ユニークな自転車リカンベント
自転車のリカンベントという名前を聞いても、ピンとくる人は少ないでしょう。そもそも「リカンベント(recumbent)」とは「もたれかかる」という意味で、「背もたれのついたシートに座り、足を前に向けたあお向けの体勢で乗る自転車」のことを指します。誰でも一度見たら忘れない、特徴的で目立つ自転車がリカンベントなのです。
日本ではまだまだ少数派
日本の街中では、実際にリカンベントが走っている所を見かけることはそう多くありません。おのずと人目を引く独特のスタイルに躊躇してしまう人が多いこともありますが、それ以上に日本ではまだまだリカンベントの特徴や利点が広く知られていないのが現状です。
リカンベントの特徴
ここでは、知っているようで今ひとつ知られていない、リカンベントの特徴を詳しく説明していきましょう。
特徴①空気抵抗の少ないあお向け乗車体勢
リカンベントの一番の特徴は、背もたれのついたシートに座り、足を前に向けたあお向けの体勢で乗るスタイルです。体を起こした状態の普通の自転車と違い、前からの風を受ける面積が小さく空気抵抗が少ないため、より効率的に速度を出すことができます。また背中や腰がしっかりと支えられるため、脚で力を伝える効率がよく高い巡航性能を持っています。
特徴②車体が低い
種類にもよりますが、リカンベントは基本的に車体が低くて非常に地面に近いため、普通の自転車では感じられない独特の走行感覚が得られます。前方と上方の視界が広く取れるため、まるで車体の低いフルオープンのスポーツカーに乗っているような気分を味味わえます。
特徴③上り坂は不得意
平地での巡航性能に優れる一方で、リカンベントは上り坂を登るのは苦手です。その構造上で立ち漕ぎができないこと、背もたれに倒れたまま走るので上半身の重力が下方へかかってしまうからです。軽いギアに入れて回し、低速でじっくりと登るのがいいでしょう。
リカンベントの種類
ひとくちにリカンベントと言っても、いろいろな種類があります。主な違いは座面の高さ、ハンドルの位置、ホイールの数です。さらにはカウルと呼ばれるシールド付き、2人乗りのタンデムタイプ、前輪駆動か後輪駆動かなど、そのスタイルは多種多様で、この自由度の高さもリカンベントの特徴です。
高さによって走りも変わる
リカンベントは座面の高さで基本的にハイレーサー、ミッドレーサー、ローレーサーの3種類に分けられます。車高が低いほど空気抵抗も少なく、速度も出やすいとされています。
高さによるリカンベントの種類①ハイレーサー
ハイレーサーは、700C・24インチのホイールが基本で、普通の自転車と同じくらいの高さになります。比較的坂も上りやすいのですが車高が高いため、長身の方に向いています。
高さによるリカンベントの種類②ローレーサー
ローレーサーは、車体と地面の距離が非常に近く、クランクと背もたれの高さが同じくらいなので、ほぼ寝ているような乗車姿勢になります。クランクまでの距離が遠くなるため、脚が長い人向きです。
高さによるリカンベントの種類③ミッドレーサー
ミッドレーサーは、上の2つの中間に位置する高さです。前20インチ、後26インチのホイールが基本的な構造です。体格を問わず乗りやすく、さまざまな用途におすすめのスタンダードタイプです。
ハンドルの位置は2通り
リカンベントのハンドル位置は主に2通りあります。シートよりずっと上で乗る人の前にあるオーバーシートステアリング(OSS)と、シートより低い位置で、運転者の腰の位置にハンドルがあるアンダーシートステアリング(USS)に分かれます。いずれを選ぶかで操縦感覚がまるで違うので注意しましょう。
安定感ならトライク
リカンベントには、トライクと呼ばれる三輪タイプもあります。安定感があるので初めての人にも乗りやすく、ツーリング用に人気があります。トライクは車幅の関係上軽車両に分類され、歩道を走ることができないので注意しましょう。トライクは前後どちらが2輪になりますが、一般的なのはタドポールと呼ばれる前2輪タイプで、各メーカーから多くの車種が発売されています。