スティグマータとは?ツールドフランスを舞台にした小説の概要を紹介!

スティグマータとは?ツールドフランスを舞台にした小説の概要を紹介!

自転車小説の金字塔として名高い「サクリファイス」シリーズ。その最新作が「スティグマータ」です。ツールドフランスに出場する主人公と、突如現れた「堕ちた英雄」との関連は?「スティグマータ」の意味とは?いま読むべき迫真のロードレース小説を紹介します。

記事の目次

  1. 1.小説「スティグマータ」とは?
  2. 2.小説「スティグマータ」の概要
  3. 3.人気の秘密
  4. 4.まとめ

小説「スティグマータ」とは?

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「スティグマータ」は、近藤史恵さんの小説「サクリファイス」シリーズのひとつです。第一作「サクリファイス」「エデン」と、外伝やスピンオフ短編を収めた「サヴァイブ」「キアズマ」に続く、シリーズ最新作がこの「スティグマータ」です。

サイクルロードレースを題材にした数少ない小説

スポーツを題材にした小説や書籍はたくさんありますが、自転車レースを扱った物語は多くはありません。そんな中でこのシリーズは、サイクルロードレースファンの間でも根強い人気を誇る本格小説として知られています。

小説「スティグマータ」の概要

Photo byThomasJ

世界最高峰の自転車レース、ツールドフランスを舞台に、そこで走る選手たちの戦いの裏に渦巻く、思惑や葛藤を描くドラマです。本作では、ドーピングにより栄光を失ったかつての英雄が復帰することで、ロードレース界が騒然とする中、主人公をはじめ多くの人々がその渦中で振り回される様が描かれます。

登場人物

  • 白石誓(しらいし・ちかう)
    シリーズを通じての主人公。通称チカ。実業団からヨーロッパのプロチームを渡り歩き、本作ではフランスのチームに所属。アシストクライマーとして献身的にエースのために働き、自身の勝利や成績には執着心が薄い。
  • ニコラ・ラフォン(フランス)
    白石のチームのエースで、フランスの期待を一身にうける若き総合系クライマー。明るく屈託のない性格で白石と仲が良いが、その心には深い傷を負っている。
  • ドミトリー・メネンコ(アメリカ)
    ツールドフランス総合優勝3度を誇るも薬物違反により記録を剥奪され、表舞台から姿を消した過去の英雄。37歳にして突如復帰し、再びツールへの出場を果たすが、その目的は謎。
  • アントニオ・アルギ(スペイン)
    白石やニコラのチームメイト。メネンコとの間には過去に何らかの因縁があるらしく、彼に激しい憎悪の感情を抱く。
  • ヒルダ・アルギ
    アントニオの妹で、日本文学を研究するため東京に留学経験もある才色兼備の女性。この物語のカギを握る存在。
  • 伊庭和美
    白石の日本時代のチームメイトで、国内屈指のスプリンター。欧州初挑戦でメネンコと同じチームに加入し、ツールへの出場も果たす。メネンコの依頼を受けて彼を白石に引き合わせる。

「スティグマータ」のあらすじ(※ネタバレではありません)

Photo by CiclismoItalia

伝説のエース、ドミトリー・メネンコが復帰するらしい――。過去に薬物違反を犯し地に堕ちた、かつての英雄に関する噂は事実でした。折しもツールドフランス開幕直前。メネンコは伊庭を通じて白石の前に現れ、ある頼みごとを白石に申し出ます。果たしてメネンコの頼みごととは?そして彼の真の狙いは何なのでしょうか?世界一過酷なレースの裏で、男たちのもうひとつの戦いが始まります。

タイトル「スティグマータ」の意味とは?

今作には「スティグマータ」というタイトルがつけられています。元々はキリストの手に打たれた杭の痕など、聖人が受難に際して身体に負った傷痕を指し、そこから転じて「汚名」「恥辱」という意味にも使われます。今作の物語の中でこの言葉が意味するものはいったい何なのでしょうか。

人気の秘密

Photo bygeralt

最近では自転車やサイクルロードレースを扱う書籍も増え、新しい小説も発表されています。にもかかわらず、この作品はいまだ他の追随を許さない人気を誇ります。まだ読んだことのない方に向け、その人気と面白さの理由を説明します。

リアルかつ分かりやすいレース描写

Photo byjohnsheep

物語の大半がレースを舞台に進行されており、レースの戦術、駆け引きや選手の心理、予想される展開、ルールなどがとても巧みに描写されています。実際の選手や関係者からも非常に評価が高いですが、作者の近藤史恵さん自身は「サクリファイス」の執筆を始めるまで「自転車レースのことを何も知らなかった」というから驚きです。

自転車レースを知らない人でも引き込まれる

Photo byGerry_spm

各書籍サイトの書評でも目立ったのが「ロードレースのことは知らないのに、夢中になって読んでいた」という人が多いことです。ロードバイクに乗る人の基本的な知識から、レースでのルールやしきたりなどがストーリーに上手く組み込まれているのです。自転車レースの素人からスタートした作者の感覚が活きているのですね。

青春小説としてもサスペンスとしても秀逸

Photo bydekaamitdey

この物語は、シリーズを通して主人公・白石の葛藤や焦燥感が描かれ、彼自身の成長を描く青春小説としての側面もあります。また、彼を取り巻く人々の思いや利害が複雑に入り組み、その結果大きな事件が起きてしまいます。白石自身はそこにどう直面し、何を思うのか。こうしたサスペンス的展開もこの作品の魅力のひとつです。

サイクルロードレースファンの願望をくすぐる演出

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日本人がツールの舞台で活躍してほしい。これは日本のファンの願望ですね。2作目「エデン」では、1日だけですが白石がツールで山岳賞ジャージを獲得し、最大の勝負所ではステージ優勝のチャンスも巡ってきます。手が届きそうで届かない。そのもどかしさが読者の気持ちをつかみます。はたして「スティグマータ」でもそんな場面はあるのでしょうか。

まとめ

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今なお自転車ファンの間では支持の高い「サクリファイス」シリーズ。「スティグマータ」はその集大成というべき最上のエンタテイメント小説と言えます。今作が最後かどうかは明らかにされておらず、次の展開も期待できそうなラストになっています。作品はいずれも文庫化され、電子書籍でも購入可能です。本作から読んでももちろん楽しめますが、ぜひシリーズの最初から読むことをおすすめします。

ちゃりぶらりあん
ライター

ちゃりぶらりあん

自転車、特にロードバイクをこよなく愛し、チャリでブラブラするのが好きな図書館司書(ライブラリアン)。 すなわち「ちゃりぶらりあん」とは私のことです。 怠けているので速くはなく、稼ぎはないので高いパーツも買えませんが、走る楽しさは何よりの宝物です。 海外レースもよく観戦します。

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