自転車のギアって?
ギア変更こそが自転車のポテンシャルを引き出す秘密!?
自転車の中にはギア変更(変速機)と呼ばれる機構が備わっているものがあります。ロードバイクやクロスバイクといった高性能な自転車には標準的に装備されているものですが、使い方を誰かに教わったことはなく、ギアを変えるとペダルが軽くなったり重くなったりすることを経験的に感じているだけで、詳しくは知らない人は多いのではないでしょうか? ここではそんな自転車のギアの変え方と乗り方を簡単に解説していきましょう。
ギアってどんなもの?
ギアとはギザギザ(歯数)がたくさんついた歯車の形をしていて、それが何枚か並んでチェーンと一緒になって回転することで動力を生み出す部分です。そのギアを上げたり下げたりすること(シフトチェンジ)で効率的な走行を実現させています。
ギアの種類
自転車のギア変更がもたらす基本的な効果
ギアにはペダルと同じ位置にあるフロントギアと、後輪部分にあるリアギアがあります。それぞれに何枚のギアなのかという問題がありますが、まずフロントギアについて知りましょう。
フロントギアの効果
覚えることはたった2つだけ。
- フロントギアは大きい方(歯数が多い方)に変えると、ペダルは重くなる
- フロントギアは小さい方(歯数が少ない方)に変えると、ペダルは軽くなる
フロントギアを変える具体的な自転車の状況やタイミングは?
このフロントギア変更の効果がわかってしまえば、あとはどういったタイミングでギア変更(シフトチェンジ)するべきなのか?が見えてきます。
ギアを変える時の基本
まず始めに、シフトチェンジはペダルに過度な力を入れていない状態で行うこと。ギアの操作方法の基本ですが、うっかりペダルに強い力を入れたまま操作してしまう使い方をすると破損の原因となります。注意しましょう。
シフトチェンジの具体的なタイミング例
①下り坂、長い直進道路、しばらく止まる必要のない走行
→フロントギアの大きい方(ペダルは重いが大きく進む)にチェンジする。
②上り坂、走り出し始め、頻繁に停止と加速を繰り返すような走行
→フロントギアの小さい方(ペダルは軽いが少しずつ進む)にチェンジする。
基本がわかると乗り方の意識も変わる?
このようなギア(変速機)の基本特性がわかりだすと、実際に乗り方とその意識も変わってきます。シフトチェンジのタイミングに敏感になったり、走行するルートの路面状態が気になって調べたり、より効率の良いギアバランス比を研究しはじめたりと、まるでプロのロードレーサーになったかのような気分を味わえるかもしれません。
ギアの特性を理解すると景色が変わる?
そこまで本格的なロードレーサーとはいかなくても、ギアの特性を理解するだけでも自転車の乗り方が変わり、日常生活でいつも目にしてきた景色が違って見えてくるでしょう。
自転車のリアギアとフロントギアの関係
さあ、フロントギアの特性を知ったあなたは、もうギアの変え方で迷うことはない――、と思ってしまうかもしれませんが、ギアには後輪部分にあるリアギアがあるのをお忘れですか? 先ほどの話はフロントギアの話で、後輪部分のリアギアには通用しないのです。
リアギアとフロントギアの違い
リアギアについて覚えることは、たった1つだけ。
- リアギアの特性はフロントギアとは逆になる
ペダルが楽にこげる方が正解
ギアの難しい原理や操作方法を完璧に覚える必要はなく、使い方としてフロントギアに対してリアギアの特性は逆だということさえわかればOKです。そして、さまざまな状況の中で単純にペダルをより楽に回せる乗り方が正解だと覚えましょう。
リアギアの役割や使い方
リアギアの使い方は多段による細かなコントロール
リアギアがフロントギアと比べて異なる点は、変えられるギアの段数が圧倒的に多いことです。一般的に販売されているクロスバイクやロードバイクのフロントギアが2枚(あるいは3枚)のギア段数であるのに対し、リアギアは7~11枚とかなりの差があります。(一般的に多い枚数だけで前後のギアパターンはもっと豊富です。特にロードバイクは多くなる傾向にある)
ギア段数が多いことのメリット
基本的にギアの段数が多ければ多いほど、変更可能な力加減(パワーコントロール)が増えることになります。走行するさまざまな条件下に対して、より効率的なギア変更がしやすいのがメリットです。
どのくらいのギア段数があるのか?
市販されているロードバイクとクロスバイクに多いのは、少ないもので7~14段、多いものになると21~28段にもなります。段数の数え方は、前2枚×後ろ7枚=14段、前2枚×後ろ11枚=21段、前3枚×12段=26段という風になり、前後のギア枚数で変更できるギアパターンの総数をさします。(力学的な換算では重複などもあり、単純な掛け算とはならないとする考えもある)
実際のギア変更で多いのはリアギアの方
実際にギアを変えようとするタイミングが訪れた時は、フロントギアよりリアギアの方が圧倒的に多いです。そのためにより細かなトルク※のコントロールを求められ、このような多段数になっています。(※自転車用語としてのトルクとは回転力を指し、ペダルに加えられる力の説明に使われる)
自転車のリアギアとフロントギアの使い分け
走行環境によるリアギアの変え方の基本的な部分はフロントギアと同じですが、リアギアとフロントギアではその効果の出方に大きな差があります。
フロントギアは大きな変化
フロントギアはリアギアより枚数が少ないので、大きいギアと小さいギアの極端な構成になります。そのためギア変更すると、一気にトルク量が変わることになるので変化が総じて大きいものになります。
リアギアは小さな変化
リアギアはギア枚数が多い分だけ、大きなギアから小さいギアまで段階的な構成になります。ギア変更時に順番に変えていくことができるので、フロントギアと比べて小さい変化に抑えることができます。
使い分ける理由
フロントギアとリアギアのどちらでもギア変更はできますが、フロントギアを1段変えることは、リアギアを一気に3段以上変えることに近い変化となります。状況によってはチェーンやフレーム、変速機自体に大きな負荷がかかってしまうでしょう。ですから、緩やかな速度変化ならばリアギアを使い、急激な速度変化ではフロントギアを使うといった双方の使い分けが必要な乗り方になります。
効果の大きいフロントギアは固定でもいい
日常生活での自転車の使い方、乗り方にもよりますが、ほとんどの場合はフロントギアを大きい方(アウター側)にしたまま動かさず、リアギアの変え方だけで特に問題が起こることはないでしょう。それでもフロントギアを小さい方(インナー側)にした方がいい人を考えると、
- 住んでいる地域の交通量が多く、頻繁に停止をよぎなくされる人(都市部住まい)
- 脚力が弱いなどの身体的特徴をもつ人(子供、年配者)
ギア周辺のトラブル
ギアの変え方の中で、変速機やフレームの寿命を縮める原因となったり、走行中にチェーンが外れたりする事故を起こしてしまう危険な方法があるのでいくつか紹介しておきます。どれも即座に走行不能にはならなくとも、確実にパーツ寿命を縮める使い方なのでやめましょう。
①フロントギアが一番軽いのに対し、リアギアが一番重くなっている状態(この逆も)
始めて高価なロードバイクやクロスバイクを手に入れた自転車乗りが、ギア段数の多さに自己流で試行錯誤していると、まれにこの組み合わせにたどり着いてしまうことがあるようです。チェーンが斜めにかかることなり変速機とチェーンの両方に大きな負担がかかってしまうのでこの組み合わせは使わないようにしましょう。
②上り坂の走行途中でシフトチェンジ
余裕で上れると思ったが、途中でバテてしまい重いペダルに苦しむ中でシフトチェンジしてしまうと、力を入れたタイミングに重なってチェーンが噛んだり、外れてしまうことになります。上り坂の手前で変更するか、上り始めて苦しくなったら素直に降りるべきです。なまじ体力に自信のある乗り方をする人は特に注意しましょう。
③前後のギアを同時に変えない
このようなことをする人はほとんどいないだろうとは思いますが危険な操作方法です。一見すると高度な機構のようにみえるギアシステムですが、その本質は強引に大きさの違うギアに移動させるだけのシンプルな方法です。片方でも不具合が起きやすいのに、同時となるとチェーンがどのギアにもかかっていない状態を作り、高い確率で破損やチェーン脱落を引き起こします。
④雨が降った後に走行して、そのまま放置
意外と忘れがちですが、水に濡れた状態が続くのはよくありません。特にロードバイクやクロスバイクのギア周りはむき出しで、フレームは錆びないカーボンやアルミ製であってもギアとチェーンはスチールやチタン製であることが多く、メンテナンスを怠るとすぐに劣化します。また、ギアには隙間や溝がたくさんあり、滑らかで水はけのよいフレームとは違い、水滴やゴミなどがたまりやすいので注意が必要です。エアスプレーなどで水気を弾くだけの方法でも効果はあります。
まとめ
最後に簡単にまとめると、
- ギア(変速機)にはフロントギアとリアギアがあり役割が異なる
- フロントギアは変更時の落差が大きく、大きな速度変化に対応
- リアギアは細かな速度変化の条件に対応できる
- リアギアを中心に使い、フロントギアは大きな変化の時だけ使う
- 上り坂やこぎ出しはペダルを軽く、下り坂や平地ではペダルを重く
最後に
長々と語ってきましたが、大事なのは自転車に対する愛です。愛があればギア周りの奥深い話も知りたくなるし、好きであればこそシフトチェンジ技術を磨こうと努力します。昔は敷居が高かったロードバイクにまたがる自転車乗りも増え、市街地で乗る生活自転車にも段数の多い変速機をもつタイプが広がってきました。それだけギアに触れる機会が増えたということです。しっかりとギアの変え方を理解し、よりよい快適な自転車ライフを送りましょう!