自転車のクランクとは?
「クランク」は自転車を構成するパーツのひとつで、「フロントギア」とも呼ばれます。ペダルの根元付近にあるギア(歯車)がそれで、ギア数は1枚(シングルギア)・2枚(ダブルギア)・3枚(トリプルギア)があります。今回はコンパクトクランクとノーマルクランクについて、これらが採用されるロードバイク用のギア数が2枚(ダブルギア)に絞って解説していきます。
自転車用クランク(フロントギア)の種類
- 1枚ギア(シングルギア)
- 2枚ギア(ダブルギア)※この記事で取り上げるのはこのタイプ
- 3枚ギア(トリプルギア)
歯数の表記
クランクをはじめ、ギアの歯数は「53T」などのように、数字とアルファベットのTで表記されます。この場合、数字の「53」は実際の歯数を表し、「T」は英語の「Tooth(歯)」を意味します。読みかたは「ゴジュウサンティー」もしくは「ゴジュウサンチョウ」が一般的です。「チョウ」と読むのは、アルファベットの「T」が、漢字の「丁(チョウ)」に似ていることに由来します。

クランクの役割
では、自転車のクランクにはどんな役割があるのでしょう? ロードバイク用の2枚ギアには、大きいギア(アウターギア)と小さいギア(インナーギア)があり、それぞれ特徴があります。切り替えはシフターと呼ばれる変速用のレバー・ダイヤル・ボタンなどで行います(シフターの種類によって違います)。シフターの種類を問わず左手側がフロントギアの切り替え用です。
アウターギア(大歯車)
アウターギア(以後アウター)は外側についている大きい歯車で、一回転あたりの進む距離が長く、平地を巡行する場合などに向いているギアです。スピードを乗せやすい反面、ペダルを回すのに大きな力(脚力)が必要になります。
インナーギア(小歯車)
インナーギア(以後インナー)は内側についている小さい歯車で、一回転あたりの走行距離は短いですが、軽い力で回せるのが大きな特徴です。上り坂やストップ&ゴーの多い市街地などで重宝します。脚力に自信のない人や、こどもや女性の方なども最初はインナーから始めると漕ぎやすいのでおすすめです。
代表的なクランクの種類
フロントギアである自転車用クランクの役割がわかったところで、いよいよ具体的なお話に入っていきましょう。ロードバイク用ダブルギアクランクは大きく分けて三種類あります。
- ノーマルクランク
- コンパクトクランク
- セミコンパクトクランク
ノーマルクランク(53-39T)
まずはノーマルクランクです。ロードバイクではもっともポピュラーなクランクで、歯数は53-39Tです。これはアウターが53T、インナーが39Tであることを表しています。ロードレースなどでも一般的に使われるタイプで、アウターとインナーのギア比のバランスがちょうどよく、平坦でも上りでも使えるクランクです。
コンパクトクランク(50-34T)
そしてコンパクトクランクは、歯数が50-34Tのクランクです。フロントギアの場合は歯数が少ないほど軽い力で回せるので、上り坂でも比較的楽に回せる利点があります。反面、スピードは上がらないので、下りなどでは回し切ってしまう可能性もあります。エントリーモデルの完成車に多く採用されていますが、ヒルクライムレースなどではプロも使用することがあります。
セミコンパクトクランク(52-36T)
セミコンパクトクランクはノーマルクランクとコンパクトクランクの中間的な存在です。歯数は52-36Tで、アウターはノーマルクランクに近く(1T少ない)、インナーはコンパクトクランクに近い(2T多い)設定になっています。これにより、双方の特性を合わせ持った画期的なクランクといえます。アウターとインナーの歯数の落差が大きいので調整は少しシビアになります。
クランクの種類まとめ
- ノーマルクランク(53-39T)
- コンパクトクランク(50-34T)
- セミコンパクトクランク(52-36T)

この他にも55-42Tや46-36Tなどのクランクもあるわ。上の三種類でもしっくりこない人は試してみてね。
コンパクトクランクの特徴
コンパクトクランクのメリット
ロードバイクのコンパクトクランクはノーマルクランクに比べてひと回り小さく歯数が少ない、まさにコンパクトなクランクです。コンパクトクランクの最大のメリットは軽い力でペダルを回せることにあります。ヒルクライムなどの脚に負荷のかかる場面では特に恩恵を感じるはずです。
こんなシーンにおすすめ!
ヒルクライムレースや上りメインのコースに向いているのはもちろんですが、ストップアンドゴーの多い市街地にマッチした仕様でもあります。トップスピードは求めずに、上りを楽に回したい・坂道や信号の多い場所を走る、などのシーンにしっくりとくるでしょう。
こんな人にもおすすめ!
軽い力で回せるということは、脚力に自信のない人や、女性やこどもにとってとても優しい仕様といえます。ロードバイクに慣れていない初心者にもとてもおすすめなので、まずはコンパクトクランクから入ってみて、慣れてきたらノーマルに入れ替える方法もあります。もちろんコンパクトクランクのまま乗り続けるのもひとつの選択肢です。
コンパクトクランクのデメリット
コンパクトクランクは歯数が少ないぶんスピードは伸びづらく、ロードレースやダウンヒルにはあまり向いていません。スピードを求める場合やロングライドなどはノーマルクランクのほうが向いているといえます。もちろんギア比・脚質・好みなどで選択肢は人それぞれですが、一般的にはそのような傾向にあります。
コンパクトクランクが軽く回せる秘密
秘密はギア比にあり!
なぜコンパクトクランクは軽く回せるのでしょう? それはギア比に秘密があります。ギア比とは、前後のギアの比率であり、大きさやギア数によってそれぞれ変わってきます。4.82や1.13などの数値で表され、数値が高い(ギア比が高い)ほど進む距離とスピードも高く、数値が低い(ギア比が低い)ほど進む距離とスピードはあまり出ません。
ギア比が高い(数値が高い)
- スピードを出しやすい
- ペダルを回すのに大きな力がいる
ギア比が低い
- スピードはあまり出ない
- ペダルを回すのに小さな力ですむ
ギア比の特性
例えば、後ろのギア(カセットスプロケット)を変えずにフロントをノーマルからコンパクトに変えた場合、フロントの歯数が少なくなるぶんギア比は低くなり、進む距離は短くなりますが代わりにペダルは軽やかに回せる特性となります。反対にコンパクトからノーマルに変えればギア比は高くなり、スピードは出しやすくなりますがそのぶん脚力も必要になります。
ギア比の設定
クランクとカセットスプロケットとの組み合わせでギア比は無数のパターンがあります。スプロケットのギア数は8〜12枚(グレードによって違う)あって、歯数も多くの組み合わせがあるので、自分にあったギア比を見つけるのは容易ではないかも知れません。どれを選べばよいかわからない場合は、サイクルショップなどで相談するといいアドバイスがもらえるかも知れませんよ。
ギア比の計算方法
自転車のギア比は、前と後ろのギアの大きさ(歯数)によって決まります。【ギア比=フロントギアの歯数÷リアギアの歯数】となり例えば、フロントが50T、リアも50Tだとしたら、クランクを1回転させると後ろタイヤも1回転します(ギア比1.00)。前が50T、後ろが14Tだとしたら、クランクを1回転させると後ろは3.57回転することになります(ギア比3.57)。
クランクを選ぶ際の注意点
上の項で紹介したように、ロードバイクのクランクは主にノーマル・コンパクト・セミコンパクトの三種類があります。クランクを含めたコンポーネントと呼ばれる駆動系パーツにも種類があり、グレードによって用意されているクランクの種類も異なります。
コンポーネントの互換性
シマノの場合はエントリーモデルとハイエンドモデル(具体的には105以上か以下か)では互換性がないので、場合によってはコンポーネントごと交換する必要があります。例えばノーマルクランクは105以上のグレードにしか設定がなく、SORAはコンパクトクランクのみの設定しかありません。SORAにノーマルクランクを組みたい場合はコンポ一式交換する必要があります。
クランク長
クランク長も重要な要素です。クランク長はクランクの根元部分からペダルまでの長さのことで、シマノの場合は165〜180mmの間で2.5mm刻みでラインナップされています(グレードによって異なります)。身長や股下の長さから大まかなサイズは割り出せますが、適正サイズは人それぞれです。迷ったら信頼できるサイクルショップで相談してみましょう。
シマノはアルテグラ以上がおすすめ
シマノの場合はアルテグラ以上ともなると、上記の三種類のクランク以外にもより詳細な歯数設定が用意されていますし、クランク長も豊富にラインナップされています。アップグレードなどの将来性や走るシーンによって頻繁にクランクを変える場合を想定するなら、アルテグラ〜デュラエースを選択するのがおすすめです。初期投資は少しかさみますが、トータルで見ればお得といえるでしょう。
特性の違いを理解して上手に使い分けよう!
コンパクトクランクの最大の利点は、軽い力でペダルを回せることにあります。負荷のかかる上り坂や、脚力のない人でも比較的楽に自転車を進めることが可能です。ノーマルクランクはステージを選ばないオールラウンドな特性が魅力です。乗りかたや脚力に合わせて使い分けることで自転車の楽しみの幅が広がることでしょう。上手に使い分けて自転車をより快適に楽しいものにしましょう!
「歯数」は歯車一枚についているギザギザの数のこと。「ギア数」は歯車の数のことだよ。