スプロケットとは
スプロケットは、自転車を構成する基本的な部品のひとつで、ロードバイクでは複数の歯車を、組み合わせたギア群のことを指します。ギアの枚数は現在11枚が主流で、ホビーユーザーからプロユーザーまで、広く普及しています。スプロケットはカセットスプロケットとも呼び、歯数が異なるギアの組み合わせのカセットを交換することで、平坦路あるいは登坂路の走りやすさを変化させることができます。
スプロケットは自転車には必須
スプロケットは、後輪ホイールの車軸に正しく取り付けることで、初めて機能を発揮する部品です。後輪ホイールの取り付け部には、スプロケットが嵌合(かんごう)する専用の構造規格が存在し、ロードバイクでは、シマノとカンパニョーロの2社が製造する規格が主流です。ちなみに、シマノとカンパニョーロの規格は互換性がありませんので、ユーザーは自分が使う規格が、どちらであるか確認しましょう。
駆動エネルギーを車輪に伝える重要な部品
ライダーが、ロードバイクで道を進むためには、後輪駆動なので、後輪ホイールを回転させる必要があります。この車輪を回転させる仕組みは、さまざまな部品が組み合わされて成り立っています。スプロケットはその構成部品の1つで、2つの役割があります。1つ目は、ライダーのエネルギーを回転に変換させる役割で、2つ目はホイールの回転数を変化させる役割です。
異なる歯数のギア構造
ロードバイクでは変速したときに、スプロケット上をチェーンが左右に動きます。チェーンが動いて、軽い力でペダルを回せるときは、ギア比が小さく、重いときはギア比が大きいと解釈します。変速機能を持つ自転車に乗ったことがあれば、坂道で軽いギアに変速したら、楽だった体験があるでしょう。このようにペダルを軽い力で回せるときは、自転車はトルク=登坂力を発揮できるのです。
スプロケットはロックリングで固定
カセットスプロケットは、変速の力やライダーの漕いだ力が、断続的に掛かる部品です。そのため、ホイールに、強固な固定がされている必要があります。その固定を担う部品が、ロックリングという部品で、ロックリングを外すことが、スプロケ交換の絶対手順になります。
スプロケットを外すために必要な工具
スプロケット交換には、工具が絶対に必要で、素手はもちろん、ペンチやドライバーなどの普通の工具では、作業できませんので、自転車専用工具を用意しましょう。また、工具とは別に、外したギアをクリーニングする道具もあると、後々工具やスプロケの寿命を長く使うことができます。次ページからは、具体的な道具を紹介します。
外し方に必要な工具は2種類あります
ロックリングを外す工具を用意することが、スプロケット交換の第一歩です。スプロケットの取り外しに、必要な工具は2種類です。スプロケットの回転を抑え込む工具と、ロックリングを緩めたり締めたりする工具の2つです。以下にそれぞれを紹介します。
ロックリング外し工具
ロックリングには、工具が嵌るギザギザの構造があり、この構造にピッタリあう工具が販売されていて、ロックリング外し工具とよびます。まずはこのスプロケットを、緩める工具を購入しましょう。
コンポメーカーに適合した専用工具を選択
ロードバイクでは、ロックリングはシマノ社と、カンパニョーロ社のスプロケが主流になっています。ロックリング取り外しは、それぞれ専用の工具が必要です。ライダーは、自分が使うスプロケットが、どちらのメーカーのものか確認してください。本記事では、シマノ社のスプロケットを前提にしていますが、手順はカンパニョーロ社でも同じです。
スプロケットリムーバー
もう一つの工具は、カセットスプロケットの回転を抑える工具で、スプロケットリムーバーといいます。カセットは後輪ホイールのフリーボディに 取り付けてあり反時計回りに空回するようになっています。ロックリングを外すときには、スプロケットを時計回りに抑え込むためにスプロケットリムーバーを使います。
ロードバイクのギアに適した規格を選択
スプロケットリムーバーには、いろいろなタイプがあり、ピスト用は、外見が似ていてもロードバイクに不適な種類になります。正しくロードバイク用であることを確認してから、購入しましょう。メジャーなタイプは、レンチに短いチェーンが取り付けてあり、スプロケットのギアに嵌るタイプで、チェーンウィップと呼ぶこともあります。なお、本記事の手順内では、トップギアにピンをはめ込んで固定するタイプを使って、手順を説明しています。
ほかにも用意する物
屋外を走行してきたロードバイクの、スプロケットのギア部は、オイルが砂塵やほこりを吸い込んで、黒く汚れています。カセットスプロケット交換に際して、汚れが工具やギアに付着したままになると、それぞれが錆びる原因になります。作業前には、パーツクリーナーとウエスを使って、見えている部分を、あらかじめクリーニングしておきましょう。作業には手が汚れないように、グローブをしておくとよいでしょう。
クリーニングに使う用品も準備
カセットスプロケットを取り外すと、ギアが重なり合って、外からは見えなかった部分も、汚れています。ギアを錆びから防止して、長持ちさせるために、外したら洗浄しましょう。洗浄には、歯ブラシのようなブラシを使うと、汚れを落としやすいです。また、外したギアで床などを汚さないために、大きさ30cm程度のアルミバットなどもあると便利です。
スプロケットの外し方
外し方の大まかな流れは、①ロックリングを回して緩める、②カセットを外す、③カセットを嵌める、④ロックリングを回して締める、が要領になります。この要領にはいくつかの手順があり、その中では使う道具と注意点を確認しましょう。
表面の汚れを取る
スプロケットの表面には、屋外走行で付着したホコリや、砂塵がオイルと混ざって黒く汚れています。汚れは、部品や工具の錆びをまねきます。スプロケット交換の基本動作として、クリーニングをやってみましょう。
汚れを取ると工具をきれいに使える
パーツクリーナーなどを使うと、汚れを溶かして落とすことができます。汚れたままのスプロケを触って作業すると、あちらこちらに汚れを広げてしまいます。また、この後の手順で、使う工具に汚れを付着させてしまうことになります。工具やスプロケを、きれいに長く使うためにもクリーニングが必要です。
ホイールを床に置く
ホイールは、タイヤを床に着けて、膝の前に立てておきましょう。以降、ロックリングを外すまでの手順と、ロックリングを締めこむ作業では、膝の前に立てて置くようにしてください。
工具を掛ける
工具を掛ける向きに注意
ホイールを膝の前に置いた状態のまま、工具をスプロケットに掛けていきます。膝の前に置いたホイールを床に視線を落とすように見て、最初にスプロケットリムーバーを左手側に掛けます。次に、右手側にロックリング外し工具を掛けます。ここで、それぞれの工具の向きは、ホイールを時計として正面からみたときに、10時10分の位置になるように掛けます。
工具を奥まで差し込むことが外し方のポイント
ロックリングを外すには、ロックリング外しと工具の嵌合を、確実に行う必要があります。以降の手順では、工具に力を掛ける場面がありますが、嵌合が浅いと途中で外れてしまい、ケガや破損を引き起こすことがあります。ですので、この嵌合ではロックリング外しを、奥まで差し込むのがポイントです。奥まで挿し込めたかどうかは、工具が差し込めなくなるまで差し込めば大丈夫です。
工具を回す
工具をスプロケットとロックリングに掛けたら、次は、ロックリング外し工具を回してみましょう。まず、①スプロケットリムーバーに力を込めて、初期位置に固定します。次に、②ロックリング外しを、床に向かって押し下げる方向に力を掛けます。この時、スプロケットリムーバーは、反力で天井方向に動こうとしますが、込めた力で動かないように、抑え込みます。
ホイールの特徴を理解して工具を回す向きに注意します
ロックリングは、時計回りで締めこむ、普通のねじで固定されています。緩めるときは、反時計回りに回す必要がありますが、ロードバイクの後輪ホイールには、フリーボディと呼ぶ構造により、反時計回りに空転します。この特徴のために、ロックリングを外すときは、スプロケットリムーバーで空転を抑え込んで、ロックリング外しを、必ず反時計回りに回すようにしましょう。
しっかり押さえて徐々に体重を掛ける上手な回し方
ロックリング外しを、床方向に回していくとロックリングが外れます。この時、いきなり強い力で力を掛けると、ロックリングが一気に緩んで、工具が勢いよく外れて、危険です。この手順ではロックリング外しに、徐々に力を掛けていき、ゆっくり回し始めることが重要です。工具に抵抗がなくなったら、工具を外し手でロックリングを回して、取り外すことができます。
続いて、スプロケットの交換方法を紹介!
撮影:著者