米式バルブ(アメリカンバルブ)とは
米式バルブはアメリカンバルブとも呼ばれ、自転車だけでなく自動車やオートバイにも、採用されているバルブ形式です。米式バルブの特徴は、バルブ内部には逆支弁と呼ばれる、タイヤ内の空気を外に逃がさない機構が備わっています。その為長時間経過しても、空気が漏れにくい特徴になっています。もう1つの特徴として、丈夫なバルブで壊れにくく、低い空気圧でも、タイヤ内の空気を一定に保つことができる点があります。
自転車種類によって変わるバルブの種類
バルブには3つの種類があります。それぞれ特徴があるため、自転車の種類によって使い分けられています。一般的に太いタイヤ=低い空気圧、細いタイヤ=高い空気圧になるためです。ここでは自転車のタイプと、採用されているバルブの違いについてご紹介します。
マウンテンバイクなどに多い米式バルブ
米式バルブは、アメリカで主流の自転車に多く採用されています。マウンテンバイクや、ビーチクルーザー、ファットバイクにBMXなどは、米式バルブが主流です。比較的タイヤが太く、低い空気圧で走行する自転車には米式バルブがもっとも相応しいからです。
シティサイクルに多い英式バルブ
シティサイクルなど、日本の自転車の多くは、英式バルブが採用されています。構造が単純で安価、空気を入れやすいため、空気圧も高くも低くもないタイヤにぴったりな点が、米式バルブとの違いです。特徴にも違いがあります。英式バルブは、バルブの外側にネジ・ナットが付いており、このネジでバルブ内部の虫ゴムを交換できます。その構造上、空気圧を計ることができない点も、米式バルブとは異なります。
ロードバイクに多い仏式バルブ
米式バルブを採用している自転車と違い、ロードバイクはスピード重視。そのため路面と、タイヤの設置面積が少ない細いタイヤが採用されています。構造自体は米式バルブと似ていますが、逆支弁に違いがあります。米式バルブを、むき出しにしたような構造になっています。高い空気圧を必要とするタイヤには仏式バルブが最適だからこそ、ロードバイクには仏式バルブが採用されているのです。しかし空気漏れが多い特徴があります。
空気圧の単位
タイヤの空気圧の単位は、1種類ではありません。お国が変われば単位がかわるということで、現在タイヤの空気圧表示は4つの単位が存在します。自転車の空気圧も、さまざまな単位で表示されているのです。英式バルブとは違い、適切な空気圧を、計りながら行なう必要がある米式バルブの空気入れです。ここでは空気圧の単位と違いについて説明します。
日本で使われる単位【Kgf/cm2】と【bar】
空気圧は日本でも2種類の単位が存在します。昔はkgf/cm2(キログラムパー平方センチメートル)でしたが、最近ではbar(バール)が主流になっています。少し前までは、天気予報でもこのバールが使われており、950ミリバールの低気圧が~と言われていました。国産の自動車はオートバイでは現在でもkgf/cm2が使われています。
アメリカやヨーロッパで使われる【PSI】と【Kpa】
PSI(ポンド・スクエア・インチ)は、基本的に日本のkgf/cm2をイギリス単位で表示したものです。一定の面積に掛かる圧力の単位です。Kpa(キロパスカル)は、バールに変わって採用された空気圧の単位です。天気予報で「台風の中心気圧は950ヘクトパスカルで~」というのを聞いたことがあるでしょう。このPSIとkPaの単位を、おぼえておきましょう。
米式バルブへの空気の入れ方
では、米式バルブ(アメリカンバルブ)の場合の、空気の入れ方について説明します。米式バルブに空気を入れる際は、専用のアダプター(口金)がついた空気入れが必要です。英・米・仏式の3種類、どれでも使える交換アダプター付きの空気入れが便利です。また、空気圧が計測できる空気入れでなくてはなりません。まずは、空気圧計付き空気入れを準備しましょう。
①空気の入れ方【空気圧の確認】
タイヤに空気を入れる前に、「適正空気圧」を確認します。適正空気圧は、タイヤ側面に記載してあります。適正空気圧を確認したら、空気入れの空気圧計に、付属しているメモリをあわせましょう。空気圧計のメモリも単位にあわせて記載してあるので、間違えないようにしましょう。ちなみに「1PSI=約6.9kPa」になります。単位を間違えると、空気圧が足りなかったり、チューブの破損につながります。
②空気の入れ方【バルブへの取り付け】
空気入れのアダプターを、米式用アダプターに交換します。米式バルブの内側に、突起があるのがおわかりになるでしょうか。これは空気漏れを防ぐ逆支弁です。つまりこの突起を押さえると、空気の出入りが可能になります。アダプター内部にも同様に、突起があるのが、おわかりになるでしょう。この突起同士がうまく接触するように、アダプターをバルブに取り付けます。
空気が入っているかは音で確認する
取り付ける際「プシュッ!」という空気が漏れる音がすると、取り付け成功。音がしなかったり、「シュー」と空気が漏れ続ける音がする場合は、もう1度アダプターを取り付けなおしましょう。
空気圧は高め?低め?
アダプターを取り付けたら、空気を入れていきます。適正空気圧の範囲内まで空気を入れて行きましょう。空気圧は高めだと軽い漕ぎ出しになり、スピードも出しやすいですが、乗り心地は悪くなります。低めだとグリップ力が増し、乗り心地も良いですが、リム打ちパンクの危険性があります。
乗車する個人の体重によっても、適正空気圧は変わります。まずは、適正空気圧の範囲内で高めの空気圧に設定し、徐々に空気圧を落としながら、自分にあった空気圧を探していきましょう。マウンテンバイクは、街乗り仕様とグラベル仕様とで、空気圧設定を変えることをおすすめします。
③空気入れ方【空気入れの頻度】
空気入れが終わったら、バルブキャップをしっかりと締めましょう。米式バルブは空気の漏れにくいバルブですが、それでも空気は漏れていきます。走行距離や回数にもよりますが、3日に1度は空気圧を確認しましょう。空気が抜けたまま走行すると、リム打ちパンクの危険性が高まります。また低すぎると、最悪タイヤとリムが外れてしまうこともあり、安全性、快適走行のため空気圧の確認は重要です。
米式バルブのメリット
米式バルブのメリットは英式とは違い、空気圧が測れるため、自分にあった適正空気圧で走行できる点です。また丈夫なバルブなので、英式バルブのように虫ゴムがダメになって、空気が漏れるということもありません。仏式バルブに比べて空気漏れが少ないので、毎回空気入れを行なう必要もありません。
出先で空気圧が下がってしまった! という場合、米式バルブだと、なかなか合う空気入れが近くにない場合があります。そんな時はガソリンスタンド。米式バルブは自動車と同じバルブなので、ガソリンスタンドの空気入れが使えるのです。仏式バルブではできません。ガソリンスタンドで、空気を入れることが出来るのもメリットです。
米式バルブのデメリット
米式バルブにもデメリットもあります。デメリット部分はコスト面です。米式バルブはメンテナンスフリーですが、代わりに壊れた場合修理できません。チューブごと交換になります。そして英式に比べ、米式はチューブが高額です。
100均などでは「空気入れ缶」や簡易的な「パンク修理剤」が販売されています。しかし全て英式バルブのみ。米式バルブは流通が少ないため、こういった便利アイテムが少ない、もしくは高額であることもデメリットです。ちょっと高額ですが、ホルツのバイク用パンク修理剤はバッグに1つあると安心です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。自転車ライフを快適に過ごすには適正な空気圧での、空気入れが非常に重要です。他のメンテナンスも重要ですが、まずは基本となる空気入れをマスターしましょう。英式バルブに慣れていると、米式バルブは少し面倒かもしれません。しかし適切な空気圧は乗り心地が、格段に良くなります。ぜひあなたもこの記事を参考して、米式バルブの空気入れをマスターしてくださいね。
撮影:著者