ナショナルサイクルルートとは
自転車が見直されている
「新しい生活」の提言などにより、これまでの日常生活が変わりつつあります。そんな動きもあり、ガソリンを使わない環境に優しい移動手段として自転車に注目が集まっています。また、体への負担が比較的少なく運動ができるという点も、世界全体における健康志向の流れとも合致し、日本のみならず世界中で自転車が見直されています。
世界に誇りうるサイクリングルートをPR
ナショナルサイクルルートは、一定の水準を満たすサイクリングルートを国が推奨ルートとして指定したものです。これらのルートは、自転車を通じたサイクルツーリズムの推進により、日本の新たな観光価値を創造し地域の創生を図るため、日本を代表し世界に誇りうるサイクリングルートをPRすることを目的に設定されました。
ナショナルサイクルルート認定の方法
ルートの認定は、自転車活用推進法に基づいて定められています。この法律は、自転車の活用による環境への負荷の低減や災害時の交通機能の維持、国民の健康増進などを鑑みて、国が自転車の活用を総合的かつ計画的に推進することを目的に、2017年5月より施行されています。つまり「新しい生活」提言の以前から進められていたというわけです。
ナショナルサイクルルートの指定要件
ナショナルサイクルルートの指定要件は「ルート設定」「走行環境」「受入環境」「情報発信」「取組体制」の5項目の観点から設定されています。それぞれのポイントを詳しく紹介しましょう。
各指定要件のポイント
ルート設定
・サイクルツーリズムの推進に資する魅力的で安全なルートであること
走行環境
・誰もが安全で快適に走行できる環境を備えていること
・誰もが迷わず安心して走行できる環境を備えていること
受入環境
・多様な交通手段に対応したゲートウェイが整備されていること
・いつでも休憩できる環境を備えていること
・ルート沿いに自転車を運搬しながら移動可能な環境を備えていること
・サイクリストが安心して宿泊可能な環境を備えていること
・地域の魅力を満喫でき、地域振興にも寄与する環境を備えていること
・自転車のトラブルに対応できる環境を備えていること
・緊急時のサポートが得られる環境を備えていること
情報発信
・誰もがどこでも容易に情報が得られる環境を備えていること
取組体制
・官民連携によるサイクリング環境の水準維持などに必要な取組体制が確立されていること
指定には必死項目や奨励項目も
指定必須項目
こういった基本事項に加えて、必須項目としてたとえば、ルートの延長がおおむね100km以上であることや、矢羽根などによって自転車通行区間が整備されていること、サイクルステーションがルート上におおむね20kmごとに整備されてることなどが挙げられます。
指定奨励項目
また奨励項目として、急こう配が連続する区間を避けたルートであることやサイクルトレインやサイクルバスの利用が可能なことなどが指定条件となっていて、こういった点を満たすルートがナショナルサイクルルートとして指定されるのです。
サイクリストには「うれしい」ルート
このように細かい項目はいろいろありますが、サイクリストからすれば「走りやすい」「迷いにくい」「滞在しやすい」といったうれしい環境が整っているルートであるということになります。
ナショナルサイクルルート3つのコースの概要
2019年11月に、国土交通省によって第1次ナショナルサイクルロードとして「つくば霞ヶ浦りんりんロード(茨城県)」「ビワイチ(滋賀県)」「しまなみ海道サイクリングロード(広島県、愛媛県)」の3つのルートが指定されました。これらのルート概要を紹介していきましょう。
ルート概要①つくば霞ヶ浦りんりんロード
筑波山エリアと霞ヶ浦エリア
つくば霞ヶ浦りんりんロードは、茨城県の筑波山エリアと霞ヶ浦エリアを結んだルートです。旧筑波鉄道の廃線敷の「つくばりんりんロード」の約40kmと霞ヶ浦を周回する湖岸道路である通称「かすいち」の約140kmを合わせた、全長約180kmのコースです。
自然や歴史、文化の魅力がたくさん
霞ケ浦の水郷筑波国定公園の地域や筑波山地域の自然や風景、また鹿島神宮などの歴史や文化資産などが魅力が満載です。獲得標高約200mという数字が示す通りコースはほとんどフラットで高低差はないため、非常に走りやすいでしょう。
つくば霞ヶ浦りんりんロード概要
- 距離:176km
- 走行所要時間:時速14km/13時間、時速10km/18時間
- 獲得標高:約200m
アクセスは、つくば霞ヶ浦りんりんロードの玄関口「りんりんスクエア土浦」まではJR常磐線特急が便利です。その他、JR岩瀬駅~JR土浦駅がアクセスにおすすめです。
ルート概要②ビワイチ
反時計回りで走ろう
ビワイチとは「琵琶湖一周」の略称で、その名の通り日本最大の湖「琵琶湖」を1周する約200kmのサイクリングコースです。廻り方は決まってはいませんが、湖面を眺めながら走れるうえにサイクリングロードも整備されているので、琵琶湖を反時計回りに走行するほうがおすすめです。全体にフラットで、琵琶湖北部の1区間のみ上り坂がありますが、さほどきつくはありません。
楽しみ方のルートはいくつかあり
1周を完全走破するだけでなく、日程や体力などに応じて琵琶湖大橋の北側(北湖)約150kmだけや南側(南湖)約50kmだけを走るといった楽しみ方もあります。またコースを単に走り抜けるだけでなく、自然や歴史スポットも多いので観光したり、グルメを味わうのもおすすめです。
ビワイチ概要
- 距離:193km
- 走行所要時間:時速14km/14時間、時速10km/19時間
- 獲得標高:約250m
ナショナルサイクルルートのゲートウェイはJR米原駅です。ただ、JRが琵琶湖を1周するかたちで走っているため、どこからでもアクセスが可能です。琵琶湖の東側からスタートするならJR米原駅、西からならJR石山駅やJR堅田駅、北からならJR近江塩津駅がおすすめです。
ルート概要③しまなみ海道サイクリングロード
瀬戸内海の島々を渡る
しまなみ海道サイクリングルートは、広島県尾道市から瀬戸内海に浮かぶ向島、因島、生口島、大三島、伯方島、大島の6つの島を渡って愛媛県今治市までを結ぶ全長約70kmのコースです。瀬戸内海の島々の絶景を眺めながらまるで海上を疾走するかのように走れるこのコースは、日本のみならず世界中からサイクリストがやってきます。
宿泊してゆっくり楽しむのがおすすめ
アメリカCNNの「世界7大サイクリングロード」や欧州の権威ある建築&デザイン雑誌の「世界で最も美しい9つのサイクリングルート」にも選ばれています。海岸沿いで比較的フラットなイメージもありますが、意外に高低差があることは認識しておくほうがいいでしょう。初心者でも1日で十分走り切れる距離ですが、しまなみ海道を楽しむのであれば1~2泊観光しながら走るのがおすすめです。
しまなみ海道サイクリングルート概要
- 距離:70km
- 走行所要時間:時速14km/6時間、10km/8時間
- 獲得標高:約900m
スタートは広島県尾道、または愛媛県今治のいずれでもOKです。アクセス方法はいくつかあり、新幹線でJR尾道駅まで、また飛行機で広島空港や松山空港まで行って、そこからJR尾道駅やJR今治駅へ向かうといった方法などがあります。
もっとルートは増えていく
ナショナルサイクルルートに制定されているのは、2020年現在つくば霞ヶ浦りんりんロード、ビワイチ、しまなみ海道サイクリングロードの3か所だけですが、今後次々と新しいルートが制定されていくことでしょう。さらに大規模なサイクリングロードとして、千葉県銚子市から和歌山県加太海岸を結ぶ総延長約1400kmの「太平洋岸自転車道」ルートも、制定に向けて着々と準備が進められています。
https://www.ringringroad.com/news/3813/