スプロケットはワイドレシオ化している?
ギアは重要
スプロケットのギア構成やギア比は、ロードバイクの乗り心地や操作性に大きな影響を与えるだけでなく、快適にまた楽に走行できるかどうかをも左右します。スプロケットには、ギア構成やギア比によって「ワイドレシオ」と「クロスレシオ」があります。
ワイドレシオが増えている?
近年、販売されている完成車のスプロケットはワイドレシオなスプロケットが装着されているケースが増えている傾向が見受けられます。走行に多大な影響を与えるスプロケットは今なぜワイドレシオ化しているのか、チェックしてみましょう。
ワイドレシオとクロスレシオとは
スプロケットはギア群
ロードバイクなどのスポーツバイクには前後に変速機がついていて、走行状況にあわせて適切なギアに変えることができます。自転車の駆動の要主要パーツの集合体であるコンポーネントのひとつのパーツ「スプロケット」とは、後輪に取り付けられた複数の歯車の組み合わせた「ギア群」を指します。
スプロケットのグレード
スプロケットは、ギアの枚数によってグレード分けされます。自転車パーツのシェアにおいて世界最大を誇るシマノを例に挙げると、ロードバイク用のスプロケットは8枚(8段変速)から11枚(11段変速)まで6種類あります。枚数の多いほうが上級グレードですが、上位3つのグレードのギアは精密さや重量の違いはありますが枚数はいずれも11枚です。
105には5種類
また、同じグレードでもギアの歯車の数の組み合わせによっていくつかのラインナップを設けています。たとえば、多くのライダーに支持されるシマノのコンポーネント「105」は11段変速なので11枚のギアが備わっていますが、歯車の歯数の組み合わせによるラインナップは5種類あります。
ギアの組み合わせ例
歯数が12から25までの組み合わせのセットをはじめ、11から28、11から30、11から32、11から34の5タイプです。これらは「12-25T」というように表現され、Tが歯数を示します。歯数の組み合わせは、たとえば「12-25T」なら「12-13-14-15-16-17-18-19-21-23-25」で、「11‐34T」なら「11-13-15-17-19-21-23-25-27-30-34」となります。
歯の差の違い
12‐25Tは最初の8段は隣り合ったギアの歯数がひとつずつ、残りの3段は2つずつ増えており、11-34Tは最初の9段は2つずつ、10段は3つ、11段は4つ増えています。このように、歯数の差が近い(クロスしている)「12-25T」をクロスレシオ、差が広い(ワイド)「11-34T」をワイドレシオといいます。
クロスレシオのスプロケットのメリット・デメリット
メリット①変速がスムーズ
隣り合わせのギアの歯数の差が少ないため、重さの変化が少なく変速がスムーズにできるという点です。歯数の差が大きければギアを変えた時に大きなショックが生じますが、少なければ最低限の衝撃に抑えることができます。
メリット②路面状況に合わせやすい
細かいギア調整がやりやすいので、ちょっとした路面の変化でもしっかり対応ができます。また、段階的に速度をアップしたいときにもスムーズなギアチェンジが可能です。
メリット③軽量
歯数が少なくギアの大きさが小さいので、重量が軽くなります。たとえば、105のスプロケットで12-25Tは269gなのに対して、11-34Tでは379と100g以上軽量です。初心者にはさほど影響はなくても、コンマ1秒を争うレースの世界では大きな差となるでしょう。
デメリット①坂道がキツい
歯車が小さいので坂道、特にロードバイクに慣れていない初心者や体力のない人にとって激坂を上るのがキツい点が最大のデメリットでしょう。上りでギアが足りなくなるといった状況に陥った経験を持つ人も少なくないはずです。
デメリット②シフトチェンジの回数が増える
平坦な道では特に問題はありませんが、勾配の差が多い道では適切なギアにするために頻繁にシフトチェンジをしなければなりません。また、一気に加速する場合には連続的なシフトアップを要します。
ワイドレシオのスプロケットのメリット・デメリット
メリット①激坂に強い
ワイドレシオのスプロケットの最大のメリットは、初心者でも軽く坂道を走ることができる点です。歯数の多いギアならペダルが軽く踏めるので、激坂でも比較的楽に上ることができるでしょう。
メリット②漕ぐのが楽
歯数の多いギアはギアそのものが大きくなりますが、ギアが大きいほどペダルを漕ぐのは軽くなります。歯数が多い大きなギア、つまりワイドレシオは少ない力で楽に走ることができるというわけです。
デメリット:ペダリングの重さの変化が大きい
隣り合わせのギアの歯数に開きがあるので、変速時のペダリングの重さが大きく変わってしまう点がデメリットとなります。そのため、加速がスムーズにできない、走行や路面の状況にちょうどいいギアがないといったケースも少なくありません。
近年のワイドレシオ化増加の理由
以前はクロスレシオが普通
以前はロードバイクのリアスプロケットは「11-25T」のクロスレシオのギアが大半でした。しかし「11-28T」が増え、今や「11-32T」や「11-34T」といったワイドレシオのギアを標準装備した完成車も少なくありません。
ロードバイクの多様化
こういった傾向の理由として、まずロードバイクの多様化が挙げられるでしょう。以前は「ロードバイク」=「スピード」であり、メーカーもそういった設計で完成車を販売していました。しかし、近年は速さを求めるだけでなくロングライドを快適に走る「エンデュランス」や砂利道などの未舗装路走行を楽しむ「グラベル」といったカテゴリーの人気も高まっています。
ギアの向き不向き
このようなカテゴリーのモデルではスピードは求められず、クロスレシオよりワイドレシオのほうが適しています。したがって、メーカーでもワイドレシオなギアを採用したモデルを多く販売するようになってきているのです。
105がモデルチェンジ
また、シマノの105以上のランクのコンポーネントが11速になったのも大きな理由といえます。スプロケットの枚数が少ない中でワイドレシオにすると変速時のショックが大きくなりがちですが、歯数が多くなれば広いギア比をカバーしショックが少なくスムーズな変速がしやすくなります。
ワイドレシオがおすすめの人とは
脚に負担を掛けない走り
歯数の多いギアではペダルは軽く、歯数が少なければ重くなります。平坦な道や坂道といった走る状況に応じてギアを軽くしたり重くしたり切り替えて、できるだけ脚に負担を掛けないように走るのが基本です。
乗り手によって最適なギアは異なる
したがって、平坦な道では中間くらいのギアでペダルをくるくる回して、坂道、特に激坂では軽いギアで上るというのが理想です。とはいえ、同じギアでも激坂が上れる人もいれば無理という人もいるように、どの状況でどんなギアが最適なのかは乗る人によって異なります。
どちらがいいという問題ではない
ワイドレシオとクロスレシオについて考えた場合、どちらがよいか悪いかということではなく、走り方や乗り方また乗り手によってどちらが適しているか、向いているかという判断が重要です。
こんな乗り方ならワイドレシオ
ワイドレシオが適しているのは、ロードバイクをロングライドや街乗り、また旅行の足といったスタイルメインで乗る人でしょう。また、坂道を上るのがツラい、激坂が苦手、といった人もワイドレシオはおすすめです。
スプロケット交換でさらに快適な走りを
スプロケットのワイドレシオとクロスレシオとでは、ロードバイクの性質は大きく異なります。ロードバイクに乗り始めた最初のころはさほど意識しなくても、やがて自分に合っているのはどちらだろうと考えることもあるでしょう。そんな際、スプロケットの交換を考えるものいいでしょう。それにより、さらに快適な走りも可能となるかもしれませんよ。