自転車のギアが不調の時は変速機の調整が必要
自転車のギアが変わらない時は、修理に出す前に変速機をチェックしましょう。ギアが変わらない原因はいくつかありますが、変速機を調整すると改善することがよくあります。今回はスポーツ系の自転車で幅広く使用されている「シマノ製の外装6段変速機」を元に、初心者にもわかりやすく調整方法を解説します。難しい用語や作業は省いていますので、どうぞ最後までご確認ください。
自転車の変速機とは
自転車の変速機には内装ギアと外装ギアがあります。内装はママチャリ、外装はスポーツバイクによく装備されています。ディレイラーとも呼ばれ、前側がフロントディレイラー、後ろ側がリアディレイラーです。「ギアが入らない、もしくはずれる」といった症状はリアディレイラーの調整で改善が見込めますので、今回はリアディレイラーの調整方法に絞って解説します。
スポーツバイク全般
スポーツバイクの大半はフロントディレイラーとリアディレイラーの両方ついています。ギアの仕組みは自動車のMT車や大型のオートバイと同じですがスポーツ系の自転車はギアが剥き出しの構造です。したがって錆や汚れの影響を受けますので、定期的なメンテナンスが必要です。変速方法はハンドルに付いているシフトレバーを使います。
ママチャリの場合
通常、ママチャリはリアディレイラーでギアなしか内装3段ギアです。スポーツバイクの外装6段は「ギアがむき出し」に対してママチャリの内装3段はギアが内部に密封されるため、錆や汚れに強く頑丈です。整備は特別な場合を除いて必要ないので調整方法も覚える必要はありません。ママチャリは機能性重視で選ばれる自転車ですのでメンテナンスフリーは大きなメリットです。
内装3段ギアと外装6段ギアの違い
内装3段変速 | 外装6段変速 | |
走行環境 | 全般 | 全般 |
ギアの幅 | 軽〜重の幅が狭い | 軽〜重の幅が広い |
変速のタイミング | いつでも | 走行中 |
メンテナンス | ほぼ必要なし | 定期的に必要 |
ギアの構造 | 密封されていて見えない チェーン外れにくい |
剥き出し チェーン外れやすい |
自転車に乗るために変速機の調整が必要な理由
変速機構のあるスポーツバイクにしばらく乗っていると、やがてディレイラーにつなぐワイヤーにたるみがでてきます。そうすると1速に入らない(ギアの一番大きい部分)事態に陥り、スムーズなギアチェンジができません。ワイヤーのたるみを直そうとして張りすぎると逆に6速(ギアの一番小さい部分)が入らないという事態になるので注意が必要です。
ワイヤーのたるみは購入後、半年から1年の間によくみられる
ワイヤーがたるむ症状は新車で購入した後、半年から1年の間によくみられます。たるみを適切に調整すれば、スムーズにギアを変える事ができますので定期的な調整は必須といえるでしょう。
自転車の変速機 各部の名称
シフト(シフター)
自転車のギアを切り替えるのに使うのがシフトです。現在の主流である3種類をご紹介します。
シフトの種類①ロードバイク用
ロードバイクに使われるドロップハンドルのシフトレバーには、ブレーキ一体型のコントローラーが採用されています。ギアが前後にあるため、コントローラーも左右にあります。使い方は「ギアの操作は内側に握り込むように押す、ブレーキは普通にまっすぐ引く」というのが一般的です。
シフトの種類②グリップシフト
フラットバー用のシフト(シフター)で、ハンドルグリップの根元に数字が表示されており、グリップを回すことでギアを変える事ができます。スポーツバイクの中でも比較的安価なクロスバイクや小径自転車、ママチャリに装備されており、ロードバイク用に比べて操作が簡単です。
シフトの種類③トリガータイプ
フラットバー用のシフト(シフター)で、トリガーの文字通り、引き金のような形をしたレバーを操作することでギアを切り変えます。有名どころではシマノの「ラピッドファイヤー」やSRAMの「トリガーシフター」がトリガータイプです。グリップシフトより高価ですが、変速の精度や故障の少なさから人気があります。ガータイプのシフトはママチャリからスポーツバイクまで幅広く採用されており、グレードも初心者から上級者まで揃っています。使い勝手と性能から現在、主流のシフターとして注目されています。
リアディレイラー
リアディレイラーについているガイドプーリーとテンションプーリーの位置調整はスムーズなシフトチェンジをするためには必須です。
リアディレイラーのガイドプーリーとテンションプーリーとは
リアディレイラーの仕組みは、シフトの種類に関係なく共通です。リアのギアはタイヤ側から低速ギアで外側に向かって高速ギアになります。歯車の大きさは低速が大きく、高速になるにつれ小さくギアの歯が少なくなってきます。ギアチェンジの時、チェーンがたるみ外れることを防止するのがテンションプーリー、チェーンの位置をそれぞれのギアにはめる役割を担っているのがガイドプーリーです。
自転車の変速機(主にリアディレイラー)を調整する方法
ギアがうまく入らない場合の大半はリアディレイラーを調整することで改善します。ここでは初心者向きの簡単な方法をお伝えしますので、是非チャレンジしましょう。ディレイラーの調整で使用する道具は、プラスドライバーとリアタイヤを浮かすためのスタンドです。スタンドは絶対必要ではありませんが、整備の途中で自転車が倒れて傷つく可能性があります。スタンドは普段の駐輪にも使用できますので1つ持っておくと便利です。※一般的なシマノギア製品での話
リアディレイラーの調整方法
シフトワイヤーの状態をチェックする
まずはチェーンとトップギアへ移動させます。シフトレバーとディレイラーを繋ぐワイヤーをチェック。「ぷらんぷらん」になるほど緩んでいたらワイヤーを張り直します。
ディレイラーの調整方法【トップ側】
- フロント側をアウターにして、リア側を一番外側の歯車(トップ)に合わせます。
- この状態のまま、後ろから見てトップギアとプーリーが垂直の位置にあれば適正位置です。
- トップギアとプーリーがずれていた場合は2つあるボルトの奥側を回してディレイラーを調整します。右に回せば内側、左に回せば外側に動きますので、少しずつ回しながらディレイラーの位置を調整しましょう。
ディレイラーの調整方法【リア側】
- フロントをインナーにして、リアを一番内側の歯車(ロー)に合わせます。
- トップ側の時と同じように後ろから見てローギアとプーリーが垂直の位置にあれば適正位置です。
- ローギアとプーリーがずれていた場合は2つあるボルトの手前側を回してディレイラーを調整します。右に回せば外側、左に回せば内側に動きますので、こちらも少しずつ回しながら調整しましょう。
シフターと変速機の調整方法
シフトレバーとうまく連動するための調整を行います。シフトレバーとディレイラーを繋いでいるワイヤーの張り具合を調整する作業です。
- フロントをアウターにして、リアを一番外側から2枚目の歯車に合わせます。
- 次にペダルをゆっくり回転させながら、シフトレバーをあそびの分だけ軽く押します。
- チェーンが外側から3枚目の歯車に擦れて金属音が鳴れば適正位置です。
- 軽くシフトレバーを押しただけで3枚目のギアに入る、金属音がならない場合はアジャスターを回して調整する必要があります。
- アジャスター調整はデリケートなので、1/4回転ずつ回して様子を見ながら慎重に行ってください。
- ペダルを回しながらトップからローまで変速させてスムーズに切り替わったら完了です。
パーツの破損は修理が必要
一通り作業しても改善しないときはリアディレイラーが曲がっている可能性もあります。転倒の仕方によっては簡単に曲がりますので、その場合はどんな調整方法でも改善しませんので、迷わず修理に出しましょう。
シマノが公開しているマニュアルを活用
シマノ製品の整備に関してもっと詳しく知りたい場合はシマノ公式ホームページをご確認ください。シマノ公式ページではパーツに合わせたマニュアルをダウンロードできます。シマノ製品をお使いでしたら是非ご活用ください。
シマノ公式ページへは下のリンクからアクセスできます。
自転車はギアの調整以外にも清掃が必要
ギア周りの調整は大切ですが、チェーンやスプロケットの汚れがひどいと、ギアがスムーズに入りません。雨の日や悪路を走った後は特に気をつけてチェックしてください。
自転車のチェーンを洗浄する方法
チェーンは消耗品ですが、ちゃんとメンテナンスをすれば数年は問題なく使用できます。メンテナンスといっても外す必要がないので慣れれば簡単。順番に説明します。
- チェーンを雑巾などで軽く拭く
- 中性洗剤を同量の水で薄めた洗浄液にチェーンの一部を漬ける
- チェーンを回して全体に洗浄液が行き渡るようにする
- 汚れが落ちるので、洗浄液を水に換え泡がなくなるまでチェーンを回してゆすぐ
- 乾いた布で水分をしっかり拭き取り、チェーンの内側に注油する
- チェーンのサイドについた油を拭き取る
自転車のスプロケットとチェーンリングを清掃する方法
スプロケットの清掃方法
スプロケットの清掃はさらに簡単です。タイヤを外し、乾いた布をスプロケットの隙間に差し込みゴシゴシと前後に動かして拭くだけで綺麗な状態に戻せます。後はタイヤをセットし、注油したチェーンをギアを変えながら回して全体に油が回し馴染ませたら完了です。
チェーンリングの清掃方法
チェーンリングはスプロケットのようにタイヤを外して拭くわけにはいかないので、そのまま乾いた布で拭きあげます。少し拭きにくいですが長めの布を使って隙間に差し込み、スプロケットと同様に前後に動かして汚れを落とすと見違えるほど綺麗になります。
自転車は定期的なギア周りのメンテナンスが重要
自分で解決できない時はプロに任せる
やれるだけやって、それでも改善しない場合は無理せず購入店かお近くの自転車屋さんで修理してもらいましょう。ある程度費用がかかるのでためらうかもしれませんが、プロの作業を間近で見せてもらう為の投資と考えれば安いものです。どこまで自分にできるか知るチャンスでもあります。
メンテナンスを楽しむ事が安全につながる
自転車をメンテナンスすることで次第に愛着が湧いてきます。するとメンテナンス自体が楽しくなってきますので、より丁寧になり、難易度の高い作業にも挑戦しするでしょう。結果、自転車を乗る上での安全性も高まります。日頃から定期的なメンテナンスを欠かさないように心掛けましょう。
撮影:著者