自転車後輪ブレーキによくあるトラブル
「後輪ブレーキの調子が悪いけど店行くほどじゃないし自分で直そうかな」と思い立ったら工具を持つよりも先に、どんな症状が出ているかをクリアにしておきましょう。症状は多くの場合、次項リモート診断(A)~(E)のうちのいずれかに該当するはずです。
自転車後輪ブレーキ調整前のリモート診断(A~E)
(A)後輪ブレーキの効きが悪い
使用期間2~3か月くらいでのトラブルであればまずはアジャストボルトを調整します。アジャストボルトって何?という方のために後半で詳しく解説しています。また、数年使っているという場合はブレーキシューの劣化が考えられます。shoeというくらいなので靴底のように徐々に削れていきます。
(B)後輪ブレーキが固い
レバーの握りが固いという人はレバーが変形している可能性があります。アルミ製レバーは駐輪場での接触や横転で変形したり最悪ポキッと折れることもあります。
(C)後輪ブレーキがかかりっぱなし
ブレーキワイヤーがサビついているかもしれません。一度握ったレバーが元の位置まで戻らないまま途中で止まってしまう・一応戻るがモッタリした動きをしている、というときはワイヤーがサビ固着しています。ワイヤー内部に雨水が入り込んだまま放置してしまうと内部でサビが発生しやすい状態になり、悪化するとブレーキがかかりっぱなしの状態になってしまいます。
(D)後輪ブレーキがまったく効かない
ブレーキワイヤーが正しく接続されていないか断裂のような大きなトラブルが起きているようです。Vブレーキが採用されている場合にはコネクターが外れているだけということも多々あります。いずれにしても緊急に修理が必要です。
(E)後輪ブレーキがうるさい
後輪ブレーキの音がうるさいと困ったとき、まずブレーキの種類が重要になってきます。次項の中の後輪ブレーキを構成するパーツ①の中で詳しく触れてますのでご覧ください。
自転車の後輪ブレーキの構成パーツと種類
実際に後輪ブレーキ調整をしていくためにパーツを詳しくみていきましょう。搭載パーツによってメンテナンス方法も変わってきます。
後輪ブレーキを構成するパーツ①ブレーキ本体
この記事の中で扱うブレーキの種類について大まかに分類すると、リムブレーキ・ドラムブレーキの2種類です。例えば一般的にママチャリであれば、前輪リムブレーキ・後輪ドラムブレーキになります。
後輪リムブレーキ
後輪リムブレーキは主にスポーツ車に採用されています。ブレーキシューによってホイールを押さえ込んでスピードを落とします。その摩擦によって削れたゴムかすの付着汚れや雨天が関係してキーキーと音が出ます。他にも2つのブレーキシューのうち片方が極端にリムに干渉すると、片方だけが削れて音鳴りしやすい状態になり、2つのシューのパワーバランスを揃えると静かになることがあります。
リムブレーキはママチャリの前輪と同じ仕組みなので想像しやすいと思いますが、ゴム製のブレーキのため走行距離に応じて削れてくるので数年ごとに交換することになります。
後輪Vブレーキ
こちらはリムブレーキの種類のひとつでVブレーキです。マウンテンバイクとクロスバイクに採用されている他、子ども乗せ電動自転車に採用されている例もあります。写真では上部からワイヤーが来てリード管の中を通って本体に接続されています。このリード管とアームの接続部分、簡単に断つことができ、下のブレーキシューが削れてクリアランスが広がってくると外れやすくなります。
ローラーブレーキ
ローラーブレーキは制動力が高くママチャリの中でも高額なものに多く採用されています。高級ブレーキですが、唯一デメリットを上げると、他ブレーキと比べても特に強烈な音が鳴ることがあります。ギギーッと動物が威嚇しているかのような音が鳴る場合があります。
このような音鳴りがあるときはグリスが切れている状態ですので、シマノから発売されているローラーブレーキグリスという専用品を本体正面上部の穴から注入してやるだけで音は消えます。メーカー説明では1年ごとに充填となっています。また、よく言われる常識として「ブレーキに油を挿しちゃダメ」ということがありますが、このローラーブレーキに限っては専用グリスを挿す必要があります。
自転車後輪ブレーキを構成するパーツ②ブレーキレバー
自転車のブレーキと聞くとついレバーを思い浮かべてしまいますが、レバーは握る力を引っぱる力に変換するための装置に他なりません。国内規格として右レバーが前輪・左レバーが後輪に対応していて、呼称を合わせるためにフロントレバー・リアレバーと呼んでいます。
後輪ブレーキを構成するパーツ③ブレーキワイヤー
ブレーキ本体とブレーキレバーを繋ぐ、金属でできた繊維です。レバーを握ることでワイヤーの張力が上がりブレーキを作動させる仕組みです。そのためこのワイヤーに支障があるとブレーキは正常に作動しません。
アジャストボルトの調整
ブレーキに使用されるアジャストボルトは、そのボルトの長さ分や、締緩によってレバー・本体間の長さを調整することができます。これを極めれば、個人でできるメンテナンスの幅が広がります。
アジャストボルトの調整方法
アジャストボルトとロックナットはセットになっています。①ロックナットを緩め②アジャストボルトの長さを調整③ロックナットを締めて固定する。これが締め方の基本です。アジャストボルトのある位置はスポーツタイプの場合はブレーキレバー・ママチャリの場合はブレーキ本体に付属しています。ブレーキレバーの場合はプラスチック製で素手で回せますが、ママチャリタイプの場合はオープンスパナを2種類使います。アジャストボルトは8mm・ロックナットは10mmです。
ボルトを締め込むとブレーキの効きが甘くなり、ボルトを緩めるとブレーキの効きが強くなります。あべこべのような気がするかもしれませんが、綱引きの法則で考えると分かりやすいかと思います。綱を短く持つと力が入りやすく、長く持つと力が入りづらい。まさにワイヤーの長さ(レバーとブレーキ本体間の距離)を調整することを意味します。
アジャストボルトで調整しきれないとき
ママチャリの場合、ダルマネジという部品をいじるのですが、どんどん専門的になっていくので、この段階で無理せず専門店に持って行くのがいいでしょう。
主な自転車ブレーキ調整工具
自転車用工具は一部特殊サイズがあるものの、多くは一般的な工具で汎用が効きますので、自宅に用意のないものだけ調達してもらえれば大丈夫です。
8mm・10mmスパナ
スパナの中でも片目片口スパナと呼ばれるオープン型とクローズ型が一体になったものを選ぶと使い分けできるのでおすすめします。ネジ頭を崩したくないときや狭所での作業など、シーンに応じて適した締め方が可能になります。
ボックスレンチが活躍
スパナ以外にも画像にあるような十字やY字レンチがあると作業スピードがぐっと早くなります。例えばネジが錆びて固いときにも力が入れやすいです。
ブレーキの効きが悪い時はまずはワイヤーを疑おう
後輪ブレーキの調整について、解説してきました。ブレーキ調整はほとんどワイヤー調整と考えてください。ブレーキ調整の最たるテーマは自分と相手の命を守ること。万が一道路上で子どもが飛び出してきたときにケガをさせないためにも、ブレーキのメンテナンスはこまめにしておきたいものです。