チェーンリングとは
「チェーンリング」とはクランクの先に付いているギザギザの輪っか、歯車のことです。その役割からフロントギアと呼ばれることもあります。ちなみに後輪に付いている輪っかはリアギアであり、「スプロケット」と呼ばれます。チェーンリングは一般的にクランクに最初からセッティングされていますが、個別のパーツですので単体での交換も可能です。今回はそんなチェーンリングについて交換方法や寿命、選び方などについて詳しく解説します。
チェーンリング交換前に知っておきたいこと
まずはチェーンリングの交換に当たり、交換作業をスムーズに進めるために事前に知っておきたいことを紹介します。
チェーンリング交換前に知っておきたいこと①自転車が駆動する仕組み
自転車の駆動部分は、フロントギアであるチェーンリングとリアギアであるスプロケットにチェーンを掛けることで成り立っています。ペダルを漕いでクランクを回転させることでチェーンリングが動力を生み出し、その動力がチェーンを介して後輪に送られます。そして、スプロケットが動力を受け取ることで車輪が回転し、前に進む仕組みです。
チェーンリングの役割
チェーンリングは歯数によって後輪に送る動力の大きさが変化します。歯数が多いチェーンリングは多くの動力を伝えるため、ペダルを漕ぐのに力を要し、漕ぐ感覚が重くなります。反対に歯数が少ないチェーンリングは伝える動力も少なくなりますので、ペダルは軽くなります。ロードバイクのようにクランクに複数のチェーンリングが付いていれば、伝える動力を変化させられます。それによって自転車のスピードが変わるため、ギアチェンジのことを「変速」といいます。
スプロケットの役割
後輪のスプロケットは動力を受け取って車輪を回転させます。チェーンリングからは歯数分の動力が送られてきますので、少ない歯数のスプロケットで受ければその分回転数を上げる必要があります。反対に歯数の多いスプロケットで受ければ回転数は少なく済みます。そのため、フロントギアとは反対で、歯数の少ないスプロケットを選択するとペダルが重くなり、歯数の多いスプロケットを選択するとペダルが軽くなります。
チェーンリング交換前に知っておきたいこと②ギア比
チェーンリングを交換する大きな理由は、歯が摩耗して使用が難しい状態になるためですが、特にロードバイクやMTBなどはギア比を変えることも主な理由になります。ギア比とはフロントギアとリアギアの組み合わせのことで、クランクを1回転させた時に後輪が何回転するかを表します。
ギア比の計算方法
- ギア比の計算式はフロントギアの歯数÷リアギアの歯数
- フロントギアが歯数50、リアギアが歯数25の場合は「50÷25=2」となる
- これはクランクを1回転させた時に後輪が2回転することを表している
チェーンリング交換前に知っておきたいこと③PCDとメーカー
チェーンリングにはメーカーごとに独自の規格があったりしますので、交換前にクランクとの互換性を考える必要があります。
PCD(Pitch Circle Diameter)とは?
チェーンリングは進行方向右側のクランクアームの先端に取り付けられます。ロードバイクではクランクアームの先端が4つに分かれている「4アーム」が主流で、チェーンリングはその4か所にボルトで固定されます。PCDは4つのボルトを結ぶ円の直径のことで、アームとチェーンリングでこの寸法が合っていないと取り付けられませんので、交換前に確認が必要です。
PCDのサイズ
PCDのサイズですが、以前は130mmが標準でした。しかし、近年はロードバイクを中心に歯数の少ない「コンパクトクランク」が主流になってきたため、PCDも小さくなり110mmが主流になっています。フロントギアが2速の場合チェーンリングは2枚ですが、クランクアームの同じ箇所に取り付けられるのでPCDは同じです。しかし、フロントギアが3速の場合は一番小さなチェーンリングのみ専用の台座に取り付けられるので、PCDが2種類存在することになります。
他メーカーのクランクとの互換性は基本的になし!
ロードバイクなどのスポーツサイクルのクランクやスプロケットで世界的に高いシェアを持つのは日本の「シマノ」というメーカーです。シマノの他にカンパニョーロやSRAM、スギノといったメーカーもありますが、仮にPCDの数値が同じでもボルト穴の配置がずれていたりします。そのため、基本的には互換性が無いので、クランクアームと同じメーカーのチェーンリングがおすすめです。
チェーンリングの交換に必要な工具
ここからはチェーンリングの交換方法を解説しますが、まずは必要な工具を紹介します。なお、現在主流の4アームクランクはクランクを外さないとチェーンリングを交換できないため、クランクを外すための工具も紹介します。
六角レンチ(5mm)
高儀 TAKAGI ボールポイント 六角棒レンチ 9本組
参考価格: 823円
六角レンチはクランクの取り付けボルトを外すのに使用します。今回は5mmのものを使いますが、六角レンチはロードバイクなど自転車のメンテナンスに頻繁に使用しますので、このような複数サイズのものを1セット持っておくことをおすすめします。
クランクボルト外し工具
TL-FC16
参考価格: 263円
クランクを固定しているボルトを外すための工具です。クランクの脱着にしか使用しませんが、これが無いと外れないため必須です。
トルクスレンチ(T30)
チェーンリングの交換方法
チェーンリングの交換方法①クランクの外し方
シマノ製のクランクは右側のアームをフレームに差し込み、左側のアームで固定しています。そのため、クランクを外す際はまず左側のアームを外します。
左アームの外し方
六角レンチでクランクアーム先端の取り付けボルトを2つ外します。シマノ製のクランクには脱落用の爪が付いていますので、ボルトを外す際に失くさないように注意してください。次に専用工具「TL-FC16」を前面のクランクボルトに装着し、反時計回りに回して緩めていき、取り外します。
右アームの外し方
左アームが外れれば右アームは手で引き抜くだけで外れるはずです。外れない場合は左アーム側からゴムハンマーで軽く叩いてあげると外れやすくなります。また、チェーンが引っかかって抜けにくい場合は、チェーンを落としてしまうのも1つの方法です。
チェーンリングの外し方
チェーンリングは右クランクアームの裏側から「チェーンリングボルト」で固定されています。T30トルクスレンチを反時計回りに回し、ボルトを緩めてチェーンリングを外します。
トルクスレンチ使用時の注意事項!
- ボルトをなめてしまわないようにしっかりと奥まで差し込む
- ボルトが一気に緩んだ拍子に手がチェーンリングの歯に触れると危険なので、歯の部分を布などで覆っておく
チェーンリングの取り付け方
外した時と反対の手順で行えばよいので特に難しいことはありませんが、チェーンリングには表裏があり、正しい向きに取り付ける必要もあります。また、チェーンリングボルトは指定のトルク(12~14N.m程度)を守って締め付けてください。そして、ボルトは1本を固定してしまうのではなく、対角線を描くように順番に均等に締めていきながら固定します。
チェーンリングの表裏と向きに注意
- インナーは(小さい歯車)は歯数の刻印が入っている方が裏側、アウター(大きい歯車)は何も書かれていない方が裏側
- アウターは歯数の表示がクランクアームの反対側にくるように取り付ける
歯数の違うチェーンリングに交換した場合
チェーンリングの歯数を変更しないのであれば、あとはクランクを外した時と逆の手順で取り付けて終了です。しかし、歯数を変更した場合はチェーンの長さ調整と、フロントディレイラーの位置調整が必要です。
チェーンの長さ調整
チェーンの長さはチェーンを最も長く使うギア比に合わせなければなりませんので、チェーンリングの歯数を増やすと長くなり、歯数を減らすと短くなります。短くなる分にはコマを詰めることで対処できますが、長くなる場合は長さの調整ができないため、チェーンも新しいものに交換してください。
フロントディレイラーの位置調整
変速を行うフロントディレイラーの位置ですが、チェーンリングの歯数を減らし歯車が小さくなった合は位置を低く、歯数を増やし歯車が大きくなった場合は取り付け位置を高くします。
ここからはチェーンリング交換の作業について紹介していくよ!