スプロケットとは
コンポーネントはパーツの集合体
ロードバイクなどのスポーツバイクで、駆動系と制御系においておもな役割をするパーツ群を「コンポーネント」といいます。コンポーネントはしばしば「コンポ」と略されますが、ロードバイクの走りに多大な影響を与え、バイクの性能を左右する非常に重要なパーツの集まりです。
コンポは主に8つ
コンポは、シフト/ブレーキレバー、フロントディレイラー、リアディレイラー、クランクセット、カセットスプロケット、ブレーキ、べダル、ボトムブラケット(BB)の8つのパーツを指します。さらに、シフト/ブレーキワイヤーやチェーン、ホイールなどをコンポのグループのひとつに加えるケースもあります。
スプロケットはギアのセット
このうち、後輪に複数のギアが組み合わさってカセット式にセットされているパーツがカセットスプロケット、略してスプロケットと呼ばれます。ロードバイクでは平坦な道や坂道など、走る状況に応じギアを変えて適切なペダルの重さに調整しますが、スプロケットはそのギアの集合体です。
スプロケットは「歯車」
シマノのスプロケット
ギアの変速を行うスプロケットは、変速の段数分のギアがひとつのセットとして組み合わさっています。たとえば、ロードバイクで11段変速といえば、11枚のギアがひとつのスプロケットとしてまとまっているということです。現在、世界の自転車パーツシェアの8割程度を占めるシマノのコンポには、グレードなどに応じて8~11枚までのスプロケットがラインナップされています。
ペダリングの力を伝える
スプロケットとはもともと映画の撮影機や映写機などのフィルム送りのために用いられる「鎖歯車」のことで、ロードバイクのスプロケットも歯車のようなギザギザのついた板状のギアが複数重ねられています。このギザギザ部分にチェーンを引っ掛けることで、ペダリングの力をチェーンを通じてホイールに伝達することができるのです。
ワイドレシオとクロスレシオとは
スプロケットの歯数の違い
スプロケットの板それぞれのギアの歯数の組み合わせはさまざまです。基本的に、スプロケットの歯数が少ないほうがペダルは重くなり多ければ軽くなる一方、歯数が少なければスピードは遅く多ければ速くなります。したがって、平坦や上りといった道路の状況に応じて歯数の組み合わせをギアを変えて行うことで快適な走行ができるというわけです。
11-28Tって何?
スプロケットの組み合わせは「11-28T」といった数字で表記します。この場合、重い側(トップ側)のギアの歯数は11、軽い側(ロー側)のギアの歯数は28という意味で、11から28の歯数の中でのギアの組み合わせが可能ということなのです。
歯数が多いか少ないか
スプロケットは歯車の枚数や歯数の違いによるいくつかの種類があります。歯車の枚数の違いは変速数というかたちによって表現されます。歯数はワイドレシオとクロスレシオという呼び方で表されます。ワイドレシオは歯数の差が大きい、つまりワイド(広い)なもの、クロスレシオは逆に歯数の差が少ない、つまりクロス(近い)しているものということです。
枚数は同じでも歯数が違う
ここでは、シマノの人気コンポ105のスプロケットを例に挙げてみましょう。現在105には5つのモデルがあります。変速は11速なのでどのモデルも歯車の枚数は11枚ですが、歯数の組み合わせの違いによって分類されています。
クロスレシオとワイドレシオの歯数の例
たとえば、最も歯数の少ない「12-25T」の歯数は「12-13-14-15-16-17-18-19-21-23-25」というギアの組み合わせになっています。一方、「11-34T」の歯数は「11-13-15-17-19-21-23-25-27-30-34」です。つまり、前者がクロスレシオ、後者がワイドレシオというわけです。
ギアの歯数の組み合わせ
同じ11段変速でも、クロスレシオのほうは最初の8段は歯数が1つしか変わりませんが、ワイドレシオでは2つずつ増加するうえに27、30、34という歯数のギアが追加されています。このように、ワイドレシオとクロスレシオとではギアの組み合わせがまったく異なります。
ワイドレシオのメリット・デメリット
ワイドレシオのメリット
ワイドレシオの最も大きなメリットは、上り坂でも楽に走ることができることでしょう。軽い側に大きなギアを選択すればペダルを軽く回せるので、軽い力で坂道でも上ることができます。特に「激坂」といわれるような坂道で、ワイドレシオは真価を発揮してくれるでしょう。
ワイドレシオのデメリット
歯数の違いが大きいため変速時にペダルを踏む重さが変わり過ぎて、スムーズに加速や減速ができなかったり脚に負担がかかるといった点がデメリットに挙げられます。また、微調整ができないので「ここでこの歯数が欲しい」といった際にちょうどいいギアの選択ができないのもデメリットとなります。
クロスレシオのメリット・デメリット
クロスレシオのメリット
クロスレシオのメリットは、歯数の差が少ないために変速時のペダルを漕ぐ重さの変化が少なくスムーズな変速が可能な点や足にかかる負担が微調整できる点が挙げられます。また、ギア自体の大きさが歯数が少ない分小さいのでスプロケットの重量が少し軽くなるという点もメリットのひとつといえます。
クロスレシオのデメリット
上り坂では脚力がないとキツい点が最大のデメリットです。また、細かな調整ができる代わりに平坦な道以外の勾配差が多い場所では変速する回数が増えたり、一気に加速したいときはシフトアップを連続して行う必要があります。
ワイドレシオとクロスレシオ、どっちがいいの?
ワイドレシオとクロスレシオは、どちらにもメリットとデメリットが存在します。したがって、どちらがいいか悪いかというよりもどちらが自分に適しているかを考えて選択すべきでしょう。ワイドレシオとクロスレシオについて、それぞれ向いている人やシーンを紹介しましょう。
クロスレシオが向いている人・シーン
効率よく走れる
クロスレシオは細かいギアの調整が可能なので、効率よく走りたい人に向いています。ヒルクライムではワイドレシオのほうが楽に上れますが、ある程度脚力のある人なら自分の力に応じてギアの微調整のできるクロスレシオのほうが走りやすいでしょう。
平地やロングライドメイン向け
平坦な道をメインで走る人にとっては、軽いギアはあまり必要ありません。また、ロングライドでも自分の脚の状態に応じたギアが選択できるクロスレシオのほうが負担が少なくて済みます。
ワイドレシオが向いている人・シーン
ワイドレシオは上り坂を楽に上ることができるので、ロードバイク初心者や脚力の弱い人、坂道が苦手な人におすすめです。平坦な道ばかりを走るロングライドにはクロスレシオが適していますが、山道を走ったり峠超えをするなどの状況がありそこで脚力を使い果たしてしまうなら、ワイドレシオもおすすめできます。
自分に適している方を選ぼう
クロスレシオかワイドレシオか、どちらがいいかという問題はあくまでも乗る人によります。どんな走り方をするのか、したいのか、またどんな乗り方をしているのかといった点から自分にふさわしいスプロケットを見つけましょう。また、ギア比はフロントチェーンリングのギア歯数も大きく影響するので、スプロケットとチェーンリングの両方のバランスを考慮することも大切です。