悪質で危険な行為「あおり運転」
多発するあおり運転
2017年に東名高速道路で発生した死亡事故の発生により、社会的な大問題にもなった自動車のあおり運転ですが、これ以外にも、あおり運転は日本全国で日常的に発生しています。車間距離をとらずに近づきすぎたり、幅寄せしたり急に割り込んだり、また直前で急ブレーキを踏んだり、などなど…、あちらこちらで危険な運転が行われており、いつ事故にもなりかねないのが実情です。
あおり運転は「妨害運転行為」
そんな状況を改善するべく、警察による取り締まりを厳しくするとともに、政府で罰則の強化を進めてきました。その結果、道交法が改正されてあおり運転が「妨害運転行為」として、酒気帯び運転や飲酒運転に相当する厳しさの悪質な道交法違反に規定されました。
道交法改正で厳罰化
あおり運転に起因する死傷事故が発生し、その際に危険運転致死傷罪が適用されたなら、死亡事故の場合には最長20年の懲役刑となる可能性があります。あおり運転は1回違反するだけで免許取り消し処分が科せられます。このように、あおり運転は非常に厳しい行政処分を受けることになりました。
自転車でもあおり運転になる
あおり運転は自動車だけではない
社会的大問題となったあおり運転の日常的な横行から、今回の道交法改正において、あおり運転の明確な定義と罰則が規定されました。しかし「あおり運転への罰則って、自動車だけに限られるんでしょ」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。
自転車も取り締まり対象に
実は、今回の道交法改正に伴い、自転車のあおり運転も危険行為に規定されているのです。とはいえ「車のあおり運転ならわかるけど、自転車であおり運転?」といま一つイメージできない人も少なくないかもしれませんが、違反すれば罰則が科せられてしまいます。
自転車の危険行為
道交法が改正されるまでも自転車における危険行為の規定はあり、その数は14項目にもわたります。それら危険行為の具体的な内容を紹介していきましょう。
①信号無視
言わずと知れた、交差点を通行する際に進行方向の赤信号を無視してはいけないというルールです。
②指定場所一時不停止等
一時停止の指示のある場所や「止まれ」の標識では、一旦停止することが義務付けられています。
③酒酔い運転
飲酒・酒気帯び状態で自転車の運転は禁止されています。
④遮断踏切立ち入り
警報機が鳴っていたり、遮断機が下りてきている踏み切りに進入してはいけません。
⑤通行禁止違反
道路標識などで通行が禁止されている区間は通行できません。
⑥通行区分違反
軽車両である自転車は、歩道と車道の区別のある道路においては車道を通行することが定められています。その際、車道の左側端を走行しなければなりません。
⑦歩道通行時の通行方法違反
道路標識で自転車の通行が可能となっている歩道もありますが、そこを通行するときは徐行しなければなりません。また、自転車の通行指定部分があればそこを通行しなければなりませんし、なければ歩道の中央から車道寄り部分を徐行しながら通行し、歩行者の通行の妨げとなる場合には、一時停止することが定められています。
⑧歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)
歩道はあくまでも歩行者優先ですから、道路標識などで通行可能となっていても歩行者の通行を妨げてはいけません。また、通行の際には歩行者に注意を払って徐行しなければなりません。
⑨路側帯通行時の歩行者の通行妨害
路側帯を通行する場合は、歩行者の通行を妨げない速度で通行しなければなりません。
⑩制御装置(ブレーキ)不良自転車運転
ブレーキがない、またあっても前輪のみや後輪のみといった片方だけの場合や、正常に作動しない自転車の運転は禁止されています。
⑪交差点安全進行義務違反等
交差点に進入する場合は、優先道路を走行する車両や交差する道路の幅が明らかに広い道路を走行する車両の進行を妨害してはいけません。また交差点を横断する歩行者などへの注意を怠ることなく、安全な速度で進行しなければなりません。
⑫交差点優先者妨害等
自転車は軽車両なので、一般車両のほうに優先権があります。したがって、交差点を右折する場合、直進車や左折者の進行を妨げてはいけません。
⑬環状交差点安全進行義務違反等
環状交差点へ侵入する際は徐行、また環状交差点内を通行する車両の進行を害してはいけません。
⑭安全運転義務違反
自転車を運転する際には、ハンドルやブレーキなどの確実な操作をしなければなりません。スマホを操作しながらや傘を差しながらの運転は違反です。また、他人に危害を及ぼさない速度と方法で運転するよう定められています。
自転車のあおり運転の具体例
自転車で危険運転と規定される上記14項目に追加して、今回の道交法改正によって「妨害運転」が15項目目として追加されました。そして、あおり運転はここに含まれます。自転車のあおり運転は、他の自動車やバイク、自転車の通行を妨げる行為が想定されていて、具体的には以下の7つが相当します。
自転車のあおり運転の具体例
- 逆走して進路をふさぐ
- 幅寄せ
- 進路変更
- 車間距離の不保持
- 不必要な急ブレーキ
- 追い越し違反
- しつこくベルを鳴らす
こういった行為は、自転車が他の自転車や歩行者に行うケースのみならず、自転車が自動車に対して行う場合も含まれます。
自転車のあおり運転の対象年齢と罰則
14歳以上で取り締まり対象に
今回新しく規定されたあおり運転を含む危険行為は、14歳以上が違反すると処罰の対象となります。3年以内に2回以上の危険行為で摘発されると自転車運転者講習を受講しなければなりません。講習は手数料6,000円、講習時間は3時間です。受講しなければ5万円以下の罰金が科せられます。
取り締まり記録はどうなるの?
しかし、中には「自転車なんて、自動車のように運転免許証がないから何度違反をしたかわからないんじゃないの?」と思っている人もいるかもしれませんね。確かに、自動車の運転免許のように違反をすると点数が減っていくわけでもなく反則金の支払いも生じず、その後に同じ違反を繰り返した際の参考程度に記録が残るくらいです。
指導を受けたら「自転車警告指導カード」
危険行為を行って警察から指導を受けたなら「自転車警告指導カード」を渡されます。これはどんな危険行為を行ったかを警察官と確認したうえで受け取るもので、それ以上の問題がなければその場で解放されます。
「赤切符」の交付対象とは
ただし、悪質とみなされた危険行為は「赤切符」が交付されます。つまり、即略式起訴や罰金刑といった刑事罰が科せられる可能性も否定できません。悪質な違反の判断は明確ではありませんが、警察官の停止命令を無視して逃げたり、事情聴取に応じない、反抗的な態度をとるといったことが対象となります。
悪質な違反に「赤切符」
自転車による事故の原因が危険行為であるといった場合も、悪質な違反と判断されるケースが少なくありません。前述の自転車運転者講習の受講命令は、赤切符の交付を受けその後起訴猶予となっても、カウントされるので注意しましょう。
まとめ
自転車は身近な乗り物として子どものころから親しんでいるので、気づかないうちに違反や危険行為を犯している可能性もあるかもしれません。道交法が改正され自転車の乗り方やルールが厳しくなった今こそ、普段の乗り方をもう一度見直して、改めていく必要があるでしょう。地球に優しい自転車だからこそ、安全に乗りたいものですね。