TTバイクとは?
TTバイクとは、タイムトライアルに特化した競技用自転車のことです。TTバイクの「TT」は「TimeTrial(タイムトライアル)」の頭文字であり、1秒でも速く、なおかつ高速域で巡航できるようにさまざまな工夫がされています。平坦道メインのトラック競技やトライアスロンなどで使用されることが多く、戦うための自転車、それが「TTバイク」です。
TTでは風と自分との戦い
タイムトライアルやトライアスロンなどはドラフティングが禁止されている場合が多く、己の力のみで走らなければなりません。なので、体力を最も消耗するといわれる空気抵抗を極限まで減らして、1秒・1km/hでも速く、楽に高速ロングライドをできることが重要なポイントです。
ロードバイクとの比較
TTバイクの比較対象としてはロードバイクが挙げられます。ロードバイクも速いスピードで走れる自転車ですが、TTバイクとの違いは何でしょう?それぞれ比較をしてみましょう。
ロードバイク
ロードバイクは街乗りやレース、ヒルクライムやロングライドなど、舗装路であれば幅広く使える比較的オールラウンダー的な自転車です。多くのポジションをとりやすいドロップハンドルや、操作性が高いブレーキとシフターが一体構造のデュアルコントロールレバーを装備していることが多く、柔軟な走りが可能です。
TTバイク
TTバイクは直線基調の道を速く走ることに特化した自転車で、ドラフティングに頼らない単独での高速走行に非常に長(た)けています。それ用に設計された特殊な造りで、乗車姿勢は極端な前傾ポジションとなり、コーナリングやブレーキングには相当の慣れとテクニックが必要です。車重も比較的重めなので、ヒルクライムなどにはあまり向いていない自転車といえます。
TTバイクの特徴
他のバイクとは違い、TTバイクはタイムトライアルに的を絞って設計されているので、それに関わる性能は飛び抜けて高くなっています。その反面、当然ながら犠牲になる部分もあり、極端に性能が偏った特異な自転車といえます。その点も踏まえ、TTバイクの特徴を詳しくみていきましょう。
特徴①特殊なハンドル形状
TTバイクの最大の特徴といえるのが、ハンドルまわりの形状です。ロードバイクやクロスバイクなどの他のスポーツ自転車と比較しても全く形状が違い、ハンドルから前方に向かって角が4本生えたような独特のシルエットになっています。
4本のバーの役割
角のような4本のバーは、外側と内側それぞれで役割が違います。外側の二本は「ブルホーンバー」と呼ばれ、まさに牛の角のような形状をしています。内側の二本は「DH(ダウンヒル)バー」と呼ばれ、巡航時にはこのDHバーを使って前傾姿勢をとります。ブレーキレバーはブルホーンバーに、変速レバーはDHバーに別々に装着されているのも特徴です。
ブルホーンバー(外側)
- ブレーキレバーが付いている
- コーナーやブレーキング時などに使う
DHバー(内側)
- 変速レバーが付いている
- 巡航時に使う
特徴②操舵性は低い
TTバイクは基本的にまっすぐ高速巡航することを重視して設計されています。ドラフティングが禁止されている大会での使用を想定しているため、集団走行や他者との駆け引きなどはほぼ考慮されておらず、操舵性よりも空気抵抗をいかに軽減させるかに注力されています。構造上、ブレーキと変速を同時に操作はできず、街乗りや通常のロードレースでの使用は困難といえます。
特徴③特殊なフレーム形状
1秒を争い、速く走るために多くの工夫がフレームにも施されています。空気抵抗を極限まで減らすエアロ形状、前傾姿勢をとりやすいジオメトリーなどです。シートチューブは直角に近い角度となり、サドルは前寄りにセットされ、ロードバイクと比較すると極端な前重心の乗車ポジションとなります。
特徴④重量はやや重め
平べったいエアロ形状であるということは、それだけ多くの材料を使っていることになり、その分重くなる傾向にあります。空気抵抗を考慮してディスクホイールを装着するとさらに重くなります。しかしヒルクライムと違い、タイムトライアルではある程度の重さは高速域での安定性に繋がるので、多少の重量増は問題ではないといえます。
特徴⑤ヒルクライムや街乗りには不向き
TTバイクはタイムトライアルに特化した特殊な設計であるため、ヒルクライムなどそれ以外の用途にはあまり向いていません。TTでは有利である極端な前傾姿勢やヘビーウェイトは、比較的アップライトポジションで軽さが正義であるヒルクライムではマイナス要素のほうが大きいためです。また、操作性の難しさなどを考慮すると、街乗りなどの普段使いにもあまりおすすめできません。
おすすめのTTバイク5選
おすすめ①GIANT【TrinityAdvancedProTT(トリニティアドバンストプロTT)】
自転車市場でのシェア世界一を誇る、台湾のジャイアント社のTTバイクです。実際にライダーが乗った状態での風洞実験によりデータを集め、ジャイアントの技術の粋を注ぎ込んで最適な空力性能を実現しました。実戦を想定して設計されているため、空気抵抗を考慮したオリジナルボトルやUCI規格対応のエアロ形状が採用され、タイムトライアルでは抜群の走行性を発揮してくれます。
おすすめポイント
TTバイクとしては控えめな価格設定なので、初めての一台としてもおすすめです。フレームにはジャイアント独自のカラーシステム「RAINBOW」を採用し、見る角度や光の当たり具合で鮮やかな虹色に輝き、まるで銀河のような美しさです。
TrinityAdvancedProTTFremeSet
- サイズ:460(XS)・490(S)・515(M)
- 価格:¥350,000(フレームセット・税別)
おすすめ②BIANCHI【AquiraCV(アクイラCV)】
世界最古の自転車メーカーである、イタリアのビアンキ社によるTTバイクが「アクイラCV」です。「カウンターヴェイル」という独自の振動除去素材を採用していて、重量増や剛性を落とすことなく快適性を高めています。これによりロングライドでも最終局面まで体力を温存できます。もちろん空力性能にも優れており、高い戦闘力を発揮してくれるでしょう。
おすすめポイント
独自形状のシートステーやチェーンステーに加え、ビアンキのシンボルカラー「チェレステ」が抜群の存在感を放ちます。TTバイクとしてはかなり軽量に仕上げられており、カウンターヴェイルとの相乗効果によって高い快適性と走行性の両立を可能にします。
AquiraCV
- サイズ:XS・S・M・L
- 価格:¥680,000(フレームセット・税別)
おすすめ③TREK【SpeedConcept(スピードコンセプト)】
スコット(アメリカ)の最強最速バイクです。「スピードコンセプト」の名の通り、1秒でもタイムを縮めるべく細部までこだわり尽くしたスピードマシンに仕上がっています。ワイヤー類は全てフレーム内蔵構造とし、超軽量・高剛性の500シリーズOCLVカーボンフレームをはじめ、フォーク・シート・ホイール・ブレーキに至るまで全て最適なエアロ効果を発揮できる設計となっています。
おすすめポイント
ロングライド時における補給面もしっかりと考慮されていて、ドリンクボトルやストレージボックスを追加できる設計です。各部のポジションの調整幅も比較的広く設定されています。基本的に完成車での販売になっていますが、カラー・コンポーネント・ホイールなどは自分好みに選択も可能となっています。
SpeedConcept
- サイズ:S・M・L・XL
- 価格:¥510,000(税別)
おすすめ④S-Works【ShivTTDiskModule(シヴTTディスクモジュール)】
アメリカのスペシャライズド社のハイエンドモデル「S-WORKS」のTTバイクです。TTバイクの弱点といえるハンドリング・ブレーキ・重量の問題を、デザインから見直すことでハンドリングのしやすさと大幅な軽量化を実現しました。これにより、平坦な直線だけでなく多少のヒルクライムやテクニカルなコーナーがあるコースでも安定した走りが可能です。
おすすめポイント
あらゆる路面環境に対応するため、ディスクブレーキを採用しています。これによる重量増やエアロ効果を損なうことなく、低重心化やブレーキング時の挙動の安定などのメリットを獲得しています。各部の調整域もワイドに設定され、ひとりひとりに合わせたフィットが可能です。組み立てのしやすさも考慮されていて、遠征先などで組み立て・フィッティングが短時間でできます。
ShivTTDiskModule
- サイズ:XS・S・M・L
- 価格:¥660,000(フレームセット・税別)
おすすめ⑤FUJI【NorcomStraight(ノーコムストレート)】
日本メーカーのFUJI(フジ)が最速を目指して開発したフルカーボン製のTTバイクが「ノーコムストレート」です。2008年にリリースした「D-6」で得たノウハウとD-6で実戦を重ねたアスリートから集めたデータを元に、トライ&エラーを重ねて生み出されました。空力・剛性・軽量性など多くの面で格段の進化を遂げていて、タイムトライアルでは抜群の性能を発揮します。
おすすめポイント
独自のエアロ形状で空気抵抗を最小限に抑え、ペダルからの入力を逃さないしっかりとしたフレーム剛性があります。ポジショニングの幅も広く、日本もメーカーらしく日本人の身体に合った設計なのでしっくりと馴染みます。比較的リーズナブルな値段設定なのも嬉しいポイントです。
NorcomStraight
- サイズ:49・51・53・55(cm)
- 価格:¥290,000(フレームセット・税別)
TTバイクは競技者のための戦闘機
TTバイクはタイムトライアルを優位に進めることに特化した、戦うための自転車です。ロードバイクとは違い、街乗りやヒルクライムは不得意ですが、単独での高速巡航を求められるシーンでは抜群の戦闘力を発揮してくれるでしょう。トライアスロンなどでタイムアップを狙うならぜひおすすめですよ!
ドラフティングとは、前走者の真後ろについて風の抵抗を軽減させる走り方です。カーレースのスリップストリーム走法と原理は全く一緒です。