トルクレンチとは
ねじやボルトを所定の力で締める工具
トルクレンチとは、ねじやボルトを所定のトルク(力)で締めるために用いる工具をいいます。ロードバイクやクロスバイクをはじめ、自転車にはありとあらゆる箇所に多くのねじやボルトが使用されています。これらは、サイズや用途、種類によって許容トルクが決まっており、その数値に合わせるためにはトルクレンチが必要なのです。
トルクの定義
トルクとは、たとえばボルトの中心から力点までの距離に回転させる方向へ力をかけたときに得られる回転力のことで、「N-m(ニュートンメートル)」という単位で表します。詳しく説明すると非常にややこしいのですが、目安として1N-mは回転軸の中心から1m先に0.1㎏のおもりがぶら下がっている程度の力と考えればいいでしょう。
なぜロードバイクの整備にトルクレンチが必要なのか
定期的な増し締めが必要
多くのねじやボルトが多用されている自転車、特にロードバイクなどのスポーツバイクにおいては、ねじやボルトがしっかり締まっていなければ走行中に緩んで外れしまう危険性もあります。走行中の振動などが原因でねじやボルトは緩みがちなので、各部を定期的に増し締めすることが求められます。
締め付け過ぎはNG
「それならとりあえずメンテナンスの際に強く締めておけばいいんでしょ」と考える人もいるかもしれませんね。しかし、あまり強い力で締め付け過ぎると逆に部品の破損も起こり得ます。ねじやボルトには用途やサイズ、種類でそれぞれ適正な締め付けトルクが指定されているので、それに合わせることが重要です。
トルクレンチで適正値を知る
たとえば、パーツに「MAX8N-m」と表記されていたなら、8ニュートンメートル以上の力で締め付けるのはNGという意味です。ねじやボルトなどの締め付け不足や締め付け過ぎを防ぐためには、このように適正なトルクで締め付けなければならず、そのためにトルクレンチが必要というわけです。
カーボン素材多用のロードバイク
特にロードバイクには、車重を軽くするためにフレームをはじめ、フロントフォークやシートポスト、ハンドルなどなど、いろいろな個所にカーボン素材が使用されています。トルク管理は、このカーボン素材で特に重要なのです。
アルミよりシビアなトルク管理が必要
カーボンは、一点に外部から集中的に力がかかると一気に破断する特性があります。したがって、アルミや鉄素材よりシビアに許容数値囲の力(トルク)で締め付けなければならないというわけです。中には「6N-m~9N-m」といった数値に幅を持たせた表記もあります。この際は、指定された数値範囲内のトルクで締め付ければOKということです。
トルク管理は難しい
自転車の整備の際に用いるトルクの多くは、12N-m以下の範囲内です。12N-mのトルク値は、ざっと1m先に1.2㎏のおもりがぶら下がっているくらいの重さというのが目安ですが、それを感覚だけで判断するのは簡単ではありません。また、トルクのかかり方は、レンチの長さやレンチを持つ手の位置などでも変化してしまいます。
ロードバイクの整備になくてはならない
さらにカーボンは力がかかり過ぎると変形し、それが度重なると破断してしまいます。こういった危険性を持つ作業を、手の感覚だけで行うのは至難の業です。だからこそロードバイクの整備には、目でチェックしながら適正な力を加えることのできるトルクレンチがなくてはならないのです。
トルクレンチで安心感が得られる
指定された数値範囲に従わずに適当に増し締めしていると、締め付け過ぎてパーツを破損する危険性もあります。また、破損を恐れて締め付けが弱すぎると、ねじがしっかりと固定されずに外れてしまうかもしれません。トルクレンチは、締め付け過ぎや締め付け不足の不安を解消して安心感を与えてくれます。
ロードバイクでトルクレンチを使う部分
トルクレンチでねじやボルトを締め付けるといっても、そんなに使う場所はないんじゃないかと思っている人もいるかもしれませんね。しかし、実は結構多くの箇所でトルクレンチを使用する機会はあるのです。
ハンドルやシートポストなど
アルミやクロモリフレームでもカーボンハンドルを取り付けた場合、ステムやコラムはボルトの締め付けに注意が必要ですし、カーボンシートポストも同様です。クランクやボトムブラケットにもメーカーの指定トルクがあります。
ボトルケージの取り付けにも
ディスクブレーキやフロントディレイラーのセッティングにも、精度の高いトルク管理が必要です。また、カーボンフレームにボトルケージを取り付けるときにも、ネジ穴の破損を防ぐためにトルク管理をおすすめします。