サイクルトレインって何?
サイクルトレインとは、自転車をそのまま車両内に持ち込める鉄道のことです。普通は自転車の車内への持ち込みは制限されることがほとんどですが、サイクルトレインでは輪行や折りたたみをせずに、そのまま車両内に入れることができます。そのため、解体が困難なママチャリやシティサイクルも乗せられます。
サイクルトレインが増えた理由
サイクルトレインは地方のローカル線や私鉄を中心に実施する路線が増えています。その背景には、地元の過疎化や少子化による路線利用客の減少があり、多くの鉄道会社が危機感を募らせています。そこで空いている車両を自転車持ち込みのできるサイクルトレインにすることで、近年増加しているサイクリストによる観光利用を促そうというわけです。
サイクルトレインの魅力
サイクルトレインを使った旅行は新しい魅力にあふれています。自転車ごと電車に乗り込むというだけでも不思議な感覚なので、旅の非日常感をさらに高めてくれます。そして、その他にもサイクルトレインは自転車旅を楽に、快適に満喫することができる実用的な利点があるのです。
魅力①輪行の手間がかからない
サイクルトレインの一番の利点は輪行をしなくてすむことです。輪行は通常で20分位、慣れた人でも10~15分はかかりますが、そこで乗り遅れてしまうと本数の少ない地方のローカル線では大きな時間のロスになります。またストレスになるのは時間だけではありません。細々した作業、自転車につく傷、荷物として背負う負担。サイクルトレインはそうした輪行による不便さがないのが魅力です。
魅力②ゆっくりと車窓の景色が楽しめる
観光地の風景や見どころを存分に堪能できるのが旅の醍醐味です。その土地を自転車でさっそうと走り抜けるのもいいものですが、走行に集中しているとなかなか景色をゆっくり見ながらというわけにもいきません。サイクルトレインなら自転車をかたわらに、のんびりと窓からの風景を楽しむことができます。
魅力③「密」を避けられる電車移動
混雑した車内とは無縁なのもサイクルトレインのいい所です。自転車を輪行せずそのまま車両に持ち込みますので、他の乗客とも距離が保てます。またサイクルトレインはもともと利用客が減少している路線を使うことが多いので、とても空いています。日にちや時間帯によってバラつきはありますが、持ち込み上限が決まっている車両なら「3密」を回避した電車移動がしやすいといえるでしょう。
魅力④サイクルツーリズムに注力した地域が多い
サイクルトレインを導入する路線は、利用促進と同時に自転車による観光で町おこしを図る自治体も少なくありません。そのため人気があるサイクルトレインの沿線では、市内観光プランやサイクリングコースが充実していたり、レンタサイクルが整備されていたりします。サイクルトレインは自転車で見どころやご当地グルメを堪能できる、サイクルツーリズムの一環としても期待されています。
サイクルトレインの注意点
全国にたくさんあるサイクルトレインは、それぞれの地域や鉄道会社ごとに運営方法が違います。そのため利用する前には、いくつかの点で気を付けなければならないことがあります。現地でトラブルなく、スムーズに利用できるようにしっかりと押さえておきましょう。
注意点①運行時期・時間帯を確認しよう
地方の路線ならいつでもサイクルトレインに乗れるとは限りません。田舎の電車でも、通勤通学や買い物の時間帯はそれなりに混雑します。サイクルトレインは平日の昼間や土日祝日など、利用の少ない日・時間帯に限り運行する場合が多く、地元のお祭りなど観光客で混雑が見込まれる時期も走らないのが普通です。またローカル線は本数も少ないので、事前によく確認しましょう。
注意点②持ち込みの条件を確認しよう
サイクルトレインは運賃以外に、自転車の車内への持ち込み料がかかる路線と、かからない路線があります。また利用前に事前の予約が必要な路線もあり、特に車両への持ち込み台数が少ない鉄道では、混雑を避けるために予約で制限を設ける会社が多くなります。これらの条件は鉄道会社や路線によって違ってくるので、必ずチェックしておきましょう。
注意点③現地までの交通手段も忘れずに
サイクルトレインを運行している区間はまだまだ少なく、現地までは自走は別として他の電車や新幹線、飛行機などの公共交通機関を使って行かなくてはなりません。当然そこでは輪行が必要になりますので、輪行袋の他、車両への大荷物持ち込みの手続きも必要なら忘れずに行いましょう。
注意点④一般の利用客に配慮しよう
サイクルトレインは観光客のものだけでなく、基本は地元住民の交通手段です。乗り降りも一般客を優先し、大声で騒ぐ、ゴミを捨てる、車両の指定場所以外に自転車を置くなどマナーを欠く言動はやめましょう。また予約不要の電車では、混雑した場合は無理に乗り込まずに一般客に譲りましょう。乗れなければ輪行や自走に切り替える潔さも必要です。
サイクルトレインおすすめ路線①東日本
東日本は北東北や千葉・茨城を中心に自転車を使った町おこしが盛んになりつつあります。その一環としてサイクルトレインの運行も増えており、各地の特産品や観光名所をアピールするのにも大きな役割を果たしています。
大鰐線サイクルトレイン(青森県)
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大鰐線は全ての駅から岩木山を望めると言われるほど風光明媚な土地を巡ります。沿線のりんご並木や名湯で知られる大鰐温泉、弘前城に最勝院五重塔など見どころも満載で、青森県はサイクリングコースも充実しており、距離や難易度に応じたバラエティ豊かなルートが目白押しです。大鰐と中央弘前ではレンタサイクルも行っています。
会津鉄道会津線(福島県)
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沿線の会津街道は、毎年サイクリングイベントが開かれ、見どころは美しいそば畑や「塔のへつり(地元の言葉で断崖のこと)」など自然豊かな田園風景です。近くには芦ノ牧温泉もあるので、泊まりがけの旅行もおすすめです。会津鉄道の主要駅や道の駅にはサイクルピットも完備されるなど、自転車を使った観光にも力を入れています。
ちちてつサイクルトレイン(埼玉県)
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秩父は古い街並みや三峯神社、寳登山神社、羊山公園など多くの見どころがある観光地として知られます。秩父鉄道ではサイクルトレインの他、沿線6カ所にサイクルステーションを備えてサポートも充実。巻頭屈指のヒルクライムの名所である定峰峠も近いので、脚に覚えのあるサイクリストにはぜひおすすめしたい路線です。
B.B.Base(千葉県)
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サイクリストに特化した自転車持ち込み専用車両です。縦置きラックや滑りにくい床など、スポーツバイクを乗せるための充実した設備と快適な車内で人気を博しています。千葉県の大半の区間を網羅した長距離・大規模な路線で、この列車を使えば都内から千葉方面へのサイクリングは行き帰りまで輪行の必要がありません。房総半島を心おきなく走りつくすならぜひ乗りたい電車です。
いすみ鉄道(千葉県)
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特にサイクルトレインと銘打っているわけではありませんが、追加料金のみで普通に自転車を持ち込めます。見どころはノスタルジックな各駅の佇まいと菜の花畑のような美しい情景です。近年注目を集めている人気のローカル線で、春先には鉄道ファンで混雑が予想されますので、ピークを外して出かけるようにしましょう。
サイクルトレインおすすめ路線②中部・近畿
山に海にバラエティ豊かな地形の中部地方はサイクリストを引きつけてやみません。歴史や自然の遺産を巡りつつ、自転車での旅を楽しむのに最適なサイクルトレインも各地で運行されています。
伊豆急行線(静岡県)
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伊豆半島の東側を海沿いに走る路線。伊豆高原、河津、下田など観光名所も多く、街中を散策できるおすすめコースも紹介されています。また伊豆半島はアップダウンが多い地形のため、脚自慢のサイクリストが挑む半島一周も盛んです。途中でリタイアして帰路へつく方にとっても、南伊東まで輪行なしで休めるサイクルトレインはありがたい存在です。
あいの風サイクルトレイン(富山県)
2021年4月から運行を開始した新しいサイクルトレイン。縦置きサイクルラックを備えた車両は全席指定で混雑なし。周辺店舗での割引サービスも行うなど、B.B.Baseにならったサイクリスト専用列車です。路線は富山湾や立山連峰を望む富山湾岸サイクリングコースに並行しており、その美しい景色と最長102kmのサイクリングコースは走る喜びを存分に満たしてくれることでしょう。
養老鉄道サイクルトレイン(岐阜県・三重県)
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岐阜と三重をつなぐ鉄道で、昭和に使われていた車両も現役で走るレトロな趣の電車です。沿線は養老の滝や養老焼肉街道、多度大社、大垣城など見どころも豊富。主要駅ではサイクリングマップも充実しており、市内観光やポタリングを楽しむ方にはおすすめの路線です。
近江鉄道サイクルトレイン(滋賀県)
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サイクルツーリズムに力を入れている滋賀県で、いまやサイクリストの定番コースとなったビワイチ(琵琶湖一周)。一泊二日で走破して観光を兼ねているサイクリストが利用したり、トラブルが起きた時に電車で移動するのに使われることもあります。彦根城や多賀大社など歴史的建造物や寺社も多く、沿線はレトロな駅舎が数多く残されています。歴史好きにとっても鉄道ファンにとっても見どころの多い路線です。
サイクルトレインおすすめ路線③西日本
西日本でいま最も熱いのがサイクルツーリズムです。全県をあげて自転車での観光を推進する四国や、豊かな自然や郷土料理で旅人を虜にする九州でも、多くのサイクルトレインが今日も走っています。
サイクルトレイン松山/西条しまなみ号(愛媛県)
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松山号/松山駅~今治駅 |
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3月中旬から5月中旬までの土曜日、日曜日、祝日 |
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16本 |
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30名 |
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要(JR四国ワープ松山支店:平日10:00~18:00、土・日・祝日10:00~17:00) |
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世界的なサイクリングロードとなったしまなみ海道。その発着地である今治から松山へ向かう松山号と、伊予西条から波止浜へ向かう西条号で運行されています。県公式のサイクリングコース「今治・西条ゆうゆう輪道」を走るなら西条号、松山城や道後温泉など見どころも多い松山を観光するなら松山号に乗りましょう。四国一周の出発地でもある松山を起点に、四国を思う存分走りつくすのもおすすめです。
とさくろサイクリング 中村・宿毛線(高知県)
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土佐くろしお鉄道(中村・宿毛線)の全駅 |
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通年 |
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全線の普通列車 上り9本、下り8本 |
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一列車あたり5台まで |
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要/中村駅(0880-35-4961) |
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1台につき100円 |
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一見普通のローカル線ですが、中村駅の駅舎は内装が四万十産のヒノキでリノベーションされており、ヨーロッパの駅のような美しい構内は国際デザインコンペでも賞に輝いています。サンリバー四万十物産館で名産品を物色したり、途中下車して足摺岬へ向かったりと、四国ならではの見どころや地元グルメを楽しむなら外せない路線です。
一畑電車大社線・北松江線レール&サイクル(島根県)
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大社線・北松江線の全区間 |
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通年(年末年始・イベント開催時を除く) |
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終日 |
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特になし(混雑時は利用不可の場合も) |
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10名以上の団体利用は要予約(前日までに乗車駅か直近の有人駅へ連絡) |
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1台320円 |
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宍道湖を望みながらの旅を満喫できるサイクルトレイン。代表的な見どころは松江城や粟津稲荷神社、出雲大社などです。有形文化財のモダンな西洋建築で知られる出雲大社前駅の駅舎も一見の価値があります。沿線には県道松江平田自転車道という大規模なサイクリングロードが整備され、広大な景色の中でのライドが満喫できます。
肥薩おれんじ鉄道線(熊本県・鹿児島県)
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JR以外では九州で最も長い路線で見どころも充実しています。御立岬公園や出水市ツル観察センター、出水麓武家屋敷群に豊富なグルメスポットも魅力ですが、レトロな街並みの日奈久温泉や湯の鶴温泉、川内高城温泉など名湯に恵まれているのは火山の多い九州ならではです。青く美しい海岸線を眺めながらのサイクリングの後は、グルメと温泉で旅を満喫しましょう。
サイクルトレインで快適な自転車旅行を!
輪行をしなくても混雑知らずの電車旅が楽しめるサイクルトレインは、サイクルツーリズムの新しい形です。同時に、ローカル線の活性化と地域観光の組み合わせは地方を元気にする活動にもなります。全国にはここで紹介しきれなかったサイクルトレインがまだまだありますので、気になる地域の路線を探してぜひ旅に出てみましょう。