ツアーオブジャパンとは
ツアーオブジャパン(tour of Japan/ツールドジャパン)は、毎年5月下旬に8日間の日程で開催される日本最大のステージレースです。国内では複数の都府県をまたいで開催される唯一のステージレースであり、国内外16チーム(2019年)が出場するUCI公認の国際レースでもあります。自転車月間推進協議会主催のもと、ベアリングメーカーのNTN株式会社が冠協賛となり「NTN presents 2020 Tour of Japan」として開催されます。
国内最高のUCIステージレース
ツアー・オブ・ジャパンの国際レースとしてのステータスは、UCIアジアツアー2.1に位置付けられます。国内のステージレースとしては、「ツール・ド・栃木」、「ツール・ド・熊野」、「ツール・ド・北海道」を上回る国内最高のランクになっています。ちなみにワンデーレースのジャパンカップは今年新設されたUCIプロシリーズのカテゴリーに入り、さらに上のランクになります。
どんなチームが出るのか
国際レースになり、国内外で活躍するチームが数多く参加します。昨年は国内8チームと海外8チームが出場しました。海外チームは、オーストラリアやアジアのコンチネンタルチーム、プロコンチネンタルチームが主体で、トップカテゴリーのワールドチームも出場することがあります(昨年は参加なし)。国内チームはUCIに登録しているJプロツアーチームが参加します。
ツアーオブジャパンの全ステージ概要
ツアーオブジャパンは、7都府県をまたぐ大規模なレースであり、公道を使うスポーツイベントとしても国内屈指の規模を誇るのがツアー・オブ・ジャパンです。ここからは、2020年大会予定の各ステージの場所とコースを紹介していきます。
第1ステージ/堺(大阪府堺市)
- コース:大仙公園周回コース
- 距離:2.6km
- 獲得標高:10m
第1ステージの大仙公園は、有名な仁徳天皇陵古墳に隣接する大きな公園です。レースの幕開けはその大仙公園を回る個人タイムトライアルです。フィニッシュ手前は鉄道の線路沿いを走るので、選手と電車の競争も見られるかもしれません。
第2ステージ/京都(京都府京田辺市)
- コース:普賢寺ふれあいの駅〜普賢寺小学校〜けいはんなプラザ周回コース
- 距離:105.0km(パレード3.4km、4.2km+16.8kmを6周)
- 獲得標高:1,836m
第2ステージとなる京都(京都府京田辺市)は、距離は短いながら獲得標高の高いパンチの効いたステージです。山岳ポイントまでの約5.5kmの上りは2段階になっており、序盤から厳しいふるい落としが始まります。
第3ステージ/いなべ(三重県いなべ市)
- コース:阿下喜駅前〜下野尻交差点〜いなべ市梅林公園周回コース
- 距離:127.0km(パレード3.1km、8.6km+14.8kmを8周)
- 獲得標高:1,650m
第3ステージは東海有数の梅園を誇る自然豊かな、いなべ市です。公園入口を過ぎてすぐ現れる、最大勾配17%の激坂「いなベルグ」が選手の脚を容赦なく削ります。他にもテクニカルな場所が多い見どころ満載のステージです。
第4ステージ/美濃(岐阜県美濃市)
- コース:旧今井家住宅前〜横越〜美濃和紙の里会館前周回コース
- 距離:139.4km(パレード4.0km、11.6km+21.3kmを6周)
- 獲得標高:1,218m
第4ステージとなる美濃(岐阜県美濃市)は、江戸時代からの古い建造物群が続く「うだつの上がる町並み」を望むパレードから始まるコースです。直角コーナーあり、ストレートありのスリリングな勝負が楽しめます。
第5ステージ/南信州(長野県飯田市)
- コース:飯田駅〜下久堅周回コース〜松尾総合運動場前
- 距離:123.6km(パレード7.3km、12.2kmを10周+1.6km)
- 獲得標高:2,580m
第5ステージの南信州(長野県飯田市)は、標高差500m以上もの上りが待ちかまえる厳しいコースです。TOJコーナーと呼ばれるヘアピンカーブは集中力が必要です。最終周回からのゴールはストレートコースでのスプリント勝負となります。
第6ステージ/(仮)富士スピードウェイ
- コース:富士スピードウェイ周辺周回コース
- 距離:120.0km
- 獲得標高:未定
例年の伊豆ステージに代わり、富士スピードウェイサーキットコースで行われるのが第6ステージです。今年は東京五輪コースに向けて準備中のため、2月現在でのコース詳細は未定です。
第7ステージ/富士山(静岡県駿東郡小山町)
- コース:須走商店街〜富士スピードウェイ外周路周回コース〜須走商店街〜ふじあざみライン
- 距離:36.0km(パレード6.2km、8.5km+8.3km+19.2km)
- 獲得標高:1,760m
第7ステージは、富士山(静岡県駿東郡小山町)で大会の総合優勝を決めるクイーンステージにして最難関のヒルクライムです。わずか11kmほどで1,160mを駆け上がる過酷なコースは、ツール・ド・フランスの難所「ラルプ・デュエズ」に勝るとも劣りません。
第8ステージ/東京(東京都品川区)
- コース:日比谷シティ前〜大井埠頭周回コース
- 距離:112.7km(パレード1.2km、14.7km+7.0kmを14周)
- 獲得標高:100m
第8ステージは大会最後を飾る東京ステージです。オフィス街を駆け抜け、大井埠頭の周回コースへ入ると、ステージ優勝を狙うスプリンター達がしのぎを削り合う迫真の戦いが繰り広げられます。
ツアーオブジャパンの魅力
前述のように、ツアー・オブ・ジャパンの出場チームは、国内チームとアジア中心のコンチネンタルチームがほとんどです。ワールドチームのトップ選手も数多く参加するジャパンカップに比べると、カテゴリーも注目度もまだまだ敵いません。ですが、ツアー・オブ・ジャパンには、それを補って余りある見どころや魅力が満載なのです。
魅力①各ステージの風光明媚な景色を楽しめる
ツール・ド・フランスなどのステージレースでは、街から街へ移動する選手たちの背後に広がる、美しい風景も魅力のひとつです。ツアー・オブ・ジャパンも、京都やいなべの梅林公園、古い民家や信州の山あい、そして富士山を望むコースと、ステージごとに表情を変える日本の風景を楽しむことができます。まさに「ツアー=旅」なのです。
追い風となるサイクルツーリズム
近年「自転車を使ったまちづくり」として、サイクルツーリズムが盛んになっています。開催場所となる各地も、その美しい景観と地元の特産品を活かした観光誘致、道路の整備や交通ルールの啓蒙活動などが、レースの運営を通して積極的に行われています。
魅力②未来のスター選手の走りが間近で見られる
ツアー・オブ・ジャパンは、国際レースとしては、確かに出場選手のステータスは高くないかもしれません。ですが、この大会がアジアトップクラスである以上、ここを足がかりに世界進出を狙う若い選手のモチベーションは決して低くはありません。事実、この大会をきっかけにトップクラスへ飛躍した選手も数多くいるのです。
あのスーパースターもツアーオブジャパン勝者
最も有名なのが、ツール・ド・フランス総合優勝4度のクリス・フルーム(イギリス/チームイネオス)です。2007年当時コニカミノルタ所属のフルームは伊豆ステージで見事優勝を飾り、パルロワールド移籍を経てチーム Skyへ。その後の活躍は誰もが知るところです。また昨年の大会で総合優勝したクリス・ハーパー選手は、今年からワールドチームの強豪、ユンボ・ヴィズマへ移籍を果たしています。果たして彼がどんな活躍を見せてくれるのか、楽しみなところです。
魅力③優れた大会運営
ツアー・オブ・ジャパンでもう一つ注目するのが、大会運営の素晴らしさです。1週間にわたり複数の県や場所をまたぐ大会であるため、各地の地元自治体や、交通整理を行う各県警察なども交えた計画が大変なことは想像に難くありません。綿密な事前準備、各機関との緊密な連絡・連携、地元住民の積極的な協力など、多くの人たちの努力もあり、ツアー・オブ・ジャパンはUCIからも高評価を受ける大会になっています。
あの名物ディレクターによる情報発信
大会に関わるスタッフの奮闘ぶりは、大会ディレクターを務める栗村修さんのブログからもうかがえます。サイクルロードレース解説者としてもおなじみの栗村さんは、自転車レースをもっと日本に根付かせたいという情熱を持って日々準備に走り回りながら、大会の楽しさや意義を私たちに伝えてくださっています。
まとめ
国際的なステージレースにして、日本の魅力を堪能できるツアー・オブ・ジャパン。今年も5月17日から24日までの日程で開催が決定しています。五輪代表選考が大詰めの時期でもあり、より激しい勝負が繰り広げられることが予想されます。期間中はCSのスピードチャンネルやスポーツブルでのライブ配信もされていますが、ここはぜひ現地へ赴いて、迫力やスピード感、地元の雰囲気などを味わってみるのもいいのではないでしょうか。