シートポストが固着して抜けない!
シートポストとは、自転車のサドルを支えている棒状の部品のことです。このシートポストが固着して抜けなくなった経験がある方もいるのではないでしょうか? 固着する原因はさまざまですが、長年放置されていた自転車に多くありがちなトラブルです。この記事ではシートポストが抜けなくなる原因と対処法、固着させないための予防策などを紹介します。
シートポストが固着する原因
では、なぜシートポストが抜けなくなるのでしょうか? 考えられる原因はいくつかありますが、ここではよくある3つのパターンをあげてみました。
- 錆による固着
- 電解腐食による固着
- パイプ径が合っていない
①錆による固着
シートポストやシートチューブ内部が錆びて固着しているパターンです。雨や湿気、走行による塵や埃などが入り込み、経年経過によって錆を発生させると考えられます。軽度のものであれば比較的簡単に抜けますが、長時間経っている頑固な錆びだと抜くのは苦労するでしょう。
②電解腐食による固着
電解腐食が最も厄介で、一番多いのがこのパターンです。電解腐食とは異物質同士が化学反応を起こして溶け出す現象のことで、ただの錆より強力に固着してしまいます。例えばフレームがクロモリで、シートポストがアルミといった組み合わせです。これも軽度のものであれば抜くことも可能ですが、重度の状態だと抜くのは困難を極めます。
パイプ径が合っていない
パイプ径が合っていない場合は、そもそものサイズが合っていないパターンです。シートチューブの内径に対して大きい径のシートポストを無理に入れてしまい、食い込んで抜けなくなっている状態です。これも状態によっては抜くことは難しく、シートポストを破壊ないといけないこともあります。
固着したシートポストの外し方
それでは抜けなくなったシートポストの外し方はどのような方法があるのかみていきましょう。ひとつ注意して頂きたいのが、ここにあげた例はどれも必ず抜けるというわけではありません。フレームやシートポストの素材・形状・固着の状態などによっては抜けないこともあります。外し方の参考例としてご覧ください。
①熱湯をかける
熱湯をかけて加熱後に急冷させる、素材の熱膨張係数の違いを利用するやり方です。加熱と急冷(膨張と収縮)を繰り返すことで固着を解消させる狙いです。クロモリ(鉄)フレームとアルミシートポストなどの異素材の場合に有効で、軽度の場合はこれで外れることもあります。フレームとシートポストが同素材であったり、カーボンフレームには不向きと言えます。
②潤滑剤を吹き付ける
シートチューブとシートポストの間に潤滑剤を吹き付け、固着部分に浸透させる方法です。一気に浸透させることは難しいので、数日に渡って毎日少しづつ吹き付ける必要があります。どの程度浸透しているかが確認できないので、感が頼りの長期戦になります。シートポストを揺さぶってみて動くようであれば、抜ける可能性があります。
サンポールは使えるのか?
シートポストの固着の解決法として、サンポールが使えるという噂もあるようです。サンポールとはトイレ洗浄用の洗剤で、強酸性の溶剤です。鉄などの錆を溶解する特性があるので一見使えそうに思えますが、強酸性であるため扱いがとてもシビアです。外したパーツの錆落としなどには使えるかもしれませんが、サンポールはフレームやシートポストには使わない方が無難でしょう。
③道具を使う
①、②のみで抜けない場合は、工具などの道具を使って力をかけるやり方になってきます。ここからはシートポストに傷や変形、最悪の場合破損のリスクがともなってきます。やるのであれば、シートポストを交換する覚悟で挑みましょう。
ステム+丸パイプ
簡単に手に入る道具で最も有効だと考えられるのが、不要なステムと長めの丸パイプを使う外し方です。ステムの片方はシートポストに、もう片方はパイプを固定して、テコの原理でシートポストをひねります。シートポストが動いたら、潤滑剤を吹き付けながら左右に回転させながら引き抜きます。力加減を間違うとシートポストがねじ切れるので注意しましょう。
専用の治具を使う
シートポストを抜くための専用治具を使う外し方です。かつては製品としてあったようですが、現在は廃盤となっているようで、オークションなどで探すか自作するしかありません。かなり大掛かりになる上に、専門知識も必要になってくるのであまり現実的ではないやり方と言えます。
シートポストを切る
ここまでのやり方で外せない場合は、シートポストを壊して外すしかありません。金ノコなどで切り込みを入れてバラバラにしたり、グラインダーなどで肉厚を薄くして剥ぎ取ったりといったやり方です。しかし、フレームにダメージを負わせやすく、作業はかなりの根気と繊細さが求められます。
④プロにお願いする
一番確実なのが、自転車のプロであるサイクルショップに依頼することです。当たり前ですが、経験に基づく知識と技術が素人とは全然違います。どうしても自分では抜けない場合は、壊してしまう前にお願いしましょう。費用は自転車の状態やショップによって違いますが、3000円〜30000円くらいが相場のようです。
シートポストの固着を予防する
プロに依頼するのが一番と言いましたが、最良の方法は予防することです。シートポストがいつでも動く(抜ける)状態を保つことが重要です。少なくとも2〜3ヶ月毎に抜いて、シートポストとシートチューブの内側に薄くグリスを塗っておきましょう。こうすることで固着を防ぎ、シートポストが抜けないという事態は起こりにくくなります。
まとめ
シートポストが固着して抜けないときの対処法や予防策を紹介しました。一番の対策は固着させないことですが、抜けなくなってしまった場合は、ここで紹介した方法を参考に無理をしない範囲で試してみましょう。どうしても抜けない場合は、壊してしまう前にプロにお願いするのが得策と言えます。大事な愛車のためにも、時々シートポストをグリスアップしてあげましょう。
シートチューブとはシートポストを取り付ける部分のフレームの名称です。