ノーパンクタイヤとは?
自転車に起こるトラブルで最も多いのはタイヤのパンクです。釘やガラス片などの鋭利なものが刺さってしまったり、中のチューブが段差を超える際などに強い衝撃を受けて穴が開いてしまった経験を持っている人も多いかと思います。その際に「パンクしない、パンクしにくいタイヤは無いのか?」と思ったことはなかったでしょうか? 今回はそんな疑問に応えてノーパンクタイヤを解説していきます。
普及率の高い自転車用タイヤは?
ノーパンクタイヤとは
「ノーパンクタイヤ」は読んで字のごとく、パンクしないタイヤのことです。「パンクレスタイヤ」と呼ぶこともあります。自転車に限らずタイヤは中のゴムチューブに空気を入れて膨らませて、真円形にするのが一般的です。しかし、ノーパンクタイヤは中にゴムやウレタンが詰めて形を維持しています。パンクはタイヤの中の空気が抜けてタイヤが潰れてしまう現象のことです。そのため、そもそも空気が入っていないノーパンクタイヤはパンクしにくいという意味ではなく、パンクという概念がないタイヤです。
正式にはソリッドタイヤ!
自転車以外にもトレーラーやクレーン車など高速走行の必要が無い自動車や、電動車いすなどには空気なしタイヤが使用されています。これらのタイヤは正式には「ソリッドタイヤ」といいます。ソリッドは「中まで密な様子」「硬質」などの意味を持ちますので、中に空洞部分がある空気入りタイヤに対し、ソリッドタイヤは「固体」というイメージです。しかし、ソリッドタイヤといわれても想像しにくいこともあり、ノーパンクタイヤやパンクレスタイヤと呼ばれています。
パンクしにくいタイヤとの違い
近年MTBやロードバイクでおすすめされることが多くなった「チューブレスタイヤ」は、タイヤの中にチューブが入っていないという点ではノーパンクタイヤと同じです。しかし、タイヤの内部に空気が入っていますので、チューブタイヤに比べればパンクしにくいものの、パンクする可能性はあります。したがって、パンクしにくいタイヤとノーパンクタイヤは全くの別物です。
ノーパンクタイヤのメリット
ノーパンクタイヤはチューブが無く中に空気が入っていないという構造から、一般的なタイヤと比較した場合に特有のメリットがあります。メリットがデメリットを補えるかどうかかが、ノーパンクタイヤを実装するカギになりますので、詳しく紹介します。
ノーパンクタイヤのメリット①パンクしない!
ノーパンクタイヤのメリットは何と言ってもパンクしないことに尽きます。タイヤがパンクし自転車が走れなくなった状態になったとして、その場で修理する手立てが無ければ立ち往生するばかりです。例えば、通勤途中にパンクした場合、遅刻を避けるために自転車を放置しなければならない可能性もあります。したがって、自転車乗りにとってパンクしないことは何より大きなメリットなのです。
ノーパンクタイヤのメリット②空気を入れなくて済む
空気入りタイヤはチューブタイヤも、パンクしにくいチューブレスタイヤでも構造上自然に空気が抜けますので、定期的に空気を入れる必要があります。空気が抜けた状態のままですと、タイヤの転がりが悪くなったり、パンクの原因にもなります。その点で空気が入っていないノーパンクタイヤは、常に状態が変わらないので安定感があります。
空気入りタイヤは空気圧管理が必要!
空気入りタイヤはタイヤごとに適正空気圧が決まっていて、それを逸脱してしまうとパンクや走行性能が低下するなどのデメリットが発生します。そのため、空気圧をこまめに管理して空気を充填する必要があります。その点空気が入っていないノーパンクタイヤは注意する必要が無いため、わずらわしさがありません。
ノーパンクタイヤのメリット③耐久性がある
空気入りタイヤはパンクしてチューブに穴が開いても修理は可能ですが、その部分の強度が下がります。ノーパンクタイヤに比べ空気入りタイヤの耐久性が低いという意味ではありませんが、修理すればそれだけ耐久性が低くなり、交換時期が早まります。しかし、ノーパンクタイヤはパンク修理をしないので、ベストな状態が長続きするという意味で耐久性がよいと言えます。
ノーパンクタイヤのメリット④メンテナンス頻度が低い
空気入りタイヤは空気圧の管理をしながら空気を入れたり、日々タイヤの状態を確認してパンク防止に努める必要があり、メンテナンスをしなければよい状態を保てないタイヤです。それに比べノーパンクタイヤはそういったことは必要が有りませんし、パンク修理もないため、メンテナンスの頻度はかなり低くなります。
ノーパンクタイヤのデメリット
ノーパンクタイヤはチューブタイヤはもちろん、パンクしにくいチューブレスタイヤと比べても、正直言って普及率は高くありません。それはデメリットがあるからに他ならないため、これから実装を考えている方もしっかり知っておいてください。
ノーパンクタイヤのデメリット①乗り心地が悪い
空気入りタイヤはクッション性があるため、地面からの振動や段差を超える際の衝撃を吸収してくれます。しかし、ノーパンクタイヤはクッション性が低いため、地面からの振動や衝撃を吸収しきれません。吸収しきれなかった振動や衝撃はダイレクトに体に伝わりますので、乗り心地が悪くなってしまいます。
ノーパンクタイヤのデメリット②重い!
タイヤの中に入っているのが空気では無くゴムやウレタンですので、当然ながらタイヤ全体が重くなります。普段使いの街乗り車であれば総重量がタイヤ分重くなってもそう大きな影響はありません。しかし、タイヤが重くなるとペダルを漕ぐのも重くなってしまい、脚に負担を掛けるため無視できません。
ノーパンクタイヤのデメリット③価格が高い
ノーパンクタイヤは安い価格のものでも2,500円~3,000円はします。しかし、空気入りタイヤは1,000円前後の価格からありますし、チューブなら1本700~1,000円で必要十分なレベルのものが手に入ります。そのため、ノーパンクタイヤは価格が高いと言わざるを得ません。
ノーパンクタイヤのデメリット④トラブルも発生する!
自転車のトラブルにおいて最も頻度が高いパンクをしないとはいえ、ノーパンクタイヤにもそれなりにトラブルが発生します。
スポークが折れやすい!
タイヤが重くなるとホイールにも負担が掛かります。ホイールはスポークのテンションによってバランスを取っていますので、負担が掛かってしまうとテンションバランスが崩れて、スポークが折れやすくなります。
内部が変形する
ノーパンクタイヤは上から加重されると内部のゴムやウレタンが変形してしまうことがあり、タイヤが真円形を保てなくなってしまいます。車重が重い電動アシスト付き自転車や、子供乗せ自転車にノーパンクタイヤがほぼ採用されていないのはそのためです。
ノーパンクタイヤの実装が推奨されるシーンと乗り方
ノーパンクタイヤはデメリットも多いので、一概にすべての人におすすめできるものではありません。ここではノーパンクタイヤを実装するに当たってどういう場合がおすすめなのかを解説しますので、参考にしてみてください。
ノーパンクタイヤがおすすめの場合①通勤、通学
通勤や通学などで目的地に到着しなければならない時間が決まっている場合はなるべくトラブルを避ける必要があるため、パンクしないノーパンクタイヤがおすすめです。ただし、長距離になるとデメリットが先行しますので、距離次第ではあります。
ノーパンクタイヤがおすすめの場合②1回に乗る距離が短い
短い距離しか乗らないのであればペダルが重くても脚への負担は少ないですし、乗り心地が悪くても我慢できますので、パンクしないメリットの方を重く見ることができます。
ノーパンクタイヤがおすすめの場合③タフな路面も構わず走りたい場合
砂利道や未舗装の道ではタイヤに衝撃が伝わりやすく、パンクのリスクが高まります。また、走り慣れていない場所では路面の状況が分からず、思わぬものが道に落ちていてそれが刺さってパンクすることもあります。そのため、道を選ばず、たとえタフなコンディションの道でも構わず走りたい場合はノーパンクタイヤがおすすめです。
ノーパンクタイヤがおすすめの場合④とにかくメンテナンスや修理をしたくない場合
日々のタイヤの状態や空気圧のチェックは面倒ですし、忘れてしまうこともあります。また、パンクの修理も慣れれば短時間で行えますが、出先でパンクすると軽いパニック状態に陥りますので、慣れていても修理に時間が掛かってしまうものです。そして、パンク修理をお店に依頼するとなれば、持って行く手間もありますし、それなりの修理費用も掛かります。そのため、とにかくタイヤのメンテナンスや修理をしたくなければノーパンクタイヤを実装するのがおすすめです。
ノーパンクタイヤの実装は検討を重ねるべし!
今回は「ノーパンクタイヤのメリットとは?どんな場合に実装が推奨される?」と題して話してきました。ノーパンクタイヤは文字通りパンクしないタイヤであり、タイヤ内にゴムやウレタンを詰めているという特殊な構造のため、メリット、デメリットがハッキリと出ます。また、チューブレスなどのパンクしにくいタイヤとは全くの別物なので注意が必要です。自転車に乗る用途、目的を改めて考え、メリット、デメリットも踏まえてじっくり検討してみてください。
出典:写真AC