都民の森について
正式名称は「東京都檜原都民の森」
「都民の森」とは、正式には「東京都檜原都民の森」という名称で、東京都西部の奥多摩郡檜原村に広がる森林地帯と、そこにある複数の施設全体の総称を言います。山梨県との県境の三頭山から、奥多摩湖付近の200ヘクタールの中に森林館や炭焼き小屋、レストラン、野鳥観察小屋、木材工芸センターなどの施設を配し、都民に自然や林業を身近に感じてもらうための場所となっています。
サイクリストにとっての「都民の森」とは
一方、趣味でロードバイクに乗る自転車乗りにとっては、「都民の森」=「奥多摩周遊道路を風張峠まで登るヒルクライムコース」です。また、途中で休憩する駐車場を指して「都民の森」と呼ぶ人もいるようです。近年奥多摩周遊道路の路面が整備されたことで、オートバイでのツーリングだけでなく、ロードバイクのサイクリングにも盛んに使われるようになっています。
ヒルクライム初心者の脚試しにおすすめ
ではロードバイクに乗り始めて、これからヒルクライムに挑戦したい、という初心者の自転車乗りにとって、この都民の森はどんなコースなのでしょうか。実はこのコース、ロードバイク初心者からベテランまで、非常に人気のあるヒルクライムスポットでもあります。全体的にとてつもない激坂がないこと、長く緩い勾配で適度に休める所があることで、易しくはないが極端に厳しくもないので、初心者のヒルクライムデビューにもおすすめなのです。
都民の森ヒルクライムコースは2通り
都民の森のヒルクライムコースは、標高1,146mの風張峠を頂点に目指すコースです。武蔵五日市駅方面と奥多摩駅方面の2方向からのルートが一般的です。今回は多くのサイクリストが通るこの2つのコースを紹介します。
①檜原街道コース(武蔵五日市駅スタート)
最初に紹介するのが檜原街道コースです。JRの武蔵五日市駅をスタートして33号線~206号線、いわゆる檜原街道に沿って走り、奥多摩周遊道路から風張峠を目指すコースです。近年東京ヒルクライムというレースイベントが開催され、HINOHARAステージのコースに使われています。都民の森ヒルクライムというと、通常このコースを指すのがほとんどです。
アクセス
輪行で自転車を運ぶなら、最寄駅はJR五日市線の武蔵五日市駅になります。新宿から中央線で拝島まで行き、そこから五日市線に乗り換えるルートが最も簡単です。電車だと1時間25分ほどで着きますが、新宿から約45km程度の距離なので、脚に自信のある人は自走でも行けるでしょう。
ヒルクライムの難易度
檜原街道コースのコースプロフィール
- 距離約33km(武蔵五日市駅~風張峠頂上まで)
- 標高差893m
- 平均斜度8.3%
- 獲得標高1269m
上記がこのコースのプロフィールですが、全体的に難易度は数字ほど厳しくありません。所々緩め~平坦に近い所もあるので、脚を休めながら一定ペースを保てます。ただ唯一の難所で初心者には厳しいのが、奥多摩周遊道路の料金所跡~約1キロのつづら折りです。平均勾配8%という数字以上につらいですが、地道に進み続ければ初心者でも上り切ることは可能です。
②奥多摩湖コース(奥多摩駅スタート)
こちらは檜原街道コースとは逆に、奥多摩駅から411号線沿いに走り、奥多摩湖周辺を回りながら風張峠へ向かう、いわば裏コースで、こちらも東京ヒルクライムのOKUTAMAステージのコースになっています。ロードバイクで都民の森を上る人はこちらのコースを選ぶことはそう多くありませんが、表からは十分上ったので反対側から攻めてみたい、という方がよく走ります。
アクセス
輪行で行く場合こちらもJR線を使います。新宿から立川で青梅線に乗り換え、青梅で奥多摩行きに乗り換えます。所要時間は新宿から1時間40分ほどですが、乗り換えの待ち時間次第では2時間以上かかることもあるので、よく調べてから行きましょう。
ヒルクライムの難易度
奥多摩湖コースのプロフィール
- 距離約26.3km(奥多摩駅~風張峠頂上まで)
- 標高差631m
- 平均斜度10.7%
- 獲得標高850m
こちらも数字だけを見るとなかなか難しそうですが、実際は全体的に厳しい勾配は多くなく、檜原街道コースのような難所もないので比較的上りやすいコースといえます。ただ距離が長く休憩ポイントが少ないので単調になりがちです。
檜原街道コースの詳細
武蔵五日市駅~橘橋交差点
武蔵五日市駅南口から駅前の大通りを右方向へ進みます。そのまま33号線を道なりに進むと、子生神社の前で小中野のY字路に突き当りますが、これは右へ進みましょう。途中いくつか分かれ道がありますが、基本一番大きい道路が33号線(檜原街道)なので、そのまま道なりに走ります。この辺は平坦基調でお店や休憩場所も多いので、ゆったりとしたサイクリングが楽しめます。
橘橋交差点~数馬の湯
檜原村役場前のT字路(橘橋交差点)を左折し、33号線を道なりに進みます。この辺りから鬱蒼とした森林が広がり始め、いよいよ坂道が始まります。上川乗交差点を右へ直進し、206号道路を道なりに進みます。民家もまばらになり、勾配も次第にきつくなってきますが、眼下に望む南秋川の景色はとても美しいです。
数馬の湯~都民の森駐車場
やがて数馬の湯という大きな温泉施設へと出ます。自動販売機もあるのでここで必ず水分補給と休憩をしましょう。ここから九頭竜神社あたりはかなり勾配が厳しくなってきますが、ここで脚を使い過ぎずゆっくりと登ってください。九頭竜の滝を超えて旧料金所跡へ着くと、目の前につづら折りの坂の全景が広がります。この遙か上に見える頂上を見ながら走るのは心身ともにかなりきついですが、少しずつゆっくりでも良いので頑張って脚を回しましょう。上りきった先に見える眼下の景色は絶景の一言です。
都民の森駐車場~風張峠
駐車場にある「とちのみ売店」では、サイクリングやヒルクライムを楽しむ多くの自転車乗りが憩いのひと時を過ごします。ある者はここから踵を返して元来た道を下り、またある者はより高みを目指します。ここからさらに坂を上ると、風張峠へと到達します。標高1,146m。東京都内で最も高いこの道路がヒルクライムの終着点です。
奥多摩湖コースの詳細
奥多摩駅~深山橋
JR奥多摩駅を後にして右方向へと進み、411号線へ出ます。その後は、奥多摩湖を左手に臨みながらひたすら道なりに自転車を走らせる、快適なサイクリングが続きます。ただし途中にはトンネルが多いので車には注意し、前後ライトも確実に点灯させましょう。やがて「深山橋」と書かれた信号のあるT字路に差し掛かります。
深山橋~山のふるさと村
奥多摩湖にかかるアーチ状の橋が深山橋です。深山橋T字路を左折してこの橋を渡り、もう一度左折して三頭橋を渡ります。三頭橋手前に陣屋という食堂や自動販売機がありますが、途中にはほぼ補給できる場所がないので、ここで栄養補給を済ませてください。ここからはひたすら緩く長い坂道を上り続けます。
山のふるさと村~風張峠
やがて道が二股に分かれ「山のふるさと村」の看板が見えてきますが、そのまままっすぐ上ります。この辺から少しずつ勾配がきつくなってきますが何とか頑張りましょう。途中で月夜見第一駐車場が見えたら一休みです。また、月夜見第二駐車場には簡易トイレもあります。そして次に見えてくる駐車場が風張峠です。
風張峠~都民の森駐車場
ここまで来れば後は下るだけです。車やオートバイに気を付けながら、スピードを抑えて慎重に下りましょう。都民の森駐車場で休憩をする時は道路を横切る形になるので、対向車に注意してください。
都民の森ヒルクライムの注意点
最後に、この都民の森と奥多摩周遊道路でサイクリングやヒルクライムを楽しむ上で、注意するべき点をあげたいと思います。いかにロードバイクが速いといえども、自転車であることに変わりはありません。自動車とはまた違った危険も潜んでいることを忘れないようにしてください。
注意①冬場や荒天の道路状況に注意
奥多摩周遊道路は基本的に年中走ることはできます。路面状況も非常に良く整備されていますが、都心と比べて晩秋から冬はかなり冷え込みます。積雪や豪雨、路面の凍結などでサイクリングやツーリングには適さなくなることもあります。また奥多摩周遊道路は夜間は通行禁止となり、冬季は夏季より1時間早い18時で通行止めになるので注意しましょう。
注意②事故厳禁!救急隊の到着は遅い
絶対に交通事故を起こしてはいけないのはサイクリングの鉄則です。ここ奥多摩のように市街地を離れた山中ではなおさらです。奥多摩周遊道路での注意点にもあげられていますが、ここで事故を起こすと救急車が着くまでかなりの時間がかかります。また、場所によって携帯電話の電波状況が良くないところもあります。とにかく交通状況には細心の注意を払う、下り坂では決して無理をしないことを心掛けてください。
注意③沿道の動物には気をつけよう
東京都とはいえ広大な森林に覆われた山の中。当然シカやタヌキなど多くの野生動物も生息しています。自転車で走っていると目に入ると思いますが、沿道には動物の飛び出し注意の標識も至る所に立っています。よく好奇心旺盛な小猿も目撃されますが、餌を与えるのはやめましょう。またごくまれにですが、近年クマの目撃例もありますので現地の情報にも要注意です。万が一のためにクマよけの鈴もあるとよいでしょう。
まとめ
今回の記事では初心者ロードバイク乗りの方向けに、都民の森のコース概要をご紹介しました。初心者でも挑戦しやすい勾配、走りごたえのある距離、そして標高1,146mという都内で最も高い道路。ここを自転車で走破するというのはものすごい達成感が味わえます。もちろん初心者のみならずベテランロードバイク乗りにとっても、トレーニングも兼ねた爽快なサイクリングにはうってつけです。都民の森は自転車を愛する皆さんにぜひ一度は登ってみて欲しい絶景コースなのです。
著者撮影