ロードレース「モニュメント」とは?レースの概要や見どころを紹介!

ロードレース「モニュメント」とは?レースの概要や見どころを紹介!

自転車ロードレースの大会には、春先から始まる「モニュメント」があります。ツール・ド・フランスしか観ないという方も多いですが、この「モニュメント」は伝統や格式だけではなく、見どころ満載なロードレースです。今回はそんな「モニュメント」の魅力に迫ります。

記事の目次

  1. 1.モニュメント=ロードレース最高峰の5大クラシック
  2. 2.モニュメントの魅力
  3. 3.モニュメント各レースの解説
  4. 4.どんな選手に注目すべき?
  5. 5.モニュメントの試聴方法
  6. 6.グランツールとはひと味違うモニュメントを楽しもう!

モニュメント=ロードレース最高峰の5大クラシック

Photo byWikiImages

まず「モニュメント」は一つのレースや大会を指すものではありません。自転車ロードレースには一日で行なうワンデーレースと、複数日程で総合成績を競うステージレースとがあります。ワンデーレースの中でも伝統があり規模の大きい大会は「クラシック」と呼ばれ、その中からさらにグレードの高い以下の5つのレースが「モニュメント」と呼ばれます。

伝統と格式のモニュメント5大レース

  • ミラノ~サンレモ(イタリア)
  • ロンド=ファン=フラーンデレン(ベルギー)
  • パリ~ルーベ(フランス)
  • リェージュ~バストーニュ~リェージュ(ベルギー)
  • イル=ロンバルディア(イタリア)

ロードレースでのステータスはグランツール並み

この5つのレースは、伝統あるクラシックレースの中でも特に高い格式を誇り、そのステータスは3大グランツール(ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ)と肩を並べます。もちろん注目度ではツール・ド・フランスが上ですが、ベルギーなどの自転車大国において伝統あるモニュメントでの優勝は、ツールで勝つのと同じくらいの注目と尊敬を集めます。

モニュメントの魅力

Photo by Martin Pettitt

モニュメントがすごいレースだというのはわかったけど、5つもあってどんなレースかよくわからないし、いまいちなじみがないのよね。ツール・ド・フランスより面白いっていう人もいるけど、ホントなのかな?

ロードレース観戦初心者にも親しみやすい

Photo by ta_do

まずワンデーレースは、レースが一日で終わりますので、とにかく最初にゴールした選手が優勝です。ステージレースのように、総合タイム差の計算、リーダーチームの役割などの複雑なルールや駆け引きは必要ありません。ロードレースを見慣れていない方でも、シンプルに楽しむことができます。

ロードレースの醍醐味が一日に凝縮

Photo by Roxanne King

ルールはシンプルでもレースが単純かと言えばそうではありません。伝統的なクラシックレースはどれも個性豊かなコース設定になっており、石畳あり、激坂あり、砂ぼこりありと、レースの特徴がはっきり分かれています。特にモニュメントはその難易度も激しさも別格なので、絶え間ないアタック合戦や小集団によるスプリント勝負に持ち込まれる展開が多く、レースがより面白くなります。

モニュメント各レースの解説

Photo by CiclismoItalia

モニュメント①ミラノ~サンレモ

ミラノ~サンレモのレース概要

初開催 1907年
開催時期 3月中旬の土曜日
開催地 イタリア北西部
総距離 約290km

その名の通り、イタリアのミラノをスタートしサンレモの市街地でゴールするレースです。初春の3月に行われるため「ラ・プリマヴェーラ(春)」と呼ばれ、ヨーロッパのレースシーズンに開幕を告げる伝統のビッグレースです。距離は例年290kmにも及び、世界最長距離のレースでもあります。「スプリンターズクラシック」の別名があり、スプリンターやパンチャーに向いたコースです。

ミラノ~サンレモのレースの特徴

例年細かな変更はあるもののコースは基本的に同じで、ミラノから海を目指してロンバルディア平原を南下、ジェノバ付近から美しい海岸線を左手に見ながらサンレモを目指す逆L字ルートです。全体的にスプリンターやパンチャー向きの平坦コースですが、ジェノバ手前にトゥルキオ峠、サンレモ手前にチプレッサ、ポッジオという3つの大きな登り区間があり、ここが彼らにとっては試練となります。

ミラノ~サンレモの見どころ

このレースで多い展開は最後のポッジオを登り終えたスプリンターやパンチャー達による終盤の攻防です。ただし登り手前でアタックがかかれば、クライマーやオールラウンダーにも逃げ切りのチャンスがあります。いずれにせよ最大の勝負どころであるこのポッジオでの展開が一番の見どころとなります。また中盤のトゥルキオ峠で遅れると勝負に絡みにくくなるので、これらの登りが重要な局面になってきます。

モニュメント②ロンド=ファン=フラーンデレン

ロンド=ファン=フラーンデレンのレース概要

初開催 1913年
開催時期 3月下旬または4月上旬の日曜日
開催地 ベルギー・フランドル地方
総距離 約260km

「ツール・デ・フランドル」とも呼ばれ、初春のフランドル地方で開催される伝統の一戦です。「クラシックの王様」という別名があり、名だたるクラシックの中でも最も格式が高い最高峰のレースとして知られています。クラシックを得意とする選手やベルギー人選手にとっては、ツール・ド・フランスよりも大事なレースと見なしている人も少なくありません。

ロンド=ファン=フラーンデレンのレースの特徴

このレースでは「ミュール=壁」と呼ばれる石畳の急な登り坂が17~18箇所も続きます。石畳といってもかなり路面は粗く、道幅も狭い農道なので、集団前方で渋滞が起きると後ろの選手はバイクを降りて歩いてしまうこともあります。これらの特徴は典型的なベルギーのクラシックレースの伝統ですが、ロンドの場合は特に登り距離も勾配も厳しく、獲得標高は2,500mにも及びます。

ロンド=ファン=フラーンデレンの見どころ

このレースの勝負ポイントは厳しい石畳の激坂区間で、オウデ・クワレモントやパテルベルクは最大20%以上の登りになります。これらの坂でどれだけ集団の前方に位置取れるかが勝負の分かれ目です。近年ではコースから外れていますが「ミュール・カペルミュール」の登りもドラマチックな展開を生む見どころのひとつとして有名です。春のベルギー特有の変わりやすい天気が影響すれば、逃げ切りの展開も考えられます。

モニュメント③パリ~ルーベ

パリ~ルーベのレース概要

初開催 1896年
開催時期 4月上旬~中旬(基本ロンドの翌週日曜日)
開催地 フランス北東部
総距離 約260km

「クラシックの女王」と呼ばれ、まだ肌寒い初春のパリ近郊からベルギー国境付近のルーベに向かうレースです。登りがほとんどない完全な平坦コースで、途中「パヴェ」と呼ばれる荒れた石畳区間を約20カ所、のべ50km走ります。最後はルーベ市内のヴェロドローム(自転車競技場)に入り、トラックを1周半してゴールします。

パリ~ルーベのレースの特徴

このレースの特徴は何といっても石畳区間「パヴェ」にあります。こぶし大の石を大雑把に敷き詰めただけの粗い石畳はまともに走ることが困難で、激しい振動や段差が選手を苦しめます。石の角によるパンクやメカトラブル、落車が相次ぐため常に先頭にいないと勝負に絡めず、他のレースのような「逃げ」という作戦は使えません。そのあまりに過酷なレース展開から「北の地獄」とも呼ばれます。

パリ~ルーベの見どころ

見どころは石畳区間を選手がどうやって切り抜けるか。ここに全ての注目が集まります。各石畳区間には難易度に応じて1~5までの星が付けられており、最難関の5つ星での走りは必見です。もちろん石畳だけではなく、ヴェロドロームに入ってからのゴールスプリントも見逃せません。トラックのバンク(傾斜)を使った駆け引きは、通常のロードレースとはまた違った見どころです。

モニュメント④リェージュ~バストーニュ~リェージュ

リェージュ~バストーニュ~リェージュのレース概要

初開催 1892年
開催時期 4月下旬
開催地 ワロン地域(ベルギー東部)
総距離 約260km

現存するサイクルロードレースでは最も古くから行われ「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」と呼ばれる伝統あるレースです。春のアルデンヌクラシック3連戦の最後を飾り、リェージュの丘陵地帯を越えてバストーニュの街へ向かい、再びリェージュへと戻ってくるコースです。

リェージュ~バストーニュ~リェージュのレースの特徴

このレースは最初から最後まで細かい登り下りが絶え間なく続きます。あまりに多過ぎて登り区間の数は数えきれません。春のクラシックに多い特徴ですが、このレースの場合は登りの距離が特に長く、登坂距離で2kmにもなる登りもあります。総獲得標高は4500mにも及び、急で短い登りに強いパンチャータイプの選手にチャンスが巡ってきます。

リェージュ~バストーニュ~リェージュの見どころ

果てしなく繰り返されアップダウンでは一瞬の油断が大きな遅れにつながります。そのためレース後半には激しいアタック合戦が繰り広げられ、勾配のきつい登り坂ではパンチャーやスプリントもできるクライマーによるふるい落としが始まります。特に平均8.9%、最大で17%にも及ぶ激坂コート・ド・ラ・ルドゥットは毎年目が離せない注目ポイントになるでしょう。

モニュメント⑤イル=ロンバルディア

イル=ロンバルディアのレース概要

初開催 1906年
開催時期 9月下旬または10月上旬の土曜日
開催地 イタリア・ロンバルディア州
総距離 約250km

他のレースが春開催なのに対し、唯一秋に行なわれるため「落ち葉のクラシック」と呼ばれます。例年ベルガモの街をスタートしてコモ湖へ向かう山道を登り、湖の周りを回ってゴールするのが定番となっています。秋のイタリアの美しい景色を堪能できる伝統レースです。

イル=ロンバルディアのレースの特徴

Photo bytravelspot

標高1,000mを超える本格的な山岳が登場する山岳コースなのが、春のモニュメントレースとは違うところです。そのため「クライマーズクラシック」と呼ばれ、グランツールを終えた総合系エースやアシストクライマーが顔を揃える豪華なレースになります。イタリアの山岳コース特有の距離が長く勾配の大きい登りが何度も登場し、テクニカルな下りも勝負を左右します。

イル=ロンバルディアの見どころ

コースレイアウトにかかわらず、見どころとなるのは本格的な登りが登場する山岳での争いです。マドンナ・デル・ギザッロの登りでは美しい教会が鐘の音と共に選手を出迎え、ソルマーノでは平均15%、最大で27%という壁のような激坂が待ち構えます。この他チヴィリオの登りも一筋縄ではいかず、後半~終盤での山岳でどれだけ人数を絞り込めるかが勝負のカギとなります。

どんな選手に注目すべき?

ひとくちにモニュメントといってもこんなに違うものなのね。じゃあどんな選手に注目してレースを観ればいいのかしら?

クラシックスペシャリストに注目!

グランツールのような長期間のステージを競う総合エースがクラシックでも強いとは限りません。数日間に及ぶ展開を見据えて身体を整え作戦を練って走るため、一発勝負のクラシックは本気で勝負しないことが多いのです。またレース自体が春先で寒く、コースも厳しいため、細身軽量な総合系選手は参加しない傾向があります。ここで主に活躍するのはクラシックスペシャリストと呼ばれる選手たちです。

クラシックスペシャリストとはどんな選手?

一般にクラシックで強い選手には、パンチャータイプが多いです。パンチャーとは、短くて急な激坂で名前通り「パンチ力」のあるアタックを仕掛けられる選手です。また非常に長い距離を苦にしない、石畳を苦手にしない、トラブルでのリカバリーに優れるなど、心身ともにタフな選手がクラシックスペシャリストの特徴です。

モニュメントで注目の選手たち

  • ペテル・サガン(スロバキア)/脚質:パンチャー
    ツールでポイント賞7度、世界選手権3連覇のスーパースター。ロンドやルーベを制覇しており、次の目標はミラノ〜サンレモです。
  • ワウト・ファン・アールト(ベルギー)/脚質:ルーラー
    今年のミラノ〜サンレモ勝者。元シクロクロス王者でありタイムトライアルもスプリントも強く、山も登れる万能選手です。
  • ジュリアン・アラフィリップ(フランス)/脚質:パンチャー
    2020年のロード世界王者。昨年ミラノ〜サンレモを制し、クラシックレースでの勝利も多数あげています。スター性あふれるキャラクターも人気です。
  • グレッグ・ヴァンアーベルマート(ベルギー)/脚質:パンチャー
    リオ五輪金メダリスト。アップダウンや石畳の厳しい伝統的なクラシックレースを得意とします。
  • マッテオ・トレンティン(イタリア)/脚質:パンチャー
    イタリア屈指のクラシックスペシャリスト。欧州王者の経験もあり、ワンデーでのスプリント勝負には必ず絡んできます。
  • フィリップ・ジルベール(ベルギー)/脚質:パンチャー
    現役最強のクラシックスペシャリスト。ミラノ〜サンレモを勝てば、史上4人目のモニュメント全レース制覇を達成します。
  • マチュー・ファンデルプール(オランダ)/脚質:ルーラー
    シクロクロスとMTBでもトップに君臨する天才選手。ワンデーでも大きなレースで勝利を重ねており、本格参戦すれば手がつけられない存在に。

モニュメントの試聴方法

Photo byLeuchtturm81

では実際にモニュメントのレースを観戦するには、どうすればいいのでしょうか。現在日本のテレビではサイクルロードレースを放送していませんので、CS放送やケーブルテレビのスポーツ専門チャンネルを契約するか、ネットでのオンデマンド配信で視聴することになります。

視聴方法①J SPORTS/J SPORTSオンデマンド・サイクルロードレースパック

J SPORTSは様々なスポーツを放送する国内最大のスポーツ専門チャンネルで、CSの「スカパー!」かケーブルテレビの「J:COM」に加入して観ることができます(税込2,515円/月)。インターネット配信の「J SPORTSオンデマンド」なら、スマホやタブレットでも視聴できます。こちらはサイクルロードレースパックのみを申し込めば、料金を割安に抑えられます(税込1,980円/月)。
 

放送レースするレースはパリ~ルーベと、リェージュ~バストーニュ~リェージュです。パリ~ルーベはスタートからゴールまで全て放送してくれるのが嬉しいよね。ツールやブエルタの他、特別番組も充実しているので、春から冬まで一年中楽しめます。実況アナウンサーや解説者の楽しいトークも名物だよ!

視聴方法②GCN/サイクルロードレース・レースパス

GCNは世界最大のサイクリング専門YouTubeチャンネルです。今年からEUROSPORTと提携し、モバイルアプリ内でレースの有料配信を始めました。J SPORTSが放送権を持たない多くのレースを網羅し、ジロ・デ・イタリアやベルギーなどのクラシックレースの他、シクロクロスも配信しています。(年間5,500円/月額900円)

ミラノ~サンレモやロンド=ファン=フラーンデレン、イル=ロンバルディアはこちらで観ることができます。他にもベルギーやイタリアなどのレースをたくさん配信しており、元プロ選手の詳しい解説もあって見ごたえ十分です!放送時間も長いのでレースをより楽しめるのがいいね。

グランツールとはひと味違うモニュメントを楽しもう!

今回紹介したモニュメントは、サイクルロードレースを観戦するうえで外すことのできない5つの有名レースです。単に伝統と格式があるというだけでなく、ツール・ド・フランスとはまた違ったロードレースの楽しみ方を私たちに見せてくれます。グランツールのない春や秋には、カレンダーをチェックしてぜひモニュメントの激しい戦いを楽しんでみましょう。

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ちゃりぶらりあん
ライター

ちゃりぶらりあん

自転車、特にロードバイクをこよなく愛し、チャリでブラブラするのが好きな図書館司書(ライブラリアン)。 すなわち「ちゃりぶらりあん」とは私のことです。 怠けているので速くはなく、稼ぎはないので高いパーツも買えませんが、走る楽しさは何よりの宝物です。 海外レースもよく観戦します。

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