チェーン掃除はメンテナンスの基本
自転車のメンテナンスでは、チェーンの手入れがとても重要です。チェーンに付着したゴミや汚れは傷みの原因になるだけでなく、摩擦によってギアや駆動パーツにも損傷を与えます。サビついて動きが鈍くなったチェーンは回転が悪くなり、走りにも影響します。毎日の快適な乗車のために、自転車のチェーンはきれいな状態に保つことが基本です。
ロードバイクで特にチェーン掃除が不可欠な理由
街中を駆けるロードバイクは、どれもチェーンやギアがとてもきれいで、よく手入れされているのがわかります。ただ一方では、あまり手入れもされず、汚れやサビだらけで放置されている残念な状態のロードバイクを見かけることも少なくありません。ハードな走りをするロードバイクこそ、他の自転車よりも高い頻度で洗車やチェーンまわりの掃除が必要な理由があるのです。
理由①安全性が大事な高速走行
ロードバイクは初心者でも時速3~40kmというスピードが簡単に出せる反面、事故が起きた場合は自分にも他人にも大きな被害をもたらします。チェーンの手入れを怠ると走行中に突然、切れる、外れる、ギアと噛むなどのトラブルが増えます。事故につながるのリスクも増えるのです。
理由②ロングライドでのチェーントラブルは致命的
ロードバイクに乗ると、多くの方がママチャリではありえないような長い距離を走る頻度が増えます。それだけに普段自分の生活圏でない所でチェーントラブルに見舞われると悲劇的です。パンクならば予備のチューブでどうにかなるでしょうが、チェーンやギアの破損となると、慣れない土地で自転車屋を探さなければならないはめになります。
理由③ロードバイクのチェーンは高額
ロードバイクのチェーンを綺麗にしておくのは、コストの面からも大事です。通常のママチャリやシティサイクルと違い、ロードバイクのパーツは高額です。チェーンももちろん例外ではなく、安いものでも3000円台、高いものだと5000円を超えてしまいます。ろくにお手入れもせず、汚れるがままサビるがままにしておくのは、それだけでも損失です。
チェーン掃除に必要な用具
自分でチェーンの掃除に取りかかる前に、必要なアイテムをそろえましょう。本来は洗車の道具とセットで用意しますが、ここではチェーンや他の駆動部の洗浄に使うものだけをあげておきます。
ケミカル類
チェーンクリーナー/ディグリーザー
チェーンの汚れ落としに必須のケミカルです。チェーンクリーナーは揮発性が高く水洗いが基本的に不要ですが、その分内部まで浸透しにくいのが難点です。ディグリーザーは洗浄力が強く、内部まで浸透するのでより強い汚れ落としに向いています。ただし揮発性が低いので、チェーン内部に残らないように洗い落とす必要があります。
オイル(ルブ)
ロードバイク専用のオイルを選びましょう。ルブとも呼ばれますが、どちらも同じです。ホームセンターなどで扱っているサビ取り/潤滑剤は、樹脂パーツに良くない影響を与えることもあるのでおすすめはできません。
中性洗剤
汚れ落としの後、チェーンに残っているディグリーザーを取り除くのに使います。洗車用の洗剤も兼ねており、金属や樹脂パーツにダメージを与えない中性洗剤を使いましょう。台所にある食器洗剤で十分です。
道具類
ブラシ
チェーンの汚れ落としには歯ブラシを大きくしたようなブラシを使います。他にディグリーザーを塗布する刷毛状のブラシ、スプロケットやギアに使う毛足が長く大きなブラシなど、用途によってブラシを使い分けましょう。
ウェス
専用のペーパータオルなどもありますが、古い手ぬぐいや着古したコットンのTシャツでも十分です。汚れ落とし用と洗車後に乾拭きするものと、最低2枚は用意します。
スポンジ/バケツ
スポンジは汚れ落としの後の水洗いで使用します。できるだけ大きくて吸水性のよいものを選びましょう。バケツには洗浄後の水洗いで使う水と中性洗剤を入れておきます。
メンテナンススタンド
ロードバイクは通常スタンドを付けないので、整備の時にはメンテナンススタンドが必要です。できるだけ安定したワークスタンドタイプがおすすめです。
ロードバイクチェーンの掃除のやり方
必要な道具をそろえたらいよいよチェーン掃除を始めましょう。掃除はチェーンのほか、スプロケット、クランクやプーリーも一緒に行います。使用するケミカルによって多少のやり方の違いはありますが、基本はどれも同じです。ここでは3通りのやり方を紹介していきましょう。
①チェーンクリーナーを使ったやり方
- チェーンクリーナーをチェーン全体にスプレーしていきます。
- ブラシを使ってチェーンや駆動部の汚れをかき出します。
- 洗車と同時に行う場合は、さらに自転車全体を中性洗剤をしみ込ませたスポンジで水洗いするか、バイクウォッシュ(バイククリーナー)をスプレーします。
- 最後にウェスで全体をていねいに拭き取ります。
②ディグリーザーを使ったやり方
- ディグリーザーをチェーンに塗布します。スプレーまたは容器にあけてブラシや刷毛で塗っていきます。チェーンを外しディグリーザーをひたした容器に浸けるとより効果的です。
- ブラシでこすって汚れをかき出し、その他の駆動部もディグリーザーを塗布して汚れを落とします。
- チェーン内部に残るディグリーザーを落とすため、中性洗剤で洗うか、水洗いします。
- 水洗い後、ウェスで黒い汚れが付かなくなるまで拭き取ります。
やり方③チェーン洗浄機を使う方法
最も簡単でおすすめな方法が、チェーン洗浄機を使ったやり方です。これは複数の回転ブラシが入ったケースの中にクリーナー液をため、ブラシを回しながらチェーンを通して汚れ落としをする方法です。短時間でしっかり汚れが落ち、自分の手も汚れずにすみます。
- チェーン洗浄機本体の中にチェーンクリーナー液かディグリーザーを入れます。
- 本体を開けてチェーンがブラシの間に挟み込まれるようにセットします。
- ハンドルを持ってキット本体を押さえた状態でペダルを回します。
- 汚れが落ちてきて、中のクリーナー液がみるみる黒くなってきます。
- 約1分ほどで終了。汚れ落とし後の廃液は排水口に捨てず、ウェスや新聞紙にしみ込ませて燃えるゴミへ。
- 通常のチェーン洗浄と同様に、中性洗剤や水洗いでディグリーザーを落とし、水分を拭き取ってオイルを注します。
注油のコツは?
洗浄後のチェーンは油分が完全に除去されているので、潤滑とサビ防止のために全体にまんべんなく注油していきます。ロードバイクには専用のオイル(ルブ)があり、高速走行に最適なスムーズさと高い防サビ性を保証します。
注油のコツ①コマとコマの間に確実に
チェーン同士のつなぎ目にあたる、8の字の丸の部分がコマです。チェーンの動きを左右する大事な部分なので、このコマとコマの間に確実に浸透するようにオイルを注していくのが注油のポイントです。これはスプレー式でも点滴式でも変わりません。大変かもしれませんが、ひとコマひとコマていねいに注していってください。
注油のコツ②余分なオイルは不要
オイルが多すぎるとほこりや汚れが付きやすくなるので、チェーン全体にオイルを注したら垂れない程度に拭き取ります。最後にギアを変えながら手でペダルを回し、チェーンリングとスプロケットにもオイルをなじませます。
注油のコツ③オイルの使い分け
ロードバイク用のオイルには大きく分けて、ドライ用とウェット用があります。天気や自分の乗る状況に応じて使い分けると良いでしょう。ドライタイプはサラッとしていて汚れにくいので、晴天で舗装のきれいな道路を走るのにおすすめです。ウェットタイプは、耐久性があって雨の日にも強いので、悪路を走ったり、通勤通学で毎日乗るのに適しています。
ロードバイク用おすすめチェーンオイル
おすすめ①フィニッシュライン ドライ テフロン ルーブ
浸透性に優れて汎用性が高いため、多くのユーザーに愛用されている製品です。ボトルタイプなので適量で注油できます。価格もリーズナブルで手に入れやすいのも魅力です。
おすすめ②ワコーズ チェーンルブ 浸透性チェーン用防サビ潤滑剤 A310
自転車やオートバイ用ケミカルで定評のあるワコーズの代表的な商品です。薄くサラサラした滑らかな回転を実現し、高ケイデンスで足を回すライダーに最適です。薄くとも耐久性が高いので、長距離を走っても性能が長く維持されます。
おすすめ③AZ B1-001 自転車用 チェーンルブ マルチパーパス
あらゆる用途に適した万能オイルながら、110mlで600円以下という非常にコストパフォーマンスに優れた製品です。摩擦抵抗が少なく快適な走り心地に定評があり、ロングライドから未舗装路のクロスカントリーまで幅広く対応します。
どのくらいの頻度で掃除すればいいの?
ロードバイクのチェーンはどのくらいの頻度で掃除をすればよいのでしょう。通常自転車のメンテナンスはだいたい一月に一度くらいの頻度ですが、ロードバイクは走る距離も長く、汚れも付きやすいものです。目安としては距離で300km、期間でいうと2週間に一度は行うことをおすすめします。注油だけならば週に一度の頻度でオイルを注しましょう。
理想はライドのたびに行いたい
もちろんロードバイクは走る人によって距離も乗る頻度も違うので、上記の目安が誰にでも当てはまるわけではありません。一番いいのは、長い距離を走り終わるたびにチェーン掃除を行うのがベストです。走り疲れて洗車までできないという場合は、ウェスでチェーンの汚れを拭くだけでも大丈夫です。ただし洗車とチェーン洗浄は後日なるべく早めに行いましょう。
チェーン掃除でロードバイクを常にベストに!
自転車には大敵のチェーン周りの汚れやサビ。特に繊細で高価なロードバイクのパーツでは、これらを放置すると安全性だけでなくパフォーマンスや乗り心地にも悪影響を及ぼします。自分でメンテナンスする方法を身に付け、適切な頻度でチェーンを常にきれいにしておけば、思う存分快適なライドを楽しめます。自分のためにも、愛車のためにも、さっそく今日から始めてみましょう。
筆者撮影