振れ取りとは
ホイールを回転させたときに生じるリムのブレを「ホイールの振れ」といいます。このブレはリムの歪みが原因です。高額なホイールでも長く使っていると歪みは発生します。高額なホイールには軽量化のために耐久性を犠牲にしているものも少なくないため、むしろ鉄製の安価なホイールのほうが振れは生じにくいともいえるかもしれません。
ホイールの振れはデメリットばかり
ロードバイクにおいて、振れがあるとペダリングの際のパワーをしっかり路面に伝えることができないだけでなく、リムがブレーキシューに干渉したり、パワーが不均等に掛かることでスポークが折れるといった事態も起こりかねません。
1年に1回は振れ取りをしよう
振れを取る作業を「振れ取り」と呼びます。特にデリケートなロードバイクはできれば1年に1回はホイールの振れの有無をチェックして、必要に応じて振れ取りをすることをおすすめします。
ホイールの振れが発生する原因
ホイールの振れは、なぜ発生するのでしょうか。その原因を知れば、振れ取り作業はよりやりやすくなるはずです。
リムとスポークの関係
自転車のホイールは、おもにリムとスポーク、ハブによって形成されています。リムから真ん中のハブに向かってスポークが伸びていますが、スポークがリムにテンションを掛けることで円形を保つようにバランスを取っています。
スポークの張りはニップルに左右される
スポークはニップルという留め具でリムに留められています。ニップルの役割はただスポークをリムに留めておくだけでなく、スポークのテンションも調整しています。つまり、ニップルの締まり具合でスポークのテンションが左右されるのです。
ニップルは緩む
ところが、ニップルは自転車が走っている間に受ける路面からの衝撃や振動などにより緩んでしまいます。ニップルの緩みはスポークのテンションも緩め、その結果スポークによってバランスを取っていたリムも歪みが生じて「振れ」が起こるというわけです。
振れ取りの方法と作業手順
手順①振れ取りに必要な工具類を揃える
ホイールの振れ取り作業を始めるにあたって、まずは、必要な工具類を揃えましょう。
必要な工具:ニップルレンチ
スポークをリムに固定しているのが「ニップル」という留め具です。走行しているうちにニップルが緩むため振れが生じるので、ニップルを締めることで振れの調整や解消は可能です。しかし指でニップルを回すことはできないので、締めるためのニップルレンチという専用工具が必要となります。
必要な工具:振れ取り台
ホイールを乗せてリムの振れを精密に測る台です。ただ、振れ取り台は安くはありませんし、わざわざ買うのはちょっと…という人もいるかもしれません。振れ取り台があったほうが正確にチェックはできますし、ホイールを自転車につけたまま縦振れ取りはできないので、振れ取り台がなければ横振れしか対処することができなくなってしまいます。
手順②ホイールからタイヤやチューブを外す
振れ取りにタイヤは不要なので、まずタイヤとチューブをホイールから外して振れ取り台にセットします。
手順③振れの原因箇所を見つける
ホイールを振れ取り台にセットしたら、振れ取り台の突起部分をリムに合わせてホイールを回します。そのとき、突起部分とリムの間隔に波打つような変化がある箇所がリムの歪んでいる部分で、そのために振れが発生していると判断できます。
手順④振れている箇所のスポークを張る
振れ取りのやり方の順序
リムの振れには、空転させたとき、前からリムを見てわかる「横振れ」と横からリムを見てわかる「縦振れ」があります。作業をする際には、まず縦振れ取りからはじめて横振れ取りを行います。振れは大体1~3㎜ほど振れていることが多いのですが、1㎜程度の縦振れは許容範囲といえるのでさほど神経質にならなくていいでしょう。
リムはどちらに歪んでいるか
振れ取り台でチェックしたときに、右側に振れていたならリムは右に歪んでいる、逆に左側に振れているならリムは左に歪んでいるということになります。ここでは、右に歪んでいた場合のやり方を紹介していきます。
一般的にニップルは緩む
歪んでいる原因は、歪んでいる箇所近くの右スポークの張りが強いか、左スポークの張りが緩いかのいずれかです。一般的には走行によって衝撃や振動を受けスポークが緩んでいることが大半なので、この場合は左スポークを張る作業を行います。
まずはニップルを締める
ニップルを時計回りに回せば緩み、反時計回りに回せば締まります。この場合は、歪んでいる箇所に最も近い左スポークのニップルを反時計回りに回します。それが済めば、その両隣のスポークも同様にニップルを反時計回りに回して張っていきます。
ニップルは少しずつ締めよう
歪みに最も近い箇所のスポークのニップルはまずは1/4回転程度、両隣のスポークのニップルは 1/8回転程度と、少しずつ調整しながら締めます。振れが大きいと一気にたくさん締めたくなりがちですが、振れの状態をチェックしながら少しずつ回していくのがポイントです。締めすぎるとスポークが切れてしまうリスクもあります。
リムの修正はスポーク4本単位で
リムの修正のやり方のコツは、スポーク4本単位で調整することです。縦振れはリムの左右から出ている隣り合わせの2本を、横振れは症状に応じてリムの右側のみ、または左側のみのそれぞれ2本を同等に回していくのが基本です。
手順⑤ホイールのセンターの確認
センターは正確か
最後に、ホイールのセンターが正確に出ているかを確認します。ホイールのセンターが正しくないと、タイヤとフレームが接触したり、ブレーキが片効き状態になったりといったトラブルが生じてしまいます。
目視でも可能
ホイールセンターゲージといった専用の工具もありますが、目視でも判断は可能です。目視の場合、フロントはホイールとフォークの隙間、リアはホイールとチェーンステイとの隙間がそれぞれ左右均一ならOKです。
振れ取りの際の注意点
振れ取りは手順に従って行えばさほど難しいものではありませんが、注意すべき点があります。
注意点①ニップルにはニップルレンチを
自分の使いやすいものを使おう
ニップルを回す際には、ニップルレンチを使いましょう。ニップルレンチにはいろいろな種類や形がありますが、自分の使いやすいものを選べばいいでしょう。
ピッタリ合ったものを選ぶ
ただし、ニップルは真鍮やアルミといった柔らかい材質なので、ぴったりと合うものを使わないとネジの角をなめて回すことができなくなるので要注意です。ネジを回すならと、モンキーやラジオペンチなどで代用するのは絶対にNGです。
注意点②ホイールの仕様によって作業方法が異なることもある
チューブラーかチューブレスか
最近ロードバイクでもよく使用されているチューブラーホイールやチューブレスホイールなど、ホイールの種類によって振れ取りの方法が異なることもあります。
スポークの組み方でも異なる
また、スポークが交差しないラジアル組と交差するタンジェント組など、スポークの組み方によっても振れ取り方法が違うので、自分のホイールにあった方法や手順で作業をすることが大切です。
まとめ
ロードバイクのホイールの振れは決して特殊な現象ではなく、長く乗っていると必ず発生するものです。振れ取りには上級者のメンテナンスというイメージを持っている人も少なくありませんが、コツさえつかめばさほど難しくないので、初心者の人もトライしてみてはいかがでしょうか。