自転車通勤がいま増えている!
環境への配慮や健康志向から、近年都市部を中心に自転車での通勤が増えています。中でも、2020年になってからは、自転車で通勤を行なう人の割合が20~25%の増加しています。
自転車通勤が増えた背景①公共交通機関の混雑回避
自転車通勤が増えた一番の理由は、感染症対策として3密になる満員電車やバスを避け、自転車での通勤を選ぶ人が増えたからです。それまでも満員電車を嫌う人は積極的に自転車通勤をしていましたが、感染症の流行で改めてその利点が見直されています。
自転車通勤が増えた背景②自転車利用促進政策
国も自転車の利用を勧めています。2016年に自転車活用推進法が制定され、その中の重点的な取り組みの中に「自転車通勤の拡大」があります。ここで事業者・従業員双方に自転車通勤のメリットをあげながら、企業への導入支援を行っているのです。
自転車通勤が増えた背景③ホビーサイクリストの増加
例え国や企業が自転車通勤を勧めても、関心のない人は自分からわざわざ自転車で通勤しようとは思いません。普段から自転車を愛用し、趣味でも自転車を楽しむ人が多くなったことも、自転車通勤が増える追い風になっています。
自転車通勤にまつわる問題
順調に浸透している自転車通勤ですが、利用者の増加に伴っていろいろな問題も増えているようです。ではその問題には何があるのでしょうか。
問題①インフラ整備が追いつかない!
自転車が安心して走るには、自転車用の走行レーンや走行エリアの整備が不可欠です。現在多くの幹線道路では左側の路面に自転車ナビマークや専用のレーンが増えています。一方で狭い一般道はまだまだ整備が行き届かず、荒れた路面・路肩や粗いグレーチング枠、多くの路上駐車など、問題が山積みなのが現状です。
問題②ドライバーの理解がまだまだ不足!
最近少なくなったものの、普通に走っていてもタクシーや車にクラクションを鳴らされる場面も見かけます。本来の道路交通法では自転車は軽車両であり車道の左側を走るものですが、頭では理解してもいまだに「車道は車やオートバイのもの」「自転車は歩道を走れ」という思考から抜けられないドライバーも一定数いるようです。
問題③自転車乗りのルール・マナーが追いつかない!
最も深刻で重大なのが、自転車に乗る人の問題です。いざ自転車通勤を始めたはいいものの、道路を走るためのルールやマナーを「知らない/無視する」自転車乗りが増えてしまったため、事故やトラブルも同様に増えています。上記であげたドライバーが不快に思う理由も、自転車に乗る側の問題が大きな原因のひとつであるといえます。
自転車通勤で注意するべきこと
せっかくたくさんのメリットがある自転車通勤を選んでも、こうした問題がクローズアップされてしまうようでは台無しです。次にあげるのはどれもごく基本的で当たり前な事柄ですが、安全で模範的な自転車通勤を目指すためにも、改めて心得ておきたい注意事項です。
勤務先の許可をとりましょう
たとえ国が自転車通勤を推奨していても、それを受け入れる会社ばかりではありません。事故のリスクや駐輪場の不備など、何らかの理由で自転車通勤を認めていない企業も少なくありません。必ず最初にご自分の勤め先で自転車通勤が可能か確認し、許可を取ることを忘れないでください。
自転車保険には加入しよう!
自転車もれっきとした車両である以上、事故の責任も軽くありません。最近では歩行者と衝突して死亡させ、数千万円もの賠償が発生した事件も起きています。このため自転車保険の加入を義務化した自治体も多く、2020年4月から東京都でも保険の加入が必須になりました。保険への加入を条件に自転車通勤を許可する会社も多いので、必ず入りましょう。
どんな保険を選べば良い?
現在はたくさんの自転車向け保険があり、掛け金の額も補償の範囲もさまざまです。自分や他人の怪我に対する治療や入院費用などの医療保険、器物の破損などの損害保険は必須です。総合的には個人賠償責任保険で5000万円~3億円までの補償があるのが望ましいでしょう。
安全な装備を心がけよう!
自転車は自分の命を預けます。ブレーキやチェーン、タイヤ、ライトの電池切れなどの状態は常にチェックし、おかしな所は早めにメンテナンスをしましょう。また夜間の無灯火走行は道路交通法違反になるので、夜や薄暗い場合は必ず前後のライトを点けてください。ライトは前が白色で常時点灯、後は赤色のライトかリフレクターと決まっていますが、後ろもライトにした方が周りの視界に入りやすく安全です。
服装にも気を配ろう
服装は基本的に自転車に乗りやすいのが好ましく、季節によって厚さ寒さや汗対策、安全のためヘルメットの着用や自動車の視界に入りやすい格好も大事です。明るい色の服装や車のライトに反射するリフレクターのついた装備も欲しいところです。ビンディングシューズはとっさの事態にすぐ足を離せないので、慣れた人でない限り交通量の多い都市部や、路面状況の悪い道路の通勤にはおすすめしません。
道路交通法は遵守しましょう
自転車で公道を走る場合も道路交通法は守らなければなりません。何を当たり前のことをと思われるでしょうが、自転車は免許不要で誰でも気軽に乗れるためこうしたルールは軽視されがちで、違反すれば当然事故につながり罰則もあります。以下が道路交通法に基づいた自転車の最低限のルールです。この他に「子どもはヘルメットを着用」がありますが、自転車通勤との関連は低いので除外してします。
基本的な自転車走行のルール
- 自転車は、車道が原則、歩道は例外
- 車道は左側を通行
- 歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
- 安全ルールを守る
飲酒運転・二人乗り・並進の禁止
夜間はライトを点灯
交差点での信号遵守と一時停止・安全確認 - 信号を守る
- 片手運転(ながらスマホや傘さし運転など)禁止
- イヤホンやヘッドホンの使用禁止
- みだりにベルを鳴らしてはいけない
守れてますか?これらのルール
皆さんはこれらを守れているでしょうか? 車道が原則にもかかわらず、走りにくいと歩道に上がったりしていませんか? 小さな横断歩道だからと赤信号を無視していませんか? 交差点で二段階右折をせずに平気で右折レーンを通っていないでしょうか。耳にイヤホンを付けて走っていないでしょうか? 当てはまる方は、今日からそうした行為は改めましょう。
交通状況や歩行者には常に注意!「かもしれない」を忘れずに
自分が今走っている道路の交通状況や路面の状態、時には歩行者の動きにも気をつけながら走りましょう。常に「歩行者が急に飛び出してくるかもしれない」「この路上駐車の向こうにもう一台停まっているかもしれない」「この車は急に左側に曲がるかもしれない」など、あらゆる「かもしれない」を想定しながら走ることが大事です。
車間距離は確保しましょう
道路を走る車や自転車、オートバイなどの不意の動きに対応するには、ある程度の車間距離がなくてはいけません。交通渋滞の原因になるかもと、つい前の車と近接してしまいがちですが、これもとっさの場合には反応できません。常に不測の事態を想定し、十分な距離を取りましょう。
車道を安全に走る6つのコツ
交通状況は走る人たち一人ひとりの認知感覚や判断、動きに左右され、ルールだけでは不十分なこともあります。ここではより安全に走るための、サイクリストのマナーに基づいたコツを紹介していきます。
①後方確認はこまめに行なうこと
速度が出ると視界が狭くなり、つい前方にばかり夢中になりがちです。信号や交差点に差しかかる時、タクシーや路上駐車の車が見えた時、後ろから車の気配がする時、グレーチングを避ける時、とにかく後方確認をまめに行いましょう。安全確認と共に、車からも気づいてもらいやすくなります。後ろを向くのが不安な方はバックミラーの使用もおすすめです。
②手信号や合図を確実に
自転車には車やオートバイのような方向指示ライトやウィンカーはありません。手信号や合図は、安全確保や周りの車などへの意思表示のためにも重要ですので、後方確認とあわせてしっかり使いましょう。
覚えておいてほしい手信号の種類
- 右折/右側方向への進路変更:右腕を水平に伸ばす
- 左折/左側方向への進路変更:右腕を伸ばし直角に曲げる/左腕を水平に伸ばす
- 停止:左右どちらかの腕を斜め下に伸ばす
- 減速:手を背中に回し握る開くを繰り返す/斜め下に伸ばした手を上下する
- 路面注意:路面の障害物を指さす
- 道を譲る:右手を後ろから前にすくうように送る
その他、自分が直進中に右折しようとする対向車、左側の歩道から出てこようとする車などには、軽く手を上げて「進みます」とアピールすることで出会い頭での事故を減らすこともできます。
これらの手信号は、片手運転が危険な場合は無理にする必要はありません。
③ドライバーや歩行者の視界に入ること
せっかく手信号を出しても、相手が気づいていなかったり、相手の視界に入っていなかったりでは何にもなりません。自分に気づいてほしい車のドライバーや歩行者が、ちゃんとこちらを向いているかを確認しましょう。もし相手がこちらを見ていないようであれば、減速して距離をとり、様子を見ながら動くほうが安全です。
④路線バスやタクシーの挙動に注意!
幹線道路を走るうえで、路線バスやタクシーとの共存は避けて通れません。どちらも一定時間歩道の左側に停車するので進路がふさがれるだけではなく、発車のタイミングがわかりにくいので追い越しづらいのが悩みの種です。
バスを追い越すタイミングは?
バスが右折のウィンカーを出したらできるだけ追い越しは控えましょう。バスは右側の安全を確認してから発車してくれますが、自転車は視界に入りにくいので過信は禁物です。停車後乗客が乗り降りし始めてから、終わって車体が右に揺れ戻るまでの間を見計らってバスの右側に出ましょう。もちろん後方確認と手信号は忘れずに。
意外と大変なタクシー
バスに比べて行動が読みづらいのがタクシーです。路肩に手を上げている人がいたら減速してタクシーの姿を確認すること。停車するため急に路肩へ寄せられる恐れがあります。ハザードランプが点いた状態で発進したり、右ウィンカーを出すと同時に走り出したりと、タクシーは突発的な動きが多いので常に注意を払いましょう。乗り降りや支払いなど乗客の動きにも目配りをするといいですね。
⑤路面状況に気をつける
路面がいつもきれいな状態とは限りません。穴やひび割れ、溶けて路肩に押し出され盛り上がったアスファルトなど、路面は意外と荒れています。歩道との境目にあるグレーチングも要注意です。雨の日はスリップの原因にもなるほか、目の粗いグレーチング枠に細いロードバイクのタイヤが挟まると転倒の危険性もあります。少し先を見通して、こうした危険は極力避けましょう。
⑥無理な通行はしないこと
無理な通行はくれぐれもやめましょう。時々路肩が狭くてすり抜けができないからと、車と車の間をジグザグに走り抜ける人がいますが、これも車からしたら迷惑ですし、何より危険です。左側通行を守って安全マージンを取りながら走りましょう。急いだところでさほど変わりません。
事故の多い交差点は慎重に
自転車事故が最も起きやすいのが交差点です。二段階右折をせず無理に右折レーンから曲がる、左折する車の視界に入らずに直進したり無理に割り込むなどが多くの原因です。たとえ信号が青でも、交差点では他の車や歩行者の様子を広く視界に入れて速度を落とし、必要な時には一時停止を心がけてください。
何よりも安全が最優先!
自転車よりも高速な車が行き交う車道は、確かに危険がいっぱいです。しかし道路交通法や正しいルール・マナーを守り、他人への気づかいを忘れなければ、むしろより安全に走れるのです。ここにあげた注意点やコツは、どれも本来ごく当たり前のことばかりです。常に警戒心と想像力を働かせて、何よりも安全に走ることを最優先の自転車通勤にしましょう。
歩道を走るのは危険を避けるためなどの「やむを得ない場合」です。その場合も「歩道の車道寄り」を安全な速度で走ってください。