キシリウムエリートUSTとは
キシリウムエリートUSTはマビック(マヴィック、MAVIC)のアルミホイールKSYRIUM(キシリウム)シリーズの2番目、ミドルグレードに位置してきたモデルで、多くのホビーサイクリストの間で長年にわたり高い支持を得ています。「キシエリ」の略称で知られるこのホイールは、カンパニョーロ・ゾンダ、フルクラム・レーシング3と並び、初心者がアップグレードする定番ホイールの一つにもあげられています。
キシリウムエリートUSTの基本スペック
2020年まで発売されているキシリウムエリートUSTは、リムブレーキモデルとディスクブレーキモデルの2種類があり、基本的なスペックは以下の通りです。
MAVIC KSYRIUM ELITE UST
- 仕様
タイヤタイプ:USTシステム(チューブレス/クリンチャーに対応)
アルミリム:高さ22mm、リム内幅19mm
スポーク:スチール、前後24本、フロント/2クロス、リア/イソパルス
付属タイヤ:イクシオンプロ UST 25mm
重量:リムブレーキモデル/ペア1520g、ディスクブレーキモデル/ペア1670g
価格:リムブレーキモデル/95,000円、ディスクブレーキモデル/100,000円(税抜)
シーラント剤付属
MAVIC キシリウムエリートUST
参考価格: 87,000円
キシリウムエリートUSTの特徴
より速く、快適で、使いやすいホイールを追求するために、キシリウムエリートUSTはマビック独自の技術がふんだんに盛り込まれています。キシリウムエリートにはここで紹介する以外にも多くの技術が取り入れられていますが、特に代表的なものはこの3つです。長年世界トップの舞台で活躍しているメーカーだからこそ、これらの優れた技術が一般ユーザーにも還元されてくるのです。
キシリウムエリートUSTの主なテクノロジー
- USTシステム…ビードとリムとの密着度、保持力や気密性を高めた専用設計。チューブレスタイヤの安定性と着脱のしやすさ、クリンチャーとの互換性を実現。
- ISM4D…リムの内側が波打った外観が特徴。リムの強度に影響しない場所を削ることで軽量化と空力特性が向上し、十分な剛性も確保させた技術。
- イソパルス組み…マビックの特徴的なリアホイールスポークの組み方。ギアのある右側をラジアル、左側をタンジェントで組み、スポークからリムへの理想的なトルクバランスを実現。平坦でもヒルクライムでも抜群の加速性能が可能。
キシリウムエリートUSTのインプレ
同じキシリウムシリーズでも、レースなどで評価の高いキシリウムプロとは違い、エリートは主にロングライドやヒルクライムを楽しむサイクリストに人気を博してきました。ではこのホイールがなぜここまで彼らの高い支持を集めてこれたのでしょうか。数多く寄せられたインプレを見るとその秘密がわかります。
インプレ①価格:割高でも納得の充実度
ホイールを購入したいと思う方にとってまず気になるのが価格です。キシリウムエリートUSTと同水準の性能でライバルとなる2つのホイールとの標準価格を比較すると、以下のようになります。(価格はいずれも税抜金額)
製品 | リムブレーキモデル | ディスクブレーキモデル |
---|---|---|
キシリウムエリートUST | 95,000円 | 100,000円 |
フルクラム・レーシング3 | 82,000円 | 91,000円 |
カンパニョーロ・ゾンダ | 67,000円 | 80,000円(スルーアクスルタイプ) |
単純に価格のみの比較ならキシリウムエリートUSTはむしろ割高ですが、それでもユーザーの多くがこの価格に納得しています。性能の優秀さやブランドイメージもさることながら、キシリウムエリートUSTのみがクリンチャーにもチューブレスにも対応している点が大きいでしょう。付属している専用のイクシオンプロタイヤもとても性能が高いので、むしろお得だと感じられているのではないでしょうか。
インプレ②重量:誰もが口をそろえる軽量さ
ロードバイクのパーツで最も重視されるのは軽さですが、キシリウムエリートUSTの重量は2020年版リムブレーキモデルでペア1520gです。同価格帯の商品と比べても、フルクラム・レーシング3は1560g、カンパニョーロ・ゾンダは1596gとなっています。さほど大きな重量差はありませんが、それでも数字の上では決して引けを取らない軽さであることがわかります。
気持ちよく回る軽快さ
キシリウムエリートのインプレで目立つのが、こぎ出しや挙動の軽さが優れており、スルスルと加速するという感想です。パワー伝達効率が高く踏んだ分だけしっかりスピードに乗る軽快さは、ロングライドでもヒルクライムでも十分に実感することができます。さらにUSTシステムはクリンチャーと違いチューブがいらず、チューブレスタイヤのシーラント剤も少量で済むので、より軽量化の恩恵が受けられるのです。
独自の軽量技術でヒルクライムにも最適
キシリウムエリートは「数字以上に軽い」と感じるライダーが多く、ヒルクライムにうってつけという声も聞かれます。これはマビック独自の「ISM4D」で削られ軽量化されたアルミリムによるもので、リムが軽いぶん外周の回転もスムーズになるためスポークが太い割に軽く感じられるのです。どうしても重量が増えてしまうディスクブレーキホイールでも、この体感できる軽さは何よりの魅力です。
インプレ③快適性:ロングライドで発揮される乗り心地
キシリウムエリートでひときわ高評価なのが走行中の快適性で、特にロングライド派にとってはこれだけでも選ぶメリットは十分でしょう。主な感想としては「振動吸収性がよい」「スピードと快適性が両立され、足当たりもよい」「ダンシング時に左右同じように踏み込めて、同じように良く進むのでヒルクライムでも快適に登れる」「ロスや抵抗が少なく転がりがいいのでグイグイ進む」などがあげられます。
チューブレスが可能にする快適感
乗り心地のよさに大きく貢献しているのがチューブレスタイヤです。クリンチャーだとパンクするような低い空気圧でも平気なため乗り心地が柔らかく、アスファルトの上にカーペットを引いたような滑らかさと形容するインプレもあります。路面の細かな凹凸も気にならず転がりも軽いので、ロングライドでも疲労軽減効果は絶大です。クリンチャーでも走行性能のよさは味わえますが、ここはぜひチューブレスを選びたいところです。
空気圧を変えて楽しめる乗り味
USTのチューブレスタイヤは空気圧を変えることでいろいろな乗り心地が味わえます。5気圧半ばまで下げて試したユーザーによると、振動吸収性はMTBのサスペンションのように快適だということです。逆に衝撃吸収性よりも軽快さや高速巡航性を重視するなら、6~6気圧半ばまで上げるといいようです。また空気圧が高すぎなければグリップ力も向上するので、制動力の強いディスクブレーキでも安心して走れます。
インプレ④UST:チューブレスをより身近に
チューブレスタイヤはチューブがいらず軽量でパンクの心配も減り、転がりもよいなど、クリンチャーにないメリットがあります。一方では硬くて脱着に苦労する、パンク防止のシーラント剤が漏れるという不安もありました。チューブレスはタイヤの中に直接エアを入れるためリムとの高い気密性や密着度が必要で、ビードが硬いチューブレスタイヤは敬遠されがちだったのです。しかし、その不満を解消したのがUSTシステムです。
なぜUSTが優れている?
USTシステムはリムとタイヤの両方に最適化された設計で開発され、従来品より高い精度の密着度を実現しています。専用タイヤはビードが簡単に上がってはめやすく、慣れればタイヤレバーの必要がないくらいです。気密性が高いためシーラント剤も少量で済み、パンクもビード外れのリスクも減ります。それまでのチューブレスと比べてより作業がしやすく、安全性が高いのがUSTの利点です。
キシリウムエリートUSTの2021年モデルは?
これからキシリウムエリートを購入したい方にとっては、新しいモデルの行方も気になるところです。しかしマビックでは、2020年を最後にキシリウムシリーズからエリートのモデルが消えています。これだけ多くのサイクリストに支持されているのに、どういうことなのでしょうか。
キシリウムエリートUSTからSLへ
マビックでは2021年からラインナップを一新し、アルミホイールのキシリウムシリーズは新たにプロ、SL、Sという3ランクへと変更されました。この中でエリートに相当するモデルはKSYRIUM SLとして生まれ変わります。
キシリウムSLの基本スペック
- タイヤタイプ:USTシステム(チューブレス/クリンチャーに対応)
- アルミリム:高さ22mm、リム内幅19mm
- 推奨タイヤサイズ:25~32C
- 重量:リム/1480g(フロント:645g・リア:835g)ディスク/1575g(フロント:723g・リア:852g)
- その他:シマノ/スラム対応(オプションのドライバーボディでカンパニョーロにも対応)
スペックを見てもわかるように、SLは先代キシリウムエリートの性能や特徴を踏襲しつつ、ハブやスポーク、ベアリングの制御にも新技術が投入されています。リムのブリッジに穴を開けずに強度と剛性を最適化させるFOREテクノロジーも継承。SLは前作よりさらに100g(ディスクブレーキモデルは120g)も軽量になっています。
マビック自慢の高性能ミドルホイールをお見逃しなく!
マビックのキシリウムエリートは軽快かつスムーズな完成度の高いホイールとして、多くのサイクリストに愛用されてきました。ヒルクライムやロングライドのライダーから寄せられる多数の高評価なインプレからも、その優れた性能がうかがえます。エリートの名は2020年限りでなくなりますが、後継のキシリウムSLに性能やコンセプトが引き継がれ進化しています。今後のミドルグレードホイールも、マビックから目が離せません。