや凹凸に沿うようにしないと固定できませんので、対応するワッシャーやソケットが必要になります。
台座への固定がカギ
台座のカーブへの合わせ方も商品ごとに違いがあります。KCNCのように、3種類のソケットから合うものを、キャッチャー本体にはめ込んで台座にあてがうものや、ワッシャーを挟み込むタイプ、Rotorの新型のように、台座のカーブに合わせて最初から本体が丸く取られているものもあります。
チェーンキャッチャーの取り付け方③
チェーンキャッチャーを取り付けたら、再びフロントディレイラーをフレームに設置します。前に付けたのと同じ位置で、実際にフロントギアを動かして問題なく動くかチェックします。ただ、この調整は慣れていないと大変なので、難しい方はショップなどプロにお願いしましょう。
チェーンキャッチャーの取り付け方④
フロントディレイラーを戻したら、最後に位置合わせをします。インナーのチェーンリングとのすき間が近すぎると引っかかり、離れすぎると意味がありません。だいたい1~3mmのクリアランスを取るようにしましょう。硬いプレートや厚紙などを挟みながら本締めをし、位置が決まったらプレート類を抜けば完成です。最後に軽く回してチェックしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。普段ロードバイクに乗っていても、あまりチェーンキャッチャーというバーツの存在や必要性は感じない、という人は多いと思います。チェーンが伸びたりたるんだりしないよう、常に気をつけていればチェーン落ちが起こる可能性は少ないのですが、それでも起こるときは起こるものです。転ばぬ先のチェーンキャッチャー、不測の事態に備え付けておいてはいかがでしょうか。